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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
46/102

潜入作戦

 世にも奇妙な巣窟へと迷い込んでしまった。

 対面した警備員に気づかれないように、周囲をさりげなく確認する4人。

 コチラを一瞥しながら夜の街を練り歩く住人達が、ささやき合うようにして会話している。

 

「あの人達……余所者?」


「え? キルムーチョムナムナじゃないの? うっそぉ~!!」


 先ほどのやり取りの一部始終を見て、信仰心がないタクスス達の言動に難色を示す彼、彼女達。

 その言葉に悪気はないのだろうが……

 純粋な疑問を投げかけられているタクスス達は、時間と共に居た堪れない気持ちになってくる。

 そんな様子を見て、張り付いた笑顔で助け舟を出してくる警備員の男性。

 他の旅人にも同様の事をしているのだろう。

 彼の慣れた振舞いから察せられる。


「そうだねぇ……今から教会に行ったらどうだい? 取り合えず事情を説明してさ、僕達の仲間になろうよ」


「おやおや、何故そのような煩わしい事をせねばならないのでしょうか」


「この街のルールだからね」


「教団の独善的なルールの間違いでは?」


 一歩も退く気がない様子のローズ。

 会話は平行線を辿っている。

 いっその事、焼き殺して強引に進んでやろうかとも考えたが、ここは周囲に人が多すぎる。

 殺し漏れが出てくれば、軍隊との衝突は避けられない。

 なるべく穏便に、どうやってこの場を切り抜けようか考えを巡らせる彼女。

 そうこうしていると、どこからか小石が飛んできた。

 彼女の額に勢いよく投げつけられたそれは、汗のように流れる赤い液体を生み出すことになる。


「……ローズさん!? ……いった……!!」


「ちょ、タクススお姉さん!? おい、お前ら!! 何するんだよ!!」


「何と言われましても……神がお怒りなのでしょうか? 早く会員になった方が良いのではないでしょうか……」


 見世物のような寸劇を見学する歩行者から、思わず微笑みが零れてしまう。

 誰が石を投げつけてきたのか。

 人混みと薄暗さが合わさって、この状況で犯人を特定するのは、流石のローズでも至難の業である。

 彼女達は傷口を手で押さえながら、一時的に退避することを選択した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「何だよアイツら!! こんなの虐めじゃんかよっ!!」

 

 人気の無い街の路地裏で、感情に身を任せて騒ぎ立てるシャガ。

 アムネシアと手分けして、軽傷を負ったタクススとローズの手当てを行っている。


「我輩の出番が早速来たんだよぉ……ぐぇ!?」


「大人しく手当て出来ないのですか? 私、少し機嫌が悪いのですよ」


「うぅ……分かったんだよぉ……」


「タクススお姉さん、大丈夫?」


「……うん。ありがとうね、シャガ君」


「どういたしまして!!」


 アムネシアが持参した医療道具で、簡易的に止血した2人。

 頭に包帯を巻き、一通りの処置が完了すると、これからの計画についてアムネシアが率先して会話を切り出してきた。


「やっぱ、教会? って所に行くしかないんだよぉ!!」


「……ローズさん、どうします?」


「そうですねぇ……あの様子だと、この街の出口は何処も同じでしょうねぇ」


「だよね、俺もそう思う」


「そうなると……これはこれは面倒なことになりますねぇ……」


「……またあの場所に行くんですか……」


「……俺がみんなの分の会員証を貰って来ようか?」


「出来るなら頼みたいですがねぇ……危険ですよ、この感じだと」


「だよなぁ……」


「ならば……もう皆で突撃するしかないんだよぉ!!」


「アナタの意見に賛同するのは癪ですが……それが手っ取り早いでしょうねぇ……」


 取り出した煙草に火を点けると、一服し始めるローズ。

 いつになったら寝床に辿り着けるのか。

 アムネシアの処分について、忘却の彼方へと消えてしまった彼女は、民家の壁を死んだ魚のような目をして眺め続けていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 窓から放たれる光により、昼間とは違った雰囲気を醸し出す教会。

 シャガとアムネシアに指示を出したローズは、タクススの隣で、教会内部へと進入する頃合いを見計らっていた。


「……こんな時間に活動しているのですね」


「勤勉なことですよ……さて、タクスス。作戦は頭に入っていますね?」


「……ええ……見つからずに会員証を盗み取る……ですよね?」


「はいはい。シャガと騒音発生器が援護し易いように、立ち位置調整をお忘れなく」


「……シャガ君、あの煩い人と一緒で大丈夫かな」


「大丈夫でしょう。彼なら……多分……」


 シャガの山賊生活で培った能力を買ったローズは、彼に遊撃の役割を与え、現在は別行動をとっている。

 正直1人でも良かったのだが、そうなるとアムネシアの手綱を取る人間が居なくなるので、弾除け用に彼女を同行させている。

 シャガに面倒を押し付けたローズは、教会を訪問する前に煙草を吸い始める。


「……今日はよく吸いますね、ローズさん」


「くっくっく……潜入中は、ニコチンを気軽に摂取出来ませんからねぇ……」


「……何か楽しそうですね」


「おやおや、そう見えますか? ……結構楽しいですよ、大人のかくれんぼ」


 煙草を地面へ捨てると、靴で火種を揉み消す彼女。

 火が消えたのを合図に、いよいよ潜入作戦が始まった。

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