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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
49/102

崇めよムナムナ

 侵入を拒んでいた障壁をローズの言葉で焼き払い、姿を現した隠し通路の中を、足音を殺して進んで行く2人。

 前進するにつれ熱がこもり、耳障りになっていく喘ぎ声に、タクスス達は不快感を覚える。


「おやおや、随分とお盛んなようで」


「……ここまで聞こえてくるって……どんだけ騒いでるんですか……」


「さあ? 実際に見れば分かるのではないですかねぇ」


 小声で話す2人。

 警戒心を高める彼女達の元に、広間のように開けた空間が現れる。

 掃除が行き届いていないのか、ロウソクの光に反射したオーブが空中をゆらゆらと舞っているそこでは、現在進行形である儀式が行われていた。

 

「あっ……あぁ、ムナムナ様ぁ……」


 恍惚な表情で、教祖のムナムナと肌を重ね合わせる女性。

 周囲には今か今かと順番待ちを行う、生まれたままの状態の女性が数十人も存在した。


「これはこれは……何ですかこの乱交パーティーは」


「……うぅ……臭いが……ハチミツみたい……」

 

 性行為によって発生し、室内に充満した甘ったるく蒸れた臭いに、思わず鼻をつまんでしまうタクスス。

 薄暗い室内に身を溶け込ませながら、広間への入口付近で事の成り行きを見守っていると、服が乱れている教祖のムナムナは、片手で信者の女を抱きながら、空いた方の手で器に盛られた白い粉を手繰り寄せた。


「はい、ニステプロンを頑張ったアナタへ……キルムーチョ」


「き、きるむーちょ……あ、あはっ!! ひ、う」


 少量の粉を口から摂取した女性。

 たちまち肩を振舞わせた彼女は、焦点の合わない目を天井へと向けると、白目をむいて気絶する。

 火照った体は首を落とした魚のように、時折ビクンと痙攣している。


「……あの白い粉って……薬物か何かでしょうか」


「そうですねぇ……どうやって入手したのかは分かりませんが……山賊達が売っていた物ではないですかねぇ」


「……信者の皆さんは気が付いているのでしょうか」


「さあ……妄信していて、目がやられているのでは? 食い物にするには、打ってつけの連中ですからねぇ」


 シャガの仲間であった山賊達の顔を思い浮かべる2人。

 彼らが売買していた品が、巡り巡って目の前で悪行を働いていた。

 思わぬ所でシャガを虐める材料が1つ出来たと、ローズは意地の悪い笑みを浮かべている。

 そんな彼女達には気が付かず、甘美な光に誘われて、集い蠢く虫達。

 それが毒だとも知らずに餌を奪い合う光景は、何とも醜く愚鈍である。

 

「ん~……会員証は……何処かにないですかねぇ……」


「……ローズさん、あれじゃないですか?」


「教祖の後ろにある棚の……アレですか? あー……そうかもしれないですねぇ」


「……隙を見て盗み取りましょう」


「ええ、そうしましょうか」


「……ちょっと、アンタら何してるの?」


 背後の通路から声を掛けられた2人。

 目の前にしか注意を向けていなかった彼女達は、背後から迫る裸の信者に呆気なく見つかってしまう。


「……私達、入信するためムナムナ様に会いに来た者です」


「ええ、偉大なるムナムナ陛下様を崇め奉る……」


「……ここに来れるのは、()()入信している人間だけだ。例外はないよ」


「……」


「おやおや……」


「みんな!! 不届き者が居るよ!!」


 女性の甲高い言葉に、無数の視線がタクスス達に突き刺さる。

 異変に気が付き、乱れた衣服を整えたムナムナは、侵入者がここに来た理由を察したのだろう。

 即座に信者達へ的確な指示を送る。


「皆さん、どうやら邪魔者が入ったようです。今すぐにこの場から追い出しなさい」


「おぉ!!」


「分かったわムナムナ様!!」


「やってやるわよ!!」


「エルピョ……皆さんの今後を『祝わせて』頂きますので、よろしくお願いします」


 タクスス達が目を付けていた棚から、加工前の会員証らしき物が入ったケースを手に取ると、裸婦の群れに姿を溶け込ませ、非常口のような場所から逃亡していくムナムナ。

 直ぐに追おうにも、数多の信者達に行く手を遮られるタクスス達。

 じりじりと部屋の隅に追い詰められていく。


「……ローズさん、どうします?」


「そうですねぇ……下手に暴れると面倒になるのですが……ここは人目につかない場所ですし、殺っていいでしょ」


「……久々に2人で戦いますね」


「ローナバリス以来なので、数日ぶりですかね」


「……殺し漏れがないように……ですよね」


「はいはい……まあ最悪、アムネシアに記憶をいじらせればいいですし、気楽にいきましょう、気楽に」


「……あの煩い人、記憶を覗くだけじゃなかったんですよね……何で言わないのかな……」


「騒音機の考えることなんて、分からなくて当然ですよ……ん、それではいきますか」


「……ええ」


 腰の収納ケースからナイフを取り出すローズ。

 数多の敵に囲まれながらも、その表情から笑みが崩れることはない。

 頼もしいボディーガードへ合図するかのように、タクススは開戦の言葉を信者に告げる。


「……皆さんに恨みはないですけど……敵対するなら仕方がありません……『死んで』下さい」

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