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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
34/102

邂逅

(うっわ……すっごい叫んでるよぉ……当然と言えば当然だけどさ……)


 細身な体で暴れるタクススに、哀れみの感情を向けるアムネシア。

 ガッチリと手術台に固定されているとは言え、振動が地面を伝うほどの力である。

 金切り声の悲鳴を上げ続ける彼女は、アイマスクの下から涙が溢れ出している。

 

(早く手術を終わらせよう、そうしよう……ローズが言っていた弾丸ってこれかな? ……周囲の臓器の損傷が酷いんだけどぉ?……これどうしようか……)


 鑷子を使って、右肩、そして臓器の間に挟まっていた弾丸を抜き取るアムネシア。

 取り出した鉄の塊には、生暖かい血が纏わりついている。


(よ~し、後は……糸で縫う……? ちょっとそんなレベルじゃないねこれ……焼く?)


 出血が止まらない臓器をどう手当するか頭を悩ませる彼女。

 衝撃によって破裂したような跡を残すそれは、噴水のように液体を放出していた。


(はんだごてでやってみるんだよぉ……当たって砕けろさ……)


 工具用の器具を引っ張り出してきた彼女は、電源を入れ熱を鉄の棒に貯め込めさせるアムネシア。

 十分に加熱すると、損傷した内臓にそれを近づけ溶接を行っていく。


「ん"ん"ん"っ!? う"う"っ……ん"ん"ん"っん"ん"ん"っ!! う"う"う"う"う"う"う"う"っ!!」


(……知らない知らない。仕方がないんだよぉ!! ……おい、何でドン引きしてるんだよぉ!! やれって言ったの君達だろぉ!?)


 側で見守っているローズ達をチラ見するアムネシア。

 彼女の苦肉の策にドン引きしている2人は、絶句し言葉を失っている。


(……何で僕のことを人でなしみたいな目で見てるんだよぉ!! こんな状況で生きている方がおかしいんだよぉ!! 生き……てる……?)


 気のせいだろうか。

 さっきまでの悲鳴が聞こえない。

 声を我慢出来るような痛みでは決してないはずである。

 恐る恐る脈を取ってみる彼女。

 抱いている違和感にすぐさま気が付く。


「脈が……止まって……? ……死んじゃったよぉ!?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 真っ暗な空間。

 見渡す限りの闇。

 水の中に落ちていくような感覚と共に、沈み込んでいく意識。

 彼女は気が付く。


「また……ここに来ちゃった……」


 タクススは仕切りに辺りを見回す。

 この空間に居るということはきっと……


「オヤ、オヒサシブリデスネ」


「……」


「カワイソウニ……マタシンデシマッタノデスネ」


「そうみたいですね……」


「ドクデシンデハヨミガエッテ……コンドハショックシデスカ」


「……」


「マア、ナンドシンデモ、ワタシガイルノデムダデスケドネ……タクスス、『■■』」


 何度も味わったこの感覚。

 奇妙な力が全身を包むと、周囲の暗闇に光が差し込んできた……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……アナタ、やってくれましたね」


「ち、違うよぉ!! 普通に治療していただけだよぉ!!


「え? 死んじゃったの? はんだごて使ったから……」


「結果論だよぉ!? そもそも死なないって言ったじゃないか!?」


「……タクススの自己申告でしたからね。まさかこんな事になるとは……」


 狼狽える3人。

 取り合えず傷口を塞ぎきったアムネシアは、切開していた下腹部を糸で縫い合わせると、薄い毛布を体に被せ、口に巻いていたタオルとアイマスクを外す。


「やっばいよぉ……やっぱり死んでるよぉ……」


「アムネシア、覚悟は出来ていますね?」


「何の!? 僕も死ぬの!?」


「当然でしょう。殺してしまったのですから……シャガ、彼女を止めなさい」


「う、うん」


「誰かぁぁぁぁぁ!! 僕、まだこの世からサヨナラしたくないよぉ!? げっほげっほっ!!」


 叫び過ぎたアムネシアの口からワインのような物体が飛び出す。

 あまりにストレスを感じてしまったため、吐血してしまったようだ。

 怯え続ける彼女に容赦することなく、じりじりと追い詰めていく2人。

 部屋の隅まで追いつめられたアムネシアは、不潔な床に額をこすりつけ懇願している。


「何でもするよぉ!! お金も出すよぉ!! 僕の技術が拙かったよぉ!! お願いだから殺さないでくだざいぃ!! う"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ""ん!!」


「うわぁ……ガチ泣きだ……」


「容赦する必要はありませんよ」


「う"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ""ん!!]


「……煩いですよ」


「そうだね……一思いに……煩い?」


 何処かで聞いたフレーズに顔を動かす2人。

 その場所を振り向くと、手術台で横たわっていたタクススが、いつの間にか上半身を起こしていた。


「え? タクススお姉さん、死んだんじゃ……」


「……前にも言ったと思うけど……私、死ねないから……そんなに心配しなくて良いのに2人とも……」


「アナタ、本当に死なないのですか?」


「……そうみたいですね……うん、ちょっと待ってください……いったぁぁぁぁぁぁ!!」


 腹部を抑えるタクスス。

 手術を終えた直ぐに目が覚めたため、痛みが全く引いていないようである。

 唖然とする2人。

 彼女達の頭では到底理解できない光景に、ただただ立ち尽くすことしか出来なかった。

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