6話 過ぎた力
城を出た俺はとりあえず、宿を探すことにした。だが、この国は中々大きな国のようなので(俺の国ほどじゃ無いが)宿を探すのも一苦労だ。
ここは人に聞くのが一番だろう。そう思い、近くにあった武器屋のおやじに聞いてみた。
中をのぞくと武器だけかと思ったが、防具も飾られており、よく見ると一つ一つが丁寧に作られていて、職人魂を感じさせる逸品ばかりだった。
「すまない、近くに良い宿はないか?」
「ん、兄ちゃん、見かけねぇ顔だな。宿を探してんなら、この先をまっすぐ進んだ所に緑屋ってとこがある。地味だが結構いい場所だぜ」
武器屋のおやじは笑顔で言った。
筋骨隆々スキンヘッドなのだがなかなか人が良さそうだ。暇があったらまた来るとしよう。そう思いつつ俺はおやじに礼を言い、その宿に向かった。
武器屋から2分程進んだ場所に、緑屋はあった。
名前の通り全体的に植物が多く、落ち着いた雰囲気が印象的だ。
中に入ると、16歳くらいの緑髪の女の子が近づいてきた。なんというか……緑感を徹底してい る。
内装も緑だし、宿で働いてる人の服まで緑だ。これは逆に落ち着けない気がする。と、俺が若干引いていると、女の子が笑顔全開で言った。
「はははっ!!あなた、ここに来るの初めてね。初めてここに来る人は、皆そんな顔をするもの」
だろうよ。武器屋のおやじも最初は引いたのだろうか。
「それで、どうする?泊ってく?」
「ああ、とりあえず今日はここに泊っていく」
「そう、じゃあ一泊で500ガバルよ。食事は一日に2回、それ以上は追加料金だからね。一階の食堂に来れば食べれるから。と言ってもいつでも食べれる訳じゃないけどね。それと...はい!、鍵。あと、分からないことがあったらいつでも聞いて。」
ほう、食事付きか。ていうか、一泊500ガバルなら王様に貰った100万ガバルってかなりの大金なんじゃ……これで当分は遊んで暮らせるな……ってだめだ。人の役に立たなければ!
俺は心の中の悪魔―自分自身が悪魔のようなものなのに―と戦いながら、元気な女の子に渡された鍵の部屋に向かった。
部屋の扉も、やはり緑に染められていた。
これはもしかしたら中も緑なのだろうか。少し覚悟を決めて入ってみたが、以外にも緑は少なかった。
カーペットは緑だが、それ以外はとても落ち着いた雰囲気の色合いで、部屋の隅に置かれたベットはなかなかのふかふかだった。
いい意味で、予想を裏切ってくれたが、俺の覚悟は一体……
俺は落ち込みつつ、装備を脱いでベットへダイブした。
俺の部屋のベット程ではないが、不思議と落ち着いた。
今なら武器屋のおやじの言葉も、うなずける。
っと、こんなことをしてる場合じゃないな。俺は起き上がってベットへ腰かけた。そして自分のステータスを確認する。
この世界に来た時に発見したスキルを確認するためだ。それと、グルフラを倒した時に聞こえた、謎のレベルアップ音についても。
そして俺は、ステータスを見て驚愕した。
名称:レギオン・インセネディ
年齢:350
職業:魔王
Lv:1000
HP:120000/120000
MP:110000/110000
攻撃力:12500
防御力:12000
魔力:12500
魔防:11000
俊敏:12000
幸運:1
new.スキル/超越者:ステータスの限界が無くなる。
バットステータス無効
なん……だと。ステータスが……上がっている!?
俺はレベル999に達して居るから、もうステータスは上がらないと思っていたのだが……この世界に来た影響で新しいスキルを手に入れたおかげで、さらに強くなるとは……
てか、1レベル上がっただけでこの上がり様……やべぇ、さらに敵が居なくなる……
俺は、手ごたえがある敵がもう居ないと思い(もともといなかったのだが)絶望し、ベットへ倒れ込んでしまった。
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チュン チュンチュン
俺は鳥たちの声を聞き、清々しい朝を迎えた。どうやら俺はあの後、そのまま寝てしまったらしい。
新しい世界に来たことで緊張していたのだろうか……いや、ないない。俺は魔王だし、きっと何かに絶望していたのだろう。
それより飯食べたかったな。どうしようか、料金払ったら食べれるかな?
そう思い、俺は服装を整え、目元を擦りながら階段を下った。
「おはよ!いい朝だね!」
1階には、緑の髪をキラキラと揺らしながら、笑顔で挨拶をする女の子が居た。
「ああ、おはよう」
俺も笑顔で返してやった。
「ご飯出来てるけど、どうする?」
「あれ?今日はまだお金を払ってないけど?」
「いいよ、サービスサービス!お客さん、昨日1回もご飯食べずに寝ちゃったでしょ?だからいいの!」
俺は彼女に押されて食堂へ行った。
笑顔のごり押しで食堂まで来たが、何だか申し訳ない気持ちになるな……サービスとは言われたが、このまま食べて、はいさようなら、というのはダメな気がする。
俺は全体的に緑緑している朝ごはんを食べながら考えた。
「えーと、君、冒険者にはどこでなれる?」
俺は朝ごはんを食べ終えた後に、緑髪の女の子に聞いた。
ちなみにごはんは旨かった。緑色の物体は魚と野菜だった。この頃の俺はもう、緑色に対して突っ込みを入れなくなっていた。
「あーっと名前言って無かったわね、私はミナ。冒険者ギルドなら南門近くにあると思うわ」
「そうか、ありがとう。俺の名はレギオンだ。これからもよろしく」
俺はそう言いながら、ミナに一カ月分の宿泊代を渡した。
「ふふふ、こちらこそよろしくね!」
よし、とりあえず冒険者ギルドに行くとするか。
最後の方にミナの口調が変わってしまっていたので、修正しました。