邂逅
(うっわ……すっごい叫んでるよぉ……当然と言えば当然だけどさ……)
細身な体で暴れるタクススに、哀れみの感情を向けるアムネシア。
ガッチリと手術台に固定されているとは言え、振動が地面を伝うほどの力である。
金切り声の悲鳴を上げ続ける彼女は、アイマスクの下から涙が溢れ出している。
(早く手術を終わらせよう、そうしよう……ローズが言っていた弾丸ってこれかな? ……周囲の臓器の損傷が酷いんだけどぉ?……これどうしようか……)
鑷子を使って、右肩、そして臓器の間に挟まっていた弾丸を抜き取るアムネシア。
取り出した鉄の塊には、生暖かい血が纏わりついている。
(よ~し、後は……糸で縫う……? ちょっとそんなレベルじゃないねこれ……焼く?)
出血が止まらない臓器をどう手当するか頭を悩ませる彼女。
衝撃によって破裂したような跡を残すそれは、噴水のように液体を放出していた。
(はんだごてでやってみるんだよぉ……当たって砕けろさ……)
工具用の器具を引っ張り出してきた彼女は、電源を入れ熱を鉄の棒に貯め込めさせるアムネシア。
十分に加熱すると、損傷した内臓にそれを近づけ溶接を行っていく。
「ん"ん"ん"っ!? う"う"っ……ん"ん"ん"っん"ん"ん"っ!! う"う"う"う"う"う"う"う"っ!!」
(……知らない知らない。仕方がないんだよぉ!! ……おい、何でドン引きしてるんだよぉ!! やれって言ったの君達だろぉ!?)
側で見守っているローズ達をチラ見するアムネシア。
彼女の苦肉の策にドン引きしている2人は、絶句し言葉を失っている。
(……何で僕のことを人でなしみたいな目で見てるんだよぉ!! こんな状況で生きている方がおかしいんだよぉ!! 生き……てる……?)
気のせいだろうか。
さっきまでの悲鳴が聞こえない。
声を我慢出来るような痛みでは決してないはずである。
恐る恐る脈を取ってみる彼女。
抱いている違和感にすぐさま気が付く。
「脈が……止まって……? ……死んじゃったよぉ!?」
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真っ暗な空間。
見渡す限りの闇。
水の中に落ちていくような感覚と共に、沈み込んでいく意識。
彼女は気が付く。
「また……ここに来ちゃった……」
タクススは仕切りに辺りを見回す。
この空間に居るということはきっと……
「オヤ、オヒサシブリデスネ」
「……」
「カワイソウニ……マタシンデシマッタノデスネ」
「そうみたいですね……」
「ドクデシンデハヨミガエッテ……コンドハショックシデスカ」
「……」
「マア、ナンドシンデモ、ワタシガイルノデムダデスケドネ……タクスス、『■■』」
何度も味わったこの感覚。
奇妙な力が全身を包むと、周囲の暗闇に光が差し込んできた……
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「……アナタ、やってくれましたね」
「ち、違うよぉ!! 普通に治療していただけだよぉ!!
「え? 死んじゃったの? はんだごて使ったから……」
「結果論だよぉ!? そもそも死なないって言ったじゃないか!?」
「……タクススの自己申告でしたからね。まさかこんな事になるとは……」
狼狽える3人。
取り合えず傷口を塞ぎきったアムネシアは、切開していた下腹部を糸で縫い合わせると、薄い毛布を体に被せ、口に巻いていたタオルとアイマスクを外す。
「やっばいよぉ……やっぱり死んでるよぉ……」
「アムネシア、覚悟は出来ていますね?」
「何の!? 僕も死ぬの!?」
「当然でしょう。殺してしまったのですから……シャガ、彼女を止めなさい」
「う、うん」
「誰かぁぁぁぁぁ!! 僕、まだこの世からサヨナラしたくないよぉ!? げっほげっほっ!!」
叫び過ぎたアムネシアの口からワインのような物体が飛び出す。
あまりにストレスを感じてしまったため、吐血してしまったようだ。
怯え続ける彼女に容赦することなく、じりじりと追い詰めていく2人。
部屋の隅まで追いつめられたアムネシアは、不潔な床に額をこすりつけ懇願している。
「何でもするよぉ!! お金も出すよぉ!! 僕の技術が拙かったよぉ!! お願いだから殺さないでくだざいぃ!! う"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ""ん!!」
「うわぁ……ガチ泣きだ……」
「容赦する必要はありませんよ」
「う"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ""ん!!]
「……煩いですよ」
「そうだね……一思いに……煩い?」
何処かで聞いたフレーズに顔を動かす2人。
その場所を振り向くと、手術台で横たわっていたタクススが、いつの間にか上半身を起こしていた。
「え? タクススお姉さん、死んだんじゃ……」
「……前にも言ったと思うけど……私、死ねないから……そんなに心配しなくて良いのに2人とも……」
「アナタ、本当に死なないのですか?」
「……そうみたいですね……うん、ちょっと待ってください……いったぁぁぁぁぁぁ!!」
腹部を抑えるタクスス。
手術を終えた直ぐに目が覚めたため、痛みが全く引いていないようである。
唖然とする2人。
彼女達の頭では到底理解できない光景に、ただただ立ち尽くすことしか出来なかった。




