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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
48/102

ムナムナ様とニステプロン

 正面玄関から侵入を果たしたタクススとローズ。

 周囲に人の気配は今のところない。

 静まり返った教会内部には、2人の足音が微かに響き渡っている。

 

「……誰も居ないですね」


「そうですねぇ。騒々しい昼間とは打って変わって静かなことで」


「……先を急ぎましょうか」


「ええ、そうしま……ちょっとコチラへ!!」


「……え、うぁ」


 タクススが羽織る黒いローブの袖を引っ張り、チャーチチェアの影へと身を隠すローズ。

 またどさくさに紛れてセクハラを始める気か?

 慣れた様子のタクススは、呆れたようにローズへ注意を促す。


「……こんな時ぐらい真面目にやってくれません?」


「おやおや、どうやら勘違いしていますねぇ……あそこを見て下さい」


「……?」


 恐る恐る物陰から、ローズが人差し指で示す方向を見つめるタクスス。

 演台が据え置かれたその場所に、数人の信者が姿を現す。

 誰かを探しているようで、忙しなく辺りを見回している彼らの会話に、2人はじっと耳を傾ける。


「いたか!?」


「いいや……やっべぇ、早く侵入者を見つけないと!!」


「ああ……ムナムナ様に叱られちまうぜ、俺ら……」


「あの人、今は何処にいるんだ?」


「さあ……? この時間だと……ニステプロン中じゃねぇか?」


「ああ、ニステプロンか……じゃあ、いつもの場所だよな」」


「そうだな。うっかり近寄らないように気をつけようぜ。女達が煩くて仕方がねぇからよ」


「……やっべ、想像してたら勃起してきちゃった……ほら見て見て~」


「うわ、え、来るなよこっちに!!」


 昼休みに騒ぐ男子中学生のようにじゃれ合う2人。

 深夜テンションのまま走り去っていくと、室内が再び静寂に包まれていく。

 

「侵入者……シャガ達のことでしょうねぇ。早速役割を果たすとは……関心関心」


「……あの、そろそろいいですよね。距離を取りましょ……?」


「さてと……肝心の教祖は、ニステプロンでしたっけ? 意味は分かりませんが取り込み中のようですねぇ……」


「……凄いこの人、全く聞く気がない……」


「さあタクスス……やることやって、こんな所さっさとおさらばしましょうか」


 心の中で、深いため息を吐くタクスス。

 ローズと会ってからというもの、いつもいつも過剰なスキンシップを受ける日々が続く。


(……ローズさん、何で私をこんなに気に入っているのかな……)


 たった数日程度の付き合いにも関わらず、熟練夫婦でも持ち合わせることが難しい、好意の感情を向けて来るローズ。

 思い返せば、初めて会った時もこの上なく友好的に接してきた彼女。

 戦争を引き起こすのに、私の力が丁度いいからみたいに言っていたけど……

 この人、本当にそれだけなのかな。

 何か他にもあるんじゃないかな。

 チャーチチェアの影から離れ、天井が湾曲に形作られた、薄暗い通路を進んで行く2人。

 並走して走るローズの横顔を見つめるタクススは、数日前に、彼女と湖の畔で交わしたある会話を思い出していた。


(はみ出し者同士……ね……)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 教祖の居場所を探し続ける2人。

 教会内のめぼしい場所は殆ど調べつくしたが、一向に見つからないまま時間だけが過ぎていた。


「……いないですね」


「そうですねぇ……地下室でしょうか?」


「……それっぽい場所ありましたっけ……?」


「いえいえ、全くですねぇ」


「……隠し部屋……とかどうでしょう」


「考えられますねぇ……はぁー……ただでさえ無駄に広いのに、その可能性も考慮しないといけないとは……ちょっと失礼」


 頭を悩ませるローズは、自然な手つきで上着のポケットから煙草を取り出すと、ライターで火を点け口へと運ぶ。

 そよ風に乗った白煙は、辺りに鼻に突き刺さる刺激臭をばら撒いていく。


「……ローズさん、潜入中は煙草を吸わないんじゃ……」


「考え事をする時は別ですよ」


「……」


「いや~定期的に吸わないとね、頭から白いモヤモヤが晴れないのですよ~そんな状態で考え事なんてねぇ……? しょうがないしょうがない」


 煙草の魔力に取り憑かれた中毒者は、今日も変わらず言い訳をする。

 この人もう手遅れなんじゃ……?

 彼女のこれからの人生に哀れみを抱いてしまうタクスス。

 ローズが一服し終えるのを待つ間、少しでも手掛かりがないか周囲を見回す。


「…………ん?」


「おやおや、どうしました?」


「……煙が……壁の中に入って行きましたよ」


 部屋と部屋の間と思わしき場所。

 2人が立ち尽くす外の通路からは見えないが、隣接する内部の部屋を区切る壁が位置する場所に、風に煽られ広がった煙が、糸のよう収束して吸い寄せられている。

 言わず語らず足を止めず。

 違和感のある壁の近くまで歩を進めると、何か仕掛けがないか両手で壁を触って行く2人。

 念入りに探っていくが、それらしき物は見当たらない。

 ……せめてこの先に何があるのかだけでも知りたい。

 耳を壁へ当てると、内部の様子を物音から見抜こうとするタクスス達。

 そんな彼女達に、性行為中と思わしき女性の喘ぎ声が、壁を伝って聞こえて来た。


「おやおや……」


「……今の声……教祖のムナムナと、信者の女性……でしょうか?」


「あの男達が言っていたアレって……そういうことですか」


「……ええ、ニステプロンはセックスの隠語みたいですね……」

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