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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
59/102

この世の底

 地下闘技場への通路を下っていくタクスス一行。

 倒壊した民家の影に隠れていた入口から侵入した彼女達は、荒涼とした街の設備とは思えない、整備が行き届いた階段を下へ下へと降りていく。

 白い衣を纏っていた軍人達は、目立つことを避けるため、それぞれラフな格好に着替えており、周囲の空気に溶け込んでいた。

 ひとしきり進むと、叫喚にも似た奇声が飛び交う場所へと到着した。

 コロッセオを彷彿とさせる小型の円形闘技場。

 その中央で、寂れた剣を振り回し雄叫びを上げる男達を、周囲の観客達は興奮した面持ちで観戦していた。


「……煩い場所。ここなんですか……?」


「恐らくですねぇ」


「……うぅ、頭に響く」


「あ~? 大丈夫か? えっと……」


「タクススですよ、プロテア大佐」


「タクススちゃんね、了解了解。んで……具合が悪くなりそうなら戻っても良いんだぜ? テッセンちゃんを護衛に付けるし」


「……大丈夫です。我慢できます」


「そう? なら良いんだが……」


「プロテア、さっさと調査するぞ。名前は憶えているな?」


「ああ、ルイス・アビュースだろ? こんな場所に長居はしたくね~し、とっとと居場所を突き止めようかね。テッセンちゃん!! ローズちゃんと一緒にタクススちゃん達とここで待っててくれ!!」


「了解!!」


「アヤメ、私もプロテアと一緒の指示だよ!!」


「了解です!!」


 端的に指示を出した2人は、そう言い残すと人混みの中へと消えていく。

 この場に残ったタクスス達は、彼らが帰って来るまで特にすることもないので、中央で行われている趣味の悪い催し物を観戦することになる。


「酷い光景だな」


「ふん!! テッセンとは珍しく同意見ですよ、私も」


「……なあ、俺が年上なんだぞ? 階級も」


「おやおや、今日も仲良しですねぇ。さてさて2人とも……ちょっと声を抑えた方が良いかもしれませんよ」


「あぁ? 何でだ」


「その辺をうろついている黒いスーツの人間、タキシードでしょうか? まあ、どちらでも良いですけど……どうもチラチラこちらを見ているんですよねぇ」


「本当ですか、ローズ少佐……?」


「ええ。言ってる側から……コチラに近づいて来ましたねぇ」


 周囲に注意を配っていたローズが偶然気が付いた事。

 観客とは異なる挙動を取る人間達。

 恐らくこの闘技場の関係者だろうか。

 視界に捉えていた内の1人が近づいて来ると、抑揚のない声で話しかけてきた。


「……お前ら、ここは初めてか?」


「これはこれは、何故分かったのでしょうか」


「常連客は、ここに来たら直ぐに賭金を払うからな」


「賭金?」


「中央で戦っている奴らの試合結果。それに賭けるんだよ、金をな」


「おやおや、それではこの客達は全員賭け試合を観戦しているのですか」


「そういう事になるな。それでどうする? どっちに賭ける?」


「そうですねぇ……ちょっと考えたいので後でいいですか?」


「そうか。俺達はこの辺をうろついているから、必要に応じて声を掛けてくれ」


「ご丁寧にどうも」


 そう言うと黒服の男は自分の持ち場へと帰って行く。

 笑顔で対応したローズは、タクスス達へと向き直り、呆れたように口を開いた。


「だそうですよ、このバカ騒ぎは」


「……賭け試合ですか」


「そう珍しくもないですよ、タクスス。余興には最適でしょう……ね? テッセンさん」


「何で俺に同意を求めんだよ……戦闘狂のお前じゃあるまいし」


「くっくっく……まあ、こういうのは捕まえてもキリがないので、基本はスルーしているんですよ、軍の人間はね……それでもなお来ざるを得ないと言うことは……」


「最近のコイツらは度が超えているんですよ。ここに来た人間が多数行方不明になっているって通達が来てるくらいですから」


「ほうほう、面白い情報ですねぇ……ちょっと詳しく……」


「お~すお前ら、ただいまだ」


 争いの香りを嗅ぎつけたローズの目に、珍しく活力が灯った丁度その時。

 情報収集から戻って来たプロテアとアヤメが合流してきた。

 誰かを襲って来たのだろうか。

 2人の衣服には、先ほどまで付いていなかった返り血のような赤い後がこびりついていた。


「お帰りなさいです!! プロテア少佐!! アヤメ……いった!?」


「大声で階級を付けて呼ぶな。怪しまれるだろうが」


「すみません……アヤメ少佐……」


「それでどうだったんですか? プロテア……えぇっと」


「この場に限り、さん付けでもいいぞ、テッセンちゃん」


「……どうだったんですか、プロテア大佐」


「ああ、結局そっちね……おう、バッチリよ。まあ……割かし近くに居たっぽいんだよな。ん」


「んん……?」


 右手の親指で指し示すプロテア。

 その場所は、現在いる闘技場の上階。

 VIPルームと思わしき、場所を示していた。


「ここのオーナー様はあそこにいるらしいぜ、特等席で眺めているんだとよ」


「そういうわけだ。早速行くぞ貴様ら」


「おやおや……? ちょっとお待ちを」


「んだよローズちゃん、どうかしたか?」


「それがですねぇ……財布を盗んだ男が、中央にいたような……?」

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