表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/21

2.「まあいい」ってそれでいいのか?

 有り得ないような意外な事実を知った理紗……いやリリシェラは、叫んだあとしばらく天を仰ぎ、沈黙した。そして、ようやく口を開いたと思ったら、出てきた言葉は「ま、いっか……」というものだった。

 何が「まあいい」なのか、俺には全く理解できないし、何を考えているのか読めない。元々、理紗は兄の俺から見ても、何を考えているのか分からない所があった。

 今世は他人とは言え、基本の思考回路は同じはず。聞いたところで答えないのは分かっている。俺は彼女に気付かれないように、小さくため息をついた。


 あの時、妹が生き残れなかった事を残念に思う気持ちと、すぐ身近に居るという安心感とに挟まれ、俺の頭の中はごちゃごちゃになっている。

 もちろん、兄妹揃って死んでしまい、残してきた両親に申し訳ないという気持ちも有る訳だが。

「二人して死んで、親を残してきちまったのか」

「そうだね、死ぬ直前にお兄ちゃんの声が聞こえたから、死んだのは私一人だと思ってたんだけどねぇ……」

 少し寂しそうな顔をする。理紗なりに思うところがあるのだろう。

「……うん、まあ、なんというか、これからもよろしく」

 頑張って捻り出した言葉がこれだった。上手い事を言えず我ながら情け無いと思う。

「よろしくね、お兄ちゃん」

 差し出した俺の手をとり、笑顔を向ける理紗……もといリリシェラ。何はともあれ、先が思いやられる状況になったものだ。


 少なくとも俺にとっては、ただの幼馴染よりも、重要度は確実に跳ね上がったのは間違いない。

 一緒に死なせてしまった妹を今度は守らなければ、という思い。やはり兄としての責任が有るんだろうなと考えてしまう。


 だが、これで俺の「美人の幼馴染恋人化計画」は暗礁に乗り上げてしまった。

 いや倫理的には問題ないし、法的には一切問題がないはず。でも、中身が元実妹だと思うと、手は出せないよなぁ。うん、それ以前に、これからどう接したらいいのか全く分からない。妹なのか、ただの幼馴染なのか。

 俺の気持ちを知ってか知らずか、彼女の興味は先程までと同じように足元に咲く花へと移っていた。

 悩んでいる俺はアホなんだろうか。

 鼻歌混じりに歩くリリシェラの姿を見て、お前もちょっとは悩め、と頭を後ろから小突きたくなった。……あとが怖いからやらないけどな。


 そんな衝撃的な出来事があってから、三年が過ぎた。


 リリシェラとの関係は、意外にも良好なままである。違いが有るとすれば、それ以前まであった、彼女の俺に対する警戒の壁が無くなったという点だが、今度は兄妹という線引きを俺がしているような気がする。

 いや、本当にどう接していいのか分からないのだ。未だに向こうがどういう考えを持っているかも分からないし。

 単純に幼馴染として接していいのか、やっぱり兄妹なのか。


 この日も、リリシェラと遊びに出掛け、距離感を測りかねて帰って来たのだが……。帰宅直後、父であるマルドーの言葉に驚かされた。

「ユーキア、お前に妹が出来たぞ。よろしく頼むな」

「え?」

 突然の言葉に驚いた。母親は妊娠している様子も無かったので、今日明日で子供ができるはずもない。ましてや妊娠中なら「妹」などと性別が分かるはずもない。

 混乱する俺の頭を父親は優しくなでると、説明を始めた。


 聞けば、父の妹夫婦が流行り病で亡くなって、親のいなくなった一人娘を今まで祖父母が育ててきたが、うちで引き取る事になった、という事らしい。要するに従兄妹がやってくる、ということだ。

 従兄妹とはいえ、会ったことの無い相手。

 隣の家の「妹」で手一杯の状態なのに、血の繋がらない妹ができるって、俺どうしたらいいんでしょうね?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ