泡沫は潰える
「モンテラねぇ~何かあったけ? あそこド田舎じゃん」
「……」
「たっく……人使い荒いよな~アウレラの次はモンテラに向かえってさ」
「……プロテア大佐、怪我は大丈夫なんですか?」
「あぁ? まぁー……多分?」
かつて盗人と共に共存してきたあの街で、山賊の姿を見かけるものは、今後2度と現れないだろう。
アウレラで山賊達を捕らえた後、軍へ身柄を護送し、そのままの足で移動してきたプロテアとテッセン。
額が覆い隠されるように包帯が巻かれた伊達男は、時間潰しがてらに、運転席に座る部下と他愛もない話をしている。
「不甲斐ないな。たるんどる」
「んだよアヤメ~? 相手が相手だぞ。つーか、乗せて貰ってるのに何だよその態度!!」
「ふっ、本当の事を言ったまでだ!! 今度鍛え直してやろうか?」
「御免だねっ!! 休日まで体を動かしたくないっつーの!!」
現在、車内にいるのはプロテアやテッセンだけではない。
軍の本部で合流したアヤメとカタバミも一緒だ。
現在彼らは、目的の場所であるモンテラへと向かっていた。
「はいはいっ!! プロテア大佐!! 質問です!!」
「あん? 何だよカタバミちゃん」
「プロテア大佐は軍でも屈指の強者!! ですよね!?」
「んだよ急に……照れちゃうなオイ」
「カタバミ、コイツを変に煽てるな」
「えぇ~? でも本当の事じゃないですか。そんな大佐に大怪我を負わせた奴て、どんな奴だったんですか!?」
「あぁ? あぁー……」
「カタバミ、辞めろ」
「お気遣いなく、アヤメ様っと……んでカタバミちゃん、クシノヤって人知ってるか?」
「んん? ……聞いたことがあるような?」
「元軍人で俺達の先輩……アナベルさんと同期の人だよ。その人だ」
「あれ? 大佐って確か山賊を捕まえに行ってたような……まさか!!」
「そのまさかだよ。俺もビビったわ……山賊のリーダーがクシノヤさんだった時はな」
「……それで今は何処に? 軍の獄舎ですか?」
「いいや……あの人はもうこの世に居ない。火葬しといたからな」
プロテアの寂しそうな表情を見て、会話の内容が不味かったと悟るカタバミ。
どうこの場を取り繕うかあたふたしていると、それに気づいたプロテアは涼しい顔でなだめる。
「い~よ、い~よお気遣いなく。アヤメと違って素直で良い子だよな~カタバミちゃん……いって!?」
「一言多いんだよ、貴様」
傷の癒えていない頭部を叩くアヤメ。
じゃれ合う2人を背に、車の運転手テッセンと助手席に座るカタバミは、周囲に気を配りながら真昼の山道を進んで行くのであった。
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タクスス達がモンテラを出発して2日後。
羽毛の様に真っ白な軍服を纏う彼らが、モンテラの地に辿り着いた。
「……なんもねぇな、本当」
「今回の現場は新興宗教の本部……情報によれば、そこで大量虐殺があったらしいです、プロテア大佐」
「んだそりゃ? 仲間割れでもしたのか?」
「さぁ……? 行ってみれば分かるんじゃないですかね」
「了解了解。おう、アヤメ!! そっちは任せたぞ」
「言われるまでもない。行くぞカタバミ」
「了解っ!!」
元気よく返事をするカタバミ。
彼女達は街の様子を探るため、別行動をとることになった。
煙草を吹かせるリーダーを筆頭に、教会へと歩くプロテア達の部隊。
そんな行列を、怯えた目をして住民は見つめていた。
「……何か目立ってますね」
「そりゃ~なぁ~……こんなぞろぞろと軍人が来てみろよ。嫌でも目立つわな。んで……何だっけ……キルムーチョムナムナ? その団体の本部がここなの? テッセンちゃん」
「恐らく……」
「へぇー……金持ってんな。教祖様って貴族か?」
「ですかね」
「了解了解っと……お前ら、早速調査するぞ」
情報交換を行っていると、厳格な造りが見る者を驚愕させる、キルムーチョムナムナの総本山へと到達していた。
立派な造りに関心している部下たちを他所に、プロテアは各々に指示を飛ばす。
教会内部の探索、内部に集まっていた信者達への事情徴収などなど……
数時間の調査を終え、散らばったピースを集めていくと、次第に事態の全容が見えてきた彼ら。
アヤメ達と街の広場で合流すると、持ち寄った情報を元に考察を始める。
「ただの仲間割れみてーだな。信者達の話によれば、首謀者は教祖のムナムナらしーぜ」
「こちらも概ね、貴様たちと同じだ。信者達を洗脳し、自分に従わない奴らを殺させたと言っていたな。今いる信者達は、運良く生き延びた連中みたいだ」
「どんな凶悪事件かと思ったら……ただの内輪揉めとはな? 教祖はその時に殺されて、骨まで塵になったんだと……」
「皆さ~ん!! ちょっと良いですか!?」
「んだよカタバミちゃん!! 今さ、俺が気持ちよく〆ようとしてたのによ!?」
「どうしたカタバミ? 向こうで何かあったのか?」
「いやですね……信者に聞き込み調査をしていたら、その子供が興味深い事を言っていたんですよ」
「あぁん?」
「どうもですね……ローズさんがこの街に来ていたかもしれないんですよ」




