表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
39/102

狂い惑わす幻

 風が止むことは無く、激戦に呼応するように激しさが増していく。

 アヤメの元から飛ぶように走って来たカタバミは、タクスス達の元へ辿り着くと、尻を地面に付けて一息ついている。


「ぜぇ……ぜぇ……げっほ、死ぬかと思った……」


「……カタバミさん、あの人を1人にして良いんですか? あの数は流石に……」


「だ、大丈夫です、えっと……」


「……タクススです」


「大丈夫です、タクススさん。むしろ、私はお荷物ですよ!! あの場に居ると……」


 タクススからの質問に、食い入るような目をコチラに向けて、説明していくカタバミ。

 強風の影響を考慮して、懸命に伝えようと口を大きく開ける彼女。

 そんな最中、四辺に建ち並ぶ居所の外壁が、次々と吹き飛ばされていくのを目撃すると、カタバミの表情がみるみる曇っていく。


「やっば、やっば!! 巻き込まれる……!!」


「何だよコレ……完全に嵐じゃん……どうなってるの!? 全力じゃなかったの!?」


「えぇ~と……シャガで合ってるよね? んなわけないでしょ!! アヤメ少将が本気で暴れ始めたら、民家なんて跡形もなく吹き飛ばされ……!! ん?」


 雲一つない晴天の空から、絶え間なく降り注ぐコンクリートの雨。

 彼女の言った通り、半壊した住居の一部がタクスス達の元へ迫って来る。

 腰を下ろす彼女達はその場から飛び上がると、瓦礫の下敷きにならない位置まで逃げていく。 

 

「……はっ……はっ!! やみ、あがりなのに……」


「タクススお姉さん!! 無理しないで!!」


「……ゴメン、ちょっと、肩……貸して……」


「あ、私の肩で良ければどうぞ!!」


「……す、すみません……」


「皆さん」


「……? どうしました? えぇ~と……コルスさんで合っていますか?」


「はい」


「では改めてどうしました!?」


「私の見間違いでなければ、()()()()()まで降って来てますよ」


 先ほどの場所を注視する4人。

 粉々に砕かれた残骸に紛れて、微かに動く姿。

 アヤメに吹き飛ばされた2匹の篏合体が蹲っているようだ。

 猿をベースに歪な進化を遂げている生物は、発達した両腕を地面に叩きつけ、歩道に亀裂を作る。

 

「うっわ!? マジかよ!!」


「あの腕力……ゴリラの遺伝子でも配合されているのでしょうか。シャガ、ちょっと捕まえて来てくれます?」


「無理に決まってんだろコルスさん!! そもそも捕まえてどうする気だよ!?」


「ん~……その辺で売りさばく?」


「売るっ!?」


「はいそこの2人っ!! こんな時にふざけないで下さい!!」


「……あの」


「だいたい何ですか、売るって!! あんなキモイ生物が売れる訳ないじゃないですか!!」


「…………あの」


「いや~案外売れるかもしれませんよ? やんちゃな所がチャームポイント✰ 未確認生物のキメラ君で~す!! ……行けますねこれは」


「全っ然です!! 早く捕まえますよっ!!」


「………………はぁ、もういいです」

 

「あれ? タクススお姉さん、どうしたの?」


「……来てますよ、直ぐそこまで」


 化け物達とは距離があるため、直ぐには襲われないだろうと高をくくり、視線を外し会話に夢中で気が付かなかった3人。

 タクススの呼びかけに応じた時には、鋭利な爪を突き立てる化け物が鼻先まで迫ってきていた。


「速っ!? 『止まれ』!!」


「調教がなっていませんね……『増えろ』」


 動きを止めたシャガに続く形で、身に纏う黒のスーツを2着増やしたコルス。

 両手に1枚ずつ持つと、目くらましでも行うように、篏合体達の顔に向かって投げ捨てる。

 

「さあ、『潰れて』ください。重さによってね」


 彼の二言目によって、地面へと叩きつけられる篏合体達。

 全身に力を込めるが、覆い被さるひらひらなスーツに押さえつけられており、その場から立ち上がる事すら出来ない。


「すげぇ!! コルスさん、そんな言葉使えるんだ!!」


「この程度、朝飯前ですよ。どれどれ……」


「ちょっ!! 危ないって!!」


「平気ですよシャガ。ちょっと()()()()するだけですから」


(俺を殺そうとした罰としてな)


 笑顔を崩さず、スタスタと歩いて行くコルス。

 その場で足掻く篏合体に近寄ると、何を言っているのか、途切れ途切れにしか聞こえないくらいの小さな声で、ある言葉を呟く。


「ゴ……ども……煩いん……なぁ……狂い『■■』」


 毒を一言吐いた彼はそれで満足したのか、篏合体達の拘束を解いていくと、背中を見せて悠々と戻って来る。

 元の重さに戻ったスーツを振り払い、再度襲い掛かる化け物達。

 ナイフのように鋭利な爪が、コルスの後背へと振り下ろされる……

 そう思っていたのは、タクスス達3人だけであった。


「……えっ!? 何で同士討ちをしているんですか!?」


「は~い、軍人さん!! 私は仕事を終えたので、後は頼みますよ」


「え? あ、分かりました!!」


 彼に言われるがまま、カタバミは篏合体達を氷漬けにし、生け捕りにしていく。

 生命維持活動を一時的に止める篏合体達。

 同士討ちによって生まれた傷は、生身の人間なら即死してもおかしくない程の重傷であった。


「……本気で殺しにいってる。味方同士で? こんな事が出来る言葉って確か……」


 コルスが使った言葉を、記憶の図書館から探しだすカタバミ。

 彼女の思考を邪魔するようなある変化が、ふらりと訪ねて来たのである。

 ……風が止んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ