オリビア・ハーマニー
「うぅ〜〜ん」
オレは眩しい朝日を浴びて目を覚ました。
ベッドから上半身を起こすと、軽く背伸びをする。
ここはオレの自室、学校の近くから通えるように家を借りたのだ。
今日もいつもと同じように、パンとミルクを食べる。
安らかな学校前のひと時。
オレはこのひと時を、何気に気に入っている。
ミルクを飲みながら、今の時間を確かめる。
「………ブフッッ！？ゲホッ、ゲホッッ…え？」
時計を見ると完全に遅刻の時間だった。
朝のひと時を有意義に過ごしている場合じゃない。
「マジかよっ、急がないとっ！？」
オレは慌ただしく用意をして家を飛び出した。
「ヤバイヤバイ、遅刻だーっ」
オレは学校までの道のりを急いで走っていた。
朝の商店街を慌ただしく走るオレに少し視線が集まっていた。
腫れ物見るかのような視線な横を過ぎ去っていく。
(すみませんみなさん。優雅な朝のひと時を騒がしく邪魔してしまって…)
オレは心の中で謝りながら、それでも走って学校に向かう。
(……ん？)
オレは、走りながら妙な視線を感じる。
周りと同じ腫れ物を見るかのような視線だが、瞳の中に敵意が潜んでいるのを視線から感じたのだ。
気づかれないよう視線だけそっちに向ける。
見ると路地から女の子がこちらを見ている。
オレと同じ制服、同級生か？
(なんだあの子は？見たことないな、どこかで会ったか？…ってそんなこと考えてる暇じゃないっ！)
足を止めて考えていたオレだが、遅刻していることを思い出し、急いで学校に向かった。
授業が終わると机に突っ伏したオレにクシェルが話しかけてきた。
「今日は遅かったねガゼル。もしかしてお寝坊さん？」
オレの頭を撫でて可愛らしく聞いてくる。
…なんだかこそばゆいな。
「そうなんだ、朝の優雅なひと時の誘惑に負けてな、走ってきたんだ。はぁ〜疲れたっ」
そう言うとオリビアも近づいてきた。
「情けないわね。朝っていうのは眠気と自分との戦いなのよ！自分を強く持ってないと。そんなんじゃアタシに抜かれるわよ」
自分は意思が強い、と何気にアピールしてくる。
「オレより意思が強くても順位では負けることがあるんだな」
からかうと、ムキーっとした顔になる。
「言ってくれるわね。一応言っとくけどアタシだって試験官を倒してるのよ。実戦の腕じゃアタシと大差ないはずだわ！」
へぇ、こいつも試験官を倒してるのか。
よほど腕に自信があるんだろうな。
だから、首席になれなかったことをすごく根に持ってオレを敵視しているのか。
「まぁ試験は筆記試験もあったし、総合点では一応オレの方が上ってことなんじゃないか？」
マイルドに言ったつもりが、さらに怒らせてしまったみたいで、
「それは、アタシがバカだって言いたいわけっ！」
そんなことを言ってきた。
発想が飛躍しすぎだ…。
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」
クシェルが間に入って落ち着くように呼びかける。
いや、二人ともって…オレは終始冷静なんだが。
「頭にきた、ガゼル、アタシと模擬戦しなさいっ！
アタシの方が強いことを証明してあげるわ！」
そんな突拍子もないことを言ってきた。
できれば平和的に解決したいんだけどな。
「話し合おう、っていっても無駄だよな」
「無理」
一瞬で拒否された。
オレはできれば無駄な戦いはしたくないって思ってるんだがな…。
時には戦うことも必要か。
「わかったよ…するよ……模擬戦」
オレはオリビアと戦うことにした。
