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死へと誘う転生令嬢  作者: ✰✰✰死語遣いのサンシロウ✰✰✰
イルドアラン編
2/102

黒バラは何処に咲く

「平和すぎますねぇ……」

 

 太陽が頂上に居座る時間帯。

 無造作に書類が並べられているデスクに光が差し混んでいる。

 その空間でタバコを吹かせ、椅子の背もたれに背中を預けながら呟く女性。

 後方で縛った黒髪に、灰皿の火が接触しそうになるのを、別の女性が注意する。


「ちょっと!! ローズ少佐!! 危ないですよ!!」


「んん? ……何だ、カタバミさんですか」


「もー!! また髪に火が付きそうでしたよ!! あと、呼び捨てで良いって言ったじゃないですか!!」


「そうは言っても私は年下なのですよ」


「階級はそっちが上ですよ!!」


「そうは言ってもねぇ……他の人間が……納得しなさそうなので、遠慮しておきます」


「何で一瞬、俺の方を見たんだ……?」


 流し目で隣に座っている男性をチラッと見るローズ。

 不服そうな表情の彼は、カタバミから批判を浴びる。


「コイツの言うことは無視して良いですよ!!」


「……おいちょっと待て、何で俺がコイツ呼ばわりなんだ!? お前より階級も歳も、俺が上だぞ!?」


「頭の固いテッセンさん、そういう人間が何て呼ばれるか知ってますか? ……この老害がぁ!!」


「んだと!?」


(あぁー……また始まりましたよ……他所でやって欲しいですねぇ、全く)


 互いの胸ぐらを掴んでじゃれ合うように喧嘩する2人。

 そんな様子をボーっとしながら眺めている。


(こうも戦争が起きないと鬱憤も溜まりますよね……何のために軍隊に入ったのか分からなくなりますよ)


「おうお前ら!! こんな狭い場所で何やってんだ!!」


「げ!? アナベル中将!!」


「またお前らか……余程体力が有り余っているらしいな?」


「は……はは……」


「そんなお前らに指令だ」


 スキンヘッドで威圧感のある黒いグラサンを身につけた大柄の男性。

 彼の言葉に、一斉にこの場の人間は耳を傾ける。


「数日前、ゴルウェーの都市で大規模な虐殺が起こった」


「ゴルウェーって……確かステラ家があるあの都市ですか!?」


「ああ、原因はまだ分かっていないが……周辺地域は壊滅的な被害を受けているそうだ。そこでお前らに調査の依頼が届いている。そうだな……ローズ!! お前が指揮を取って現場の調査に向かってくれ!!」


「はいはい承知しました。何人か連れて行きますけどよろしいですか?」


「ああ、構わん」


「ではでは……準備して向かいましょうかね」


(大虐殺……何やら面白くなってきましたね)


 タバコを灰皿に押しつぶし、席を立つローズ。

 久々の荒事の予感に、彼女は高まる期待を抑えるので必死だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「これは……!!」


 3人の部下を従えて、ゴルウェーの都市へやって来たローズ。

 そこには、彼女の期待を大きく上回る大事件が目の前で起きている。

 丘の上から目前の城下町を眺めると、そこは一面火の海と化していた。

 街の至る所から昇る黒煙が、町全体を包み込んでいる。


(くっくっく……!! 想定以上……!!)


「ソテツ兵長!! マユミ上等兵!! ツリバナ一等兵!! 手分けして探しましょう!! 恐らくこの大事件を引き起こした張本人が居るはずです!!」


「はっ!!」


 猛々しい返事と共に、移動を開始するローズの部下3人。

 彼女は煙草を口に咥えると、煙を肺へと充分に送り込みながら歩き出した。


「ふぅー……さてさて、早く見つけたいものですねぇ」


 ゴルウェー都市の惨状に、思わず笑みを浮かべるローズ。

 純白の軍服に相応しくない、よどんだ空気を身に纏っている。

 この地方を血生臭い戦場に変えた張本人が見つかるのは、日が暮れ始め、辺りに闇が漂い始める時間帯であった……

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