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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

終わらない輪廻

終わらない輪廻

作者: てと

誤字脱字報告ありがとうございます!



今夜は王宮で開かれる舞踏会だ。お兄様にエスコートされ、煌びやかなホールに足を進める。公爵令嬢の私に近づこうとする男性は多い。


すると第二王子のライアン殿下がやってきて私に声を掛けて来る。


「やあ、オリビア嬢。ご機嫌斜めな様だね」


「何故そう思うのですか?」


「長年、幼なじみとして一緒にいれば分かるよ」


薄い金色の長い髪を横に垂らし、紫色の瞳、美の結晶を集めた様な美しい顔。優しく紳士で婚約者もいないとなれば、令嬢達の格好の的だ。


ライアン殿下は私の耳元で囁く。


「オリビア嬢、急かす訳じゃないが私の求婚は考えてくれているかな?」


「何のことでしょう?」


「君も酷い女性だ。忘れてしまわない様にもう一度求婚しようか?」


私は眉を顰めライアン殿下を目を細め睨みつける。ライアン殿下は野心家だ。兄である王太子殿下を引き摺り下ろそうと私に求婚を申し込んでくる。昔はこんな人では無かった。優しく、虫も殺せない程だったのに。楽しかった思い出はライアン殿下を生んだ側室のお母様が亡くなってから変わってしまった。王妃様が嫉妬に狂い、ライアン殿下のお母様を殺したのが原因だ。


優しかったライアン殿下は、復讐に取り憑かれ、権力がある公爵家の令嬢である私に求婚してくるのだ。そこには恋や愛などというものは無い。あるのはただ、打算のみ。



ーーーーーーーーーー




「オリビア、ライアン殿下から求婚の手紙が来た。お前もそろそろ身を固めろ。願ってもない話じゃないか」


「お断りしてください、お父様」


私は優雅に紅茶を飲みながら、お父様の言葉を聞き流す。別に私はこの打算のみの求婚が嫌なわけじゃない。恋や愛などと言うつもりもりもない。だが、この求婚をどうしても受けるわけにはいかないのだ。


「だが、王家からの打診だ。断れるはずも無いだろう」


「……分かりました」


王家からの手紙をお父様から受け取り、ライアン殿下の文字を読む。私はその手紙に紅茶をかけ、読めなくした。




ーーーーーーーーーー




今日は王宮でライアン殿下とのお茶会だ。待ち合わせ時間よりも早く着き、使用人を下がらせ、急いでライアン殿下の私室へ向かう。ノックもせず私はライアン殿下の部屋に入り、ライアン殿下が隠したものを出す様に言う。


「さあ、その毒を私に渡して下さい。今ならまだ引き返せます」


「どうして君が知っている?」


「もう、止めましょう。復讐の後に残るのは虚しさだけです」


「母上を殺した女とその子供を許せと?」


「許さなくて良いです。でも、ライアン殿下。いいえ、ライアン……もう終わりにして下さい」


ライアン殿下は感情の無い瞳で私を見る。毒も渡さない。私はライアン殿下に近づき無理矢理毒を奪い、開いていた窓から小瓶の中の毒を投げ捨てる。


「お願いです、ライアン……もう終わりにしましょう……」




ーーーーーーーーーー



それからというもの、ライアン殿下の行動は過激になり、私はそれを先回りし、事前に止める。


「オリビア、何故君は私の計画を知り尽くし、先回りして邪魔をするんだい?どうやって計画を調べている?」


「貴方に王族殺しで死んで欲しく無いのです」


それを聞いたライアン殿下は鼻で笑い長い髪をかきあげる。


「何が王族だ……オリビア、私は死なない限り、彼奴らを殺すことは諦めない」


「そうですか……」


私はゆっくりとライアン殿下に近づき、両手をライアン殿下の首に回す。ライアン殿下はそれを拒まず、目を瞑る。力を徐々に手に込め、首を絞める。私の涙がポタポタとライアン殿下の顔に降り、注ぎ濡らしてゆく。


そして何の抵抗も見せなかったライアン殿下はもう息をしていない。私はライアン殿下を抱きしめ、涙を流しながら言葉を紡ぐ。


「なんで……なんでいつもこんな……」




ーーーーーーーーーー




一度目はライアン殿下は王族殺しとして処刑された。二度目も同じく王族殺しで処刑された。私は何度も繰り返し、ライアン殿下が死ぬ未来を見てきた。


私はライアン殿下を愛している。だからこそ何故かループする世界を私は繰り返し、ライアン殿下の王族殺しを止めるが、最後は同じ結末。


ならば私はまた愛する人を殺し、何度も何度も繰り返す。ライアン殿下が王族殺しを止め、生きていく未来を掴む為に。




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