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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
43/102

神の街・モンテラ

 始めは聞き間違いだと思った。

 一文字もかすらない名前を言われたタクスス達は、思考が止まってしまう。


「……きるむーちょ、え? ……何ですかそれ」


「キルムーチョムナムナですよ~知らないんですか?」


「……知らないです。そんな名前」


「そうですか~いや、失礼しました。比較的最近になって出来た宗教でしてね……アスピラシオンは知っていますか?」


「……はい、その名前は知っています」


「あ、それなら話が早いです!! キルムーチョムナムナはですね、アスピラシオンから派生した宗教団体になっているのですよっ!!」


「……はぁ……」


「この世界の言葉に力を与えたアスピラシオン。その子供であるキルムーチョムナムナ様を祀る団体……それが私達なのです!!」


 親切に丁寧に、そして決して馬鹿にする様子もなく、真実を淡々と話しているような様子の男達。

 タクススは、記憶の図書館を隅々まで探し回っても、キルムーチョムナムナなんて名前を見つけられなかった。

 小声でローズに話しかけるタクスス。

 渦巻く疑念が彼女の心を支配している。


「……ローズさん、どう思います?」


「そうですねぇ……アスピラシオンに子供がいたこと自体、初耳なのですがねぇ……臭い臭い、胡散臭いですねぇ」


「……ですよね」


「どうしましょうか……付いて行くと確実に面倒事に巻き込まれそうですねぇ」


「……だからと言って、このまま大人しく帰ってくれるのでしょうか……」


「ちょっとだけ覗いて行きます?」


「……そうですね。危なくなったら帰りましょう」


 打ち合わせが終わった2人は、修道服を纏う彼らに再度向き直す。

 ほんの少しだけ興味がある。

 入信するかどうかは分からないが、見学させて欲しい。

 言葉を選びながらそう伝えると、信者達の表情が一段と明るくなる。


「そうですかっ!! では行きましょう!! ささ、コチラです……」


 ぞろぞろと足早で向かう彼らの後を追うタクスス達。

 彼女達の頭上で滞空するズキンガラスは、その集団を見てせせら笑っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 街の中央に()()がそびえ立っている。

 本物と見間違う、なんなら本物以上に立派な造りをした教会が、タクスス達を出迎える。

 何も知らずに連れて来られた人間は、身のすくむようなそれに圧倒され、今までの疑惑は何処かへと消えてしまうだろう。

 中へ入ると、神秘的な空間があらゆる人々を出迎える。

 息が詰まるような感覚。

 広大な空間と反して、そのような感覚を覚えてしまうのは、それだけのエネルギーがこの空間に充満しているのだろうか。


「……凄い」


「うわぁ……俺、こんな場所始めて来たよ。なんか……落ち着かない感じ」


「これはこれは……少し考えを改めた方が良いかもしれないですねぇ……」


 十中八九、悪徳宗教だと思っていた彼女達。

 場合によっては、派手に交戦することも想定していたが、考え過ぎだったかかもしれない。

 自分達の見識の狭さを恥じていると、最前列の空間に、教祖と思わしき男性が現れた。

 黒の修道服を纏い、髪は長く、髭も異常に伸びている男性。

 小汚い風貌が、返って厳かな雰囲気に拍車をかけている。

 そんな中、場内を埋め尽くす信者達のどよめきに紛れて、彼の名前が聞こえて来た。


「ムナムナ様だ……」


「ムナムナ様よ!!」


 ムナムナ。

 それが彼の名前らしい。

 哀れ慈しんでいるその目は、世界中の全ての人間を愛しているかのようだ。

 

「……皆さん、どうもラ・ナー」


「ラ・ナー!!」


「エルピョ。皆さんに会えたことを嬉しく思います」


「……あの、何ですかアレ」


「アレと言いますと?」


「ら・な-……? エル……エル……」


「エルピョですよ。これはこの教団で使われている言葉であり、感謝を伝える言葉です。ちなみにラ・ナーはおはよう、こんにちは、こんばんはの挨拶を現す言葉ですね」


「……へ、へぇー……」


「あっ!! 教祖様が話しますよ、耳を傾けましょう」


 説明を受け、全てを察したタクスス達。

 集団の後方で、筆舌に尽くしがたい有様を見学する彼女達は、繰り広げられる喜劇を無心で眺めながら、早く終わらないかなと思っていた。

 だが、どうやら幕はまだまだ下りないようだ。


「皆さんがパパ―リンを行うことで得られる、ゴディバ……これが無ければ、神の祝福である、キルムーチョも大したことがありません。ただ一心に、パパ―リンを行うことが大切です。ですが、多大な祝福を受けたいのであれば、時間がいくらあっても足りません。そこで皆さんが次に行うことがあります。何だと思いますか? ……そこの緑髪の女性」


「はい……私達は、ラ・クール・ゼタを行う必要があります」


「エルピョ。その通りです。この世界を支配する考え……資本主義の思想。これによって生み出された金は汚らわしい物です……欲が渦巻いています。皆様も見たことでしょう……景気の悪化に伴い、金を得ようと犯罪を犯す人々を……」


「おぉ……!!」


「確かに」


「あ……あ……!!」


「凄い……凄いっ……!!」


「エルピョ。金を捨て去ること……罪深き世界の代物から解き放たれる事こそが、徳を得るために必要な事なのです……さあ、皆さん……金を捨てましょう……ラ・クール・ゼタを行いましょう……!!」


「うぉぉぉぉぉ!!」


「教祖様バンザイ!! 教祖様バンザイ!!」


「ムナムナっ!! ムナムナっ!! ムナムナっ!! ムナムナっ!!」


 一斉に宙へ飛び交うお札の数々。

 紙吹雪のようなそれはひらひらと舞いながら、教祖や信者達を祝福しているようだ。

 タクスス達を連れて来た男は、涙を流しながらその光景を見ている。

 心の琴線に触れたようだ。

 滝のよう流れる液体を手で拭い、赤くなった目をコチラに向けている。


「うっ……くっ!! やっぱ凄いよ、ムナムナ様は……!! さあ、君達もキルムーチョムナムナに入信したくなったかい!? なったよねっ!?」


「……あ、やっと終わったんですね……」

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