序章
初投稿です。
pixivにも投稿してます。
私はシルフィア・アビゲイル。ルイス帝国の伯爵令嬢である。
どこにでもいる普通の伯爵令嬢、と言いたいところだがそもそも我が家が普通ではない。
我がアビゲイル伯爵家はいわゆる貴族の闇を暴くような王家の諜報員という役割を代々担っている。
私自体は人混みが苦手で社交界には最低限しか顔を出していない。それに人と会うより一日中本を読む方が好きである。
そのせいか私は『幻の妖精姫』なんて呼ばれている、らしい。友人に聞いたのだけど。
伯爵家であるにもかかわらず王家の証の瞳を持つ私は社交界の注目の的なのだ。
ちなみに瞳の色は王女であった曾祖母から引き継いだものでいわゆる先祖返りというやつである。ただ瞳の色ひとつで余計な邪推をする人は多少なりともいるわけで。
私の顔は両親にそっくりなのだからよく考えてみれば疑う余地なんてないと思うけれど。
まぁそれも相まって人は苦手だ。
なぜこんな自己紹介を始めたのかと言うと、現在私は熱を出してベッドの上で暇を持て余しているから。体が弱いのか頻繁に熱を出す私は、熱が出るたび本を読まないようベッドへ押し込まれる。
家にある本は読み尽くしたので熱が下がったらサロンにでも行こうかな…
サロンというのは、現陛下の姉であり、今はハリス侯爵家のカルリア様が運営している私設図書館のことだ。彼女は本が好きな人を自ら選び誘ってサロンを運営している。
私は2年ほど前カルリア様に誘われてサロンに足を踏み入れたのだが、それはもう素晴らしいところだった。古い本から異国の本までめずらしく価値の高い本が沢山あって久しぶりにテンション爆上がりがしてしまった。その日はまた熱が出た。
ごろごろとベッドの上でぼーっとしていると
「シル、入るよ?」
そうドアの外からお兄様の声が聞こえてきた。
「調子はどう?」
そう言ってお兄様は私の額に手を当てながらそう聞いてきた。
「元気ですよ。それよりわざわざお兄様が来てくれるなんて…ラシアは?」
ラシアは私のメイドで彼女に毎回熱を計ってもらったり色々してもらってるのだ。
「私がシルの様子を見たかっただけなんだ。彼女には今シルの夕ご飯を用意してもらってるよ」
お兄様はそう言って少し笑う。
「明日は本読んでもいいですか?」
期待に満ちた目でそう聞いてみる。お兄様は苦笑して「いいよ」と言ってくれた。
「ただし、明後日の王家主催の舞踏会には出てもらうからラシアと相談してドレス決めておいてね」
一瞬で地獄に落とされた気分である。
お兄様はにこやかに笑いながら私の部屋を出ていった。入れ違いでラシアがご飯を持ってきてくれたので有難くいただく。
「お嬢様、カーロイス様から舞踏会のことお聞きになりました?」
「ん、聞きましたわ…王家主催ならしかたないですわね。ドレスは濃い緑のものがありましたわよね?まだ着たことないしあれでいいかしら」
私はご飯を食べ終わってからラシアの質問にそう答える。
「そうですね…それでは髪型はいつものようにハーフアップで髪飾りはどうしましょう?」
そう思案顔で言われて私はムッとしながら
「ラシアにお任せするわ。わたくしああいう所苦手なんですもの」
そう言ってベッドから出る。
「お嬢様、きちんと熱を測ってから歩くんですよ」
すかさずそう言われたので大人しく熱を測る。平熱なようだったので、ラリアにお風呂に入れてもらい早々にベッドへ入った。
最初は主人公ちゃんの紹介です。
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