7話 冒険者ギルド
南門へ行くと、冒険者ギルドはすぐに見つかった。遠くから見ても大きかったが、近くに来るとより一層大きく感じる。感じるというか、実際に大きいのだが。
建物の扉の前まで来ると謎の文字を発見した。
『ようこそ、冒険者ギルドへ❤』
誰だよこれ書いたの……まさか、冒険者ギルドという名のクラブだったりして……
唾を飲んで扉を開けると、身軽そうな装備の盗賊風の奴や全身鎧の大柄な奴、魔導師など、冒険者と思われる人々がいた。
みな、俺が入ってきた瞬間こちらを見てきたが、すぐに興味をなくし、パーティーと思わしき者達と喋り始めた。
良かった、クラブじゃなくて。そう思いつつ、受付嬢に近づいた。
青髪の彼女は、ギルド職員共通の制服を着ていた。ただ、サイズが合っていないのか、形のよいふくよかな胸が強調されていた。
「冒険者登録はここで出来るか?」
俺は下げていた目線を上げながら言った。別に胸を見ていたわけではないぞ……違うからな!!
「はい、こちらで出来ますよ。登録いたしますか?」
「ああ、頼む」
俺は彼女―リーネに指示され、右にずれると、真っ白なカードを渡された。大きさは手のひらサイズ。触った感じ、簡単には壊れなさそうだ。
俺なら粉々にできそうだがやめておく。
「このカードを持って魔力を込めると、ステータスが表示されます」
なるほど、そういう魔道具なのか。しかし、困ったな。名前と種族が分かるといろいろ面倒だぞ。
この世界に魔族が居るかは知らんが、人間ではないとばれるのは不味い。勇者になれんかもしれないからな。
名前の方はファミリーネームがあるからだ。
俺が険しい顔をしていると、リーネがハッとした顔で教えてくれた。
「あっ名前と種族は手書きですので、ご安心ください」
ほう、それはありがたい。しかし何故手書きなのか……
「名前を隠したい方……まぁ貴族の方ですね。それと人間とは別種族とのハーフの方なども冒険者になりますからね。こういうシステムになってるんですよ」
リーネが付け加えてくれた。
ふむ、他種族とのハーフは嫌われていたりするのかな?半分でも人間が入っているのだから役に立ってあげたいな。
ていうか、貴族も冒険者になるんだな。物好きな貴族がいるもんだ。
まぁいいや、これで安心して魔力を込められる。
俺がカードに魔力を込めると、カードは青色に変化し、表にステータス、裏に討伐数が書かれていた。
討伐数は0だった。俺は少しほっとした。前に討伐した奴まで書かれていたら、勇者×120とかなっちゃうとこだったからな。
いや、勇者は討伐ではなく撃退だから大丈夫か。
「これでいいか?」
俺は青くなったカードをリーネに渡す。
「はい、ありがとうございます。色はランクを表しています。Fランクは青、Eランクは紫、Dランクは緑、Bランクは赤、Aランクはシルバー、Sランクはゴールドとなっております」
なるほど、色分けされているのか。分かりやすくていいな。それにしてもFランクからか、全員そうなんだろうけど、Sランクまで遠いな。
「あの、ステータスを確認させていただきますがよろしいでしょうか?戦闘スタイルのアドバイスをと思っていますが」
「ああ、頼む……ってだめだ!やめろ!」
俺が気付いた時には既に、リーネの目が見開かれた後だった。
あちゃー……俺のステータスが異常だってこと忘れてた。
「えっ?えっ?なにこれ?えっ?故障?」
あーだめだ、完全にパニックになってる。
「すまない、この事は黙っていてくれ」
俺は若干、覇気を込めて言った。
「ひっ……はっはい!わかりました!!」
うんうん、分かってくれたようだ。若干脅迫じみたやり方だが、これで分かってくれなかったら記憶を消さなきゃいけなかった。
記憶の操作苦手なんだよな、俺。下手したら廃人にしてしまう。
「分かってくれたならいい」
そういうと、リーネは、ほっとした顔をした。
「えぇと、カードをお返ししますね。Sランク目指して頑張ってください」
絶対なれると思うけど、とリーネが呟いていたのは気にしない。
「ああ。それと、リーネ」
「な、なんで名前を」
「制服に書いてあるだろ、それと制服、サイズ合ってないぞ」
「え?あ!はい。ありがとうございます!」
親切心で言ったつもりなんだが、周りの冒険者の目が、『余計なこと言いやがって!』的な感じだったのでリーネに冒険者について色々聞いた後、足早に宿に戻ることにした。