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姉と妹が大好きです。

 

 突然だが、シスターコンプレックスという言葉をご存知だろうか?兄弟姉妹が、姉や妹の女姉妹に対して強い愛着や執着を持つことを指している。

 俺ことアルドラド・ペンデュランには姉と妹がいる。姉の名はミリアリア、妹がララサリサ。姉と俺は双子として生まれ、妹は三つ歳が離れている。姉と俺は父親譲りの金髪で、妹は母親と同じ青い髪色をしている。姉と妹は贔屓目無しで美少女と言えるほどで、俺も自分で言うのもだが父親譲りのイケメンだ。父クルガは長身イケメンと典型的で母クリアは腰まである青い髪が美しく、顔も見惚れる程に美しい。そんな二人を親に持ち、貴族の子としてこの世に生まれてきた。両親に愛されて育てられてきた俺達だが、貴族はステータスとして魔法の才覚が絶対とされ、才能が人生を左右すると言われる世界だ。

 貴族は五歳の誕生日に、魔法の才能を調べるための簡単な儀式をするのがしきたりとされている。この頃から既に俺は姉が大好きだった、愛してると言っても過言ではない。それはもちろんまだ小さい妹に対してもだ。とは言っても異性として意識はしておらず、家族愛の範疇でだ。そんな俺は、姉や妹より魔法の才能が優れる訳にはいかないと思い、姉と妹以下の存在になろうと決めたのだ。



 物語はその五歳の誕生日から始まり、同時に俺の道化としての人生が始まりを迎えた。



「おぉミリア、魔力保有量を示す色が赤くなってるじゃないか!流石は俺とクリアの娘だ!」


 ボーリングの玉程の大きさの水晶が、赤く光っている。赤は上から二番目でその上は虹色となっているが、五歳で虹色がでたのは歴史上まだ三人しかおらず、しかも最後の一人から既に三百年以上の時が過ぎている。五歳では上から二番目の赤が実質一番良いと言われているので、姉ミリアはこの時点で神童と呼ばれる存在となった。魔力保有量は成長すればもちろん増える場合もあるため、ミリアは将来虹色の保有者になる可能性もある。ちなみに今の時点で虹色の魔力保有者は、世界で五人しかいない。姉が虹色になれば六人目となり、ミリアリア・ペンデュランの名は未来永劫語られる存在となる。余談だが父と母は今の年齢で赤色となっている。二人共歳は二十代前半で、この歳で赤色となるとそこそこ珍しいようだ。


「ミリア、良くやりましたね。お父さんもお母さんも嬉しいわ。」


 興奮する父と姉の頭を撫でながら静かに喜ぶ母。母の腕の中で、良く分かっていないが周りが声を出して喜んでいるから、自分もと言わんばかりにキャッキャと笑いながら姉の方を見ている。


「パパ、ママ、ララ、ありがとう!ほらアル、次はあなたの番よ!アルも赤ならお揃いよ、頑張って!」


「うん、僕頑張るよ。」


 姉の言い方は聞く人が聞けば嫌みに聞こえるんだろうが、シスコンフィルターを通した俺の耳には、純粋な応援として聞こえてきた。父の前にあるテーブルの上の水晶に右手を乗せ、これまでに教わってきた魔力の放出の仕方を思いだし、水晶に向かって魔力を流し込む。魔力が水晶に吸い込まれ、水晶が青く発光しだした。つまり俺の保有量は青、下から二番目となった。

 この結果に先程まで喜んでいた姉は、一気にテンションが落ち込んでいた。対する両親はどこか納得するように頷いていた。


「う~ん、やはりか。ミリアが赤だったからもしやとは思っていたが、アルはこうなったか。仕方ないさアル、これも双子故だ、落ち込むことはないぞ。父さんだってお前と同じ歳の頃は黄色だったからな、これから伸びていくさ。」


「そうよアル、何も今が全てじゃないわ。ミリアはミリア、アルはアルよ。あなた達への愛情は今までと変わらないわ、だから安心しなさい。」


 父と母が落ち込んでいると思っている俺に、優しく言葉をかけてくれる。父が言う双子だから仕方ないとは、双子だと魔力保有量は大抵どちらかが優れていてどちらかが劣っているのが普通らしい。基本的には先に生まれた方が魔力保有量が多いが、稀に逆のパターンもあるとのこと。今はそうでもないが、昔はそれこそ双子事態が呪われているとか縁起が悪いと言われていて、そうとう風当たりがキツかったようだ。


「アル、ごめんね。私ばっかり喜んでて。でもパパやママの言うとおり、これからがあるからね。一緒に頑張りましょ。」


 ミリアもフォローをしてくれるが、別に落ち込んではいない。でもこうしてフォローを入れてくれるミリアがまた愛しくなってしまい、ついつい困らせたくなってしまう。


「ごめんねお姉ちゃん、お揃いにできなくて。」


 ミリアは二人一緒の赤を望んでいたが、俺のせいでお揃いになることができなかったとあえてそこを掘り下げて、心底申し訳なさそうにミリアに謝る。するとミリアは自分の言ったことを思いだし、逆にミリアがばつを悪そうにする。このミリアの何とも言えない表情、いつもニコニコしているミリアも良いけど、こうして子供ながら無意識に俺に負い目を感じている表情もたまらない。


「さぁ二人共、もう終わったことだしご飯にしようか。ミリアもアルも気にしない気にしない、ママの美味しいご飯食べて明日からの魔法の勉強に備えよう。今はとりあえず忘れよう、なっ。」


 父はミリアと俺の頭をポンポンと軽く叩きながら、ご飯を食べるようにうながしてくる。確かに気にしていない以上、目の前のご馳走を美味しく食べない訳にはいかない。俺が父の言葉に頷きながら肉料理から食べていくと、自然と笑顔になるほどの料理でついつい止まらなくなり食べ進めていく。俺が笑顔で夢中になっているのを見て、父と母とミリアも笑顔になり皆で母の料理を食べ始める。妹は途中で疲れたのか、静かだと思ったらいつの間にか眠っていた。

 楽しい食事の時間も終わり、ミリアと俺は改めて父と母の方に向き直り、明日からの魔法の勉強について話を聞くところだ。


「じゃあ明日から二人には魔法の勉強をしてもらう。ミリアはクリアに、アルは俺が教えるから二人もそのつもりで。ミリアは魔法中心になるだろうが、アルはそれ以外にも剣術や槍術とかの武器の稽古もやってくからな。貴族でも男ならそれくらい身に付けとかないと、いざってときに困るからな。分かったか?」


「はい、お父さん。」


「頑張ってね、アル。アルなら直ぐにパパより強くなるわ。」


「ふふっ、そうね。アルならきっとパパより強くなるわ、頑張ってね。」


 母とミリアの応援に父が困ったように笑っている。魔法の才能はミリア以下だが、他の能力面でもミリアやララを越えるのはできれば遠慮したい。それでは意味がない、あくまで俺は出来損ないだ。じゃないとミリアやララを罪悪感で縛れなくなってしまう、二人を愛してるが故二人に植え付ける罪の意識。好きだから見てほしい、愛しているから離れないでほしい。でも強制はさせたくない、あくまで二人が自らの意思で俺を想ってくれるようにしたい。だから俺は出来損ないになる、二人に愛してもらうために。


「うん、僕頑張るよ。」


 明日からが楽しみだ。

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