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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
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代償

「……子宮が……無い?」


 親友に挨拶をする気軽さで、タクススへ衝撃の言葉を投げつけたアムネシア。

 おちょくられているような感覚になったタクススの心に、小さな焔が宿る。

 無言で近づき腰を落とすと、静かに燃える灯をアムネシアへと向ける。


「……ひぃ!?」


「……アナタ、さっきから聞いてたら……ふざけてるんですか……?」


「ちちちち違うんだよぉ!! 本当なんだよぉ!! 信じられないかもしれないけどさっ!?」


「おやおや、タクススが珍しく怒っていますねぇ。アナタ、本当に殺されますよ?」


「何で本当の事を言ってるのに殺されるんだよぉ!?」


「タクススお姉さんさー……病み上がりで疲れてるんだよね。冗談とか言わずさ、もっと気を遣おうよ」


「子供に諭されてるよぉ!? 違うんだよぉ!! 僕はちゃんと見たんだよぉ!! 何か……何か自覚症状でもないの!?」


「……自覚症状?」


「そうそう!!」


「…………あっ」


 1つ心当たりがある。

 彼女が抱える悩み。

 10代後半の女性なら必ず訪れる、アレがまだ来ていないのだ。


「……生理が来ていない」


「生理!? そうそれそれ!! まさしくそれだよぉ!!」


「え、生理が来ない? え……」


「シャガ、耳を塞ぎなさい。男が聞く話ではないので」


 会話に混じらないようにシャガへと促すローズ。

 彼女の見立てでは、これから生々しいワードが飛び交う事だろう。

 いくら子供とは言え、シャガも男だ。

 配慮するのに越したことは無い。

 気を遣ったローズの言葉に従うシャガ。

 両手で耳を塞いだのを確認すると、2人の会話に耳を傾ける。


「……いやでも……それだけで判断するには……」


「血生臭い感じは? 生理が来ないって言っても、臭いとかであるじゃない? それはどうなんだよぉ」


「……無臭ですね」


「イカ臭くない?」


「……無臭です」


「ストレスは?」


「……溜まっていないです。むしろ清々しい気分です」


「……セックスした?」


「するわけないでしょ!!」


「じゃあ、やっぱり子宮が無くなっていたのは見間違いじゃないね。ふふん!! 我輩の目に狂いはないのだ!! 散々批判を浴びせた君達!! 何か言うことは無いのかね!?」


「……ちょっと煩いんで、黙っててくれませんか?」


「僕の尊厳は何処に行ったんだよぉ……」


 縛られたまま顔から床に倒れ込むアムネシア。

 両目から大量の液体を流し続け、めそめそと泣いている。

 そんな彼女の奇行がどうでもいいくらい、今のタクススは別の事を考えていた。


(最近生理が来るのが遅かった理由て……私の子宮が……何で? 何時から? ……もしかして、あの時の言葉って……)


 お腹を摩りながら、記憶の糸を手繰るタクスス。

 ステラ家で毒殺された数日前。

 意識が闇の中に沈んでいったあの時のこと。

 黒いモヤがかかった、謎の人物が語り掛けてきた言葉を思い出す。


『ダイショウハイタダキマスガ』


 代償。

 たった二文字の言葉に背筋が凍るタクスス。

 死から逃れられたとは言え、取り返しがつかない状況に陥ってしまった。

 そう実感するには、十分なほどの心当たりが存在した。


「……」


「えー……タクスス、今晩はもう寝ませんか?」


「……そう、ですね」


 日も暮れて時間が経っている。

 昼間に散々な目に遭った彼女の脳味噌は、疲労で殆ど動いていない。

 嫌な現実から逃げるように、ベッドへ体を預けるタクスス。

 深いため息と共に、彼女は眠りについていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌朝、いつもより早い時間帯に目が覚めてしまったタクスス。

 床で眠るアムネシアを起こさないように、椅子に腰をかけて就寝していたローズとシャガを起こす。

 

「……おはようございます」


「おやおや……今日は早いですねぇ……昨日の事が尾を引いていますか?」


「……そうですね」


「タクススお姉さん、大丈夫?」


「……うん、体はだいぶね。気分はまだちょっと……」


「そうですかそうですか。何か飲みます?」


「……そうですね。何か頂けますか?」


 タクススの返答を聞いたローズは、昨日彼女達が街で購入した商品の中からコーヒー豆を取り出し、アムネシアの家のキッチンへと向かう。

 リュックの中から専用の機材を取り出すと、慣れた手つきで豆を炒っていき、部屋中に香ばしい匂いを充満させる。


「……ん? コーヒーの匂い……君達、僕の家を実家だと思ってない!?」


「おやおや、煩い人間が目覚めましたね」


「おはようの一言もない!?」


「そう文句を言わないで下さいよ……タクススとシャガ、どうぞ」


 手渡された小さなコップに注がれた黒い液体。

 火傷に注意して口の中へ運ぶ3人を、何も出来ないアムネシアはただただじっと見ていた。


「うぅ……僕の分すらないのかよぉ。あんまりだよぉ……」


「……すみませんねぇ。素で忘れていました」


「もういいよぉ……君らの扱いの雑さには慣れたからさ……あ、そうそう」


「ん? 何でしょう?」


「僕さ、君達に同行していいかな?」

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