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銀閃のアルケミスト  作者: はぐれメタボ
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噂のアルケミスト

「力よ、円環を巡れ、森羅万象の理、万物は変質し循環する【練金:生成】


 錬金術の光視界を満たすこと数秒、光が治ると生成した物を手に取る。

 私が手にしたのは釣り針だ。

 大物用の大きな釣り針を、見本にと預かっていた釣り針と合わせて太さや返しに問題が無い事を確認する。


 今回、私が受けた仕事は釣り針の生成だ。

 鉄で出来ている釣り針は、町の鍛治師に注文すると返しの細工代や町までの移動費などで意外とお金が掛かる。

 以前、漁師のまとめ役と村長様そんな事を話しているのを聞いたので、見本をくれたら私が作りますよ?っと言ってみたのだ。

 錬金術を使えばそう難しい細工ではないし、何より私には鉄の在庫があったからだ。

 それを買い取ってくれるのなら作り変える手間くらい惜しむことはない。


 なぜ鉄など持っているのかと言うと、実はシュウタくんの薬に使う薬草を採る為に入った時に、西の森に豚頭鬼が生息している事を知ったからに他ならない。

 あの時は急いでいたので捨て置いたけれど、豚頭鬼の肉は魔力を豊富に含み、非常に美味しい。

 この村では魚介類は不自由しないが肉類はあまり出回らない。

 魚も嫌いでは無いが、私は肉も好きなのである。

 故に私は偶に西の森に入って食用に豚頭鬼を狩っているのだ。

 そして、豚頭鬼は棍棒や人間から奪った武具で武装する物だ。

 食用に倒す副産物として、それなりの量の鉄くずが手に入ると言う訳だ。

 豚頭鬼の肉は、量が多く私だけで食べきることなど出来るはずが無いので、村人達に分けているけれど、ろくに手入れもされてない刀や斧など村人達に分けても持て余すに決まっている。

 それならば釣り針や釜や薬缶に作り変えて多少の金銭で売り渡した方が良いと言う訳だ。


 完成した釣り針をまとめて箱に仕舞い、橋に寄せると次に薬草を取り出した。

 そろそろ行商人が来る頃なのでいくつか薬を作り置くつもりだ。




「ミオンが作ってくれた釣り針、シュウイチさん達が喜んでいたよ」


 サチと薬草を採りに行く為に村の入り口に向かっていると、先日作製した釣り針の話題になった。


「そう、良かった。

 私も調薬以外でも役に立てて嬉しいよ」

「ミオンは薬を作ってくれるだけでも凄く有難いと思うけど?」

「う〜ん?

 私は薬師じゃなくて錬金術師だからね。

 偶には本業で仕事もしたいし、そもそも私が旅に出たのは修行の為だからね」

「そっか……。

 それならいつか町に出てみるつもりなの?」

「そうね、いつまでもここで厄介になる訳にも行かないし……いつかお金を貯めて町に錬金術の工房を構えようと思ってるんだ」

「そう……寂しくなるね」

「いやいや、ちょくちょく会いに来るよ?

 私だってサチに会いたいし」

「……そうだよね。

 ミオンならきっと町でもやって行けるよ。

 最近では町でミオンは凄く有名らしいし」

「あぁ………………うん?」

「うん?もしかして知らないの?」


 サチの言葉に私が首を傾げると、サチは不思議そうに聞き返した。


「凄く良く効く薬を作る、凄い薬師だって町で噂になってるって、行商人や町に魚を売りに行った人が言ってたよ?」

「た、確かに行商人からそんな事を聞いた気がする…………ただのお世辞だと思っていたんだけど?」

「多分本当だよ。

 この前町から帰ってきたキュウサクさんが言ってし」

「うわぁ、めんどくさそう。

  町に行くのやめようかな……」

「あはは」


 私達が村の入り口に近づくといつもと違う光景が有った。

 街道を一騎の騎馬武者が村へと駆けて来たのだ。

 村の門番や周囲の人々が集まって様子を伺っている。


 武者は門の前で馬を止めると門番に木札を見せると門をくぐって村に入って来た。

 武者は何事かと集まった村人達を前にして懐から取り出した書状を広げると朗々とした声で語った。


「ワダツミ村の者達よ、聴け!

 拙者はオオツツ領を治める領主オオツツ ダンジュウロウ ヨシナリ様に使えし者、名をトウドウ シゲハルと申す!

 この村にミオンなる異国の薬師が居ると聞いた。

 ヨシナリ様はミオン殿を1度城へ招くよう仰せだ。

 城までは拙者が護衛してお連れする。

 ミオン殿は何処か?」


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