暴虐の街・タモアラ
謎の来訪者を始末したタクスス達は、簡単な晩飯を済ませた後、再び床に就き次の日を迎えていた。
夜の帳に別れを告げ、空が白んできた時間帯。
山道を歩く彼女達。
次の街まで距離があるらしく、定期的に休息を取りながら前へ進んでいた。
「……はぁ……はぁ……」
「ローズさん、あとどれくらいで着くの?」
「そうですねぇ……このペースで行くと……明日の昼ぐらいでしょうか」
「えぇ~……そんなにかかるの?」
「そこそこ遠いですからねぇ……タモアラって」
「むぅ~……こんなに遠いなら乗り物使いたいんだよぉ……って言うか、ローズは何で軍服着てるのさ!?」
「舐められないようにですよ。女3人子供1人の集団ですよ? いちいち昨日みたいな奴らを相手にするのは面倒ですからねぇ」
「……その服を着ているの、久々に見ました」
「くっくっく……アウレラ以来でしょうか? 山賊の根城にこの服装のまま乗り込みましたねぇ」
「俺さ、流石にあの時はビビったよ……何で軍人が堂々とここに来てるのっ!? って思いながらね……」
「ご覧のように効果覿面なのですよ」
過去の話に花を咲かせながら進み続ける4人。
大よその推測通り、彼女達が到着したのは翌日の正午頃であった。
照り付ける日差しに思わず目を細める彼女達。
その視界には、空襲にでもあったかのように荒廃した、タモアラの街の姿が映っていた。
視界に移る殆どの建築物が半壊、または全壊しており、人が住むにはあまりに過酷な環境となっている。
「……想像より酷い街ですね、ここ」
「別名、世紀末の街と呼ばれるだけありますねぇ」
「……あの」
「何でしょう?」
「……なんか私達、見られてません?」
「俺もそれ言おうとした」
「だよねだよね!! なんか視線が凄いんだぉ!!」
道端で佇むタクスス達。
そんな彼女達をじろじろと舐めるように見つめる数多の視線。
建物の影に身を潜めるこの街の住人は、歓迎する素振りを全く見せずにいる。
「……早くこの街を出ましょう……きゃっ!!」
「お~う悪い悪い」
フラフラと近寄ってきた住人とぶつかるタクスス。
酔っ払いだろうか。
そう思っていた中、ローズはぶつかって来た男性の腕を力の限り握りしめる。
「おいおい……何か用か? 軍人さん」
「いや~ちょっとねぇ……面白いことを目撃したので」
「あぁ?」
「アナタが懐に仕舞った物、見せてくれませんか?」
「……!! くっ……!! んだよバレてんのかよ!!」
強引にローズの拘束から逃れると、視線から消えるように逃亡を図り始めた彼。
同時にタクススは、衣服のポケットに仕舞っていた小銭入れが消えていることに気が付く。
「……ローズさん!!」
「ええ、追いましょう。あの野郎……私の目の前で窃盗とは、なかなか舐め腐った真似をしてくれますねぇ」
即座に追跡を開始したタクスス達。
だが、どうやら地の利は向こうにあるらしく、あっという間に姿を見失ってしまった。
唇を噛むタクスス。
自分の不注意で面倒なことになってしまったと、心の底で後悔していた。
「……すみません、私の不注意で」
「いえいえ、問題ないですよ。捕まえればいいだけですので」
「でもローズさん、どうやって手がかりを探すの?」
「うってつけの人間が居るでしょ、ここに」
「ん? また僕がこき使われるのぉ!?」
「あなた以外に誰が居るんですか。ほらほら、その辺の人間の記憶を覗きなさい」
3人の期待を一身に浴びるアムネシア。
道端に座り込む住人の記憶を覗きながら、行方不明となった盗人の後を追っていく。
この街に到着してから数時間が経過した。
樺色に色づく街を探索し続け、やっとのことで手がかりを掴んだ4人。
だがその場所は、普通では考えられない場所を示していた。
「……地下闘技場の関係者、ですか……」
「聞いた事ないですねぇ……アムネシア、本当にその情報は合っているのですか?」
「本当なんだよぉ!! 間違いなく盗人の顔と一致していたんだよぉ!!」
「……なんかここまでくると、取り返さなくて良い気がしてきました」
「同感ですねぇ……手間に対して得られる物があまりに少ない。諦めましょうか」
「俺も賛成~」
「ぐぅ……結局僕が疲れただけじゃんかよぉ~……」
「……すみません、アムネシアさん。今度なにか御馳走するので」
「むぅ……」
むくれ顔のアムネシア。
時間を無駄に消費しただけの彼女達は、危険な街に留まることにメリットがないので、早々に出発しようとする。
「……あぁ? ローズちゃんじゃん!! こんな所で何してんの?」
彼女達の足が思わず止まってしまった声。
軽い調子の声の主が、背後から迫って来ていた。
タクススやシャガ、特にローズがよく耳にしていた人物。
前の任務から直行でこの街を訪れていたプロテア達は、偶然にもタクスス達と鉢合わせることになったのだった。




