第一話 プロローグー追放者毒魔術師!
「お前もういらねえから!」
長年の間パーティーに尽くしてきた天才魔術師のオレ。しかし、急に戦力外通告を突きつけられた。一体オレにどんな落ち度があったというのだ!?
「だってアンタさあ、この一週間何度もあたしが風呂入ってるところノゾいたじゃん!」
高慢チキな女武闘家が、吐き捨てるように罵ってくる。
「ふ、ふざけんなよ!誰がお前みたいなツルペタ…じゃなくて。そもそも主犯は勇者と戦士だっつうの!オレはむしろ止めた側だっつうの。」
「嘘つくなよ!戦士はともかく…勇者がそんなことするわけないじゃん!」
「はぇっ!ど、どういう意味だ?」
ウスノロの戦士が、馬鹿みたいに口をポカンと開ける。
「ああ、その通りだ。毒魔術師、見損なったぜ。俺はお前のことを、ずっと仲間だと思っていたのに。」
「う、嘘つけ!白々しい。お前、オレの宝物のスカルマリンを勝手に飲んだりしたくせに!」
今までずっと耐えてきた俺だが、この時ばかりはどうしても許せなかった。
「こんな理不尽受け入れられるか!勇者!お前は子どもの頃からそうだったよな。他人は全部自分の道具で引き立て役、利用するだけ利用して、いらなくなったら切り捨てる。オレの友達や村の女が、どれだけ泣きを見たことか…!」
「オイオイオイ…自分のことは棚に上げて、昔のことを蒸し返すのか。本当に女々しいクズだな。皆も、そう思わないか?」
「…オ、オデもそう思うべ。勇者の言うことは全部正しいだ。」
「私は言うまでもないね。陰キャの変態は土下座すべきだよ全く。」
「ほらな、全員こう言ってるぞ。決定。お前は解雇だ!」
「ち、畜生め…!」
どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。みんな勇者に騙されてやがる。こいつはちょっとイケメンで頭も良くて、腕が立つのをいいことに、好青年の振りをしているだけの最低野郎だっていうのに!オレは必死で反論する。
「い、いいのか…。オレは最強クラスの毒魔法使いだぞ。オレが抜けたら戦力的に大きなマイナスになるぜ…。」
「フッ、お前が本当に役に立っていたかどうかはともかく、代わりの戦力はすでに用意してある。賢者さん、入ってきてくれ!」
一人の女が、しずしずとテントの中に入ってきた。そしてオレは驚愕し、腰を抜かしそうになった。賢者さん、彼女はとんでもない美少女だった。人形のように整った目鼻立ち、天使のように可愛らしい微笑み、そして何より抜群のスタイル。たわわに実った双丘は、ローブの上からでも分かるくらい豊満で色っぽかった。
「う、嘘でしょ…」
「分かったろ、お前みたいな無能はもう必要ないんだ。賢者さんはLv67、十二分な戦力だ!」
実際はオレの方が5Lv高いのだが、今はそんなことどうでもいい。一体どうしてこの美少女賢者が、どうしてあんな奴のパーティーに入ってしまうのだ?そしてオレは、彼女と一緒に旅を出来ないのだ?ああ、世の中不公平だ…
「さて、最後に言うことはあるか?」
「…あ、あるぜ。いいか、賢者さん!気をつけるんだ!勇者の奴は…」
「リアヴィケ<強制離脱魔法Lv4>!」
最後まで言い切る前に、結局離脱させられたオレ。最後の瞬間、オレの排除に成功した勇者の、下卑た笑みが脳裏に焼きついた。
「ゆ、許さねえ…お前ら絶対に許さねえ!!いずれ反撃してやるからな!お、お前らをー逆転してやるからな!!」
今は負け犬の遠吠えでもいい。でも、最後に勝つのはこのオレだ!そう心に固く誓った。