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異世界で魔王様は勇者をするそうです。  作者: ベルクト
冒険者
16/18

16話 決闘

「さてと、決闘と言ったが……殺すのはダメだよな?」


 俺は後ろの方でポカーンとなっているリーネに聞く。はっきり言って俺はアイツにイラッとしている。まぁだからといって殺すのはダメだと思って聞いたのだが……。


「はい、ダメですよ!流石に。半殺し、いや、9割殺し程度でお願いします」


 俺の問いにリーネは興奮気味に凶悪な答えを返した。半殺しは分かるが9割殺しってなんだよ。殆んど虫の息じゃねぇか。


「ちょっと、何の話をしてるんだい?」


 扉の方から声が聞こえたので見てみると、そこにはアリアが苦笑いをしながら立っていた。


「いやー実はカクカクシカジカで」


 アリアの質問にリーネが答えた。カクカクシカジカって……そんなんで通じるわけがないだろう。たまにマコトが冗談で言ってくるが意味不明だったしな。


「ふむ、なるほどな」


 通じるのかよ。何なんだ。カクカクシカジカって言う情報伝達系の魔法かなんかなのか?


「分かった。決闘を行うのは別にかまわん。だが、こちらからルールを一つ追加させてくれないか?」

「ああ、どんなものかによるが」

「ありがとう。追加したいルールは『負けた者はランクの剥奪及び、冒険者ギルドへの侵入禁止』だ」


 ん?一体どんなルールが追加されるのかと思ったがそんなものか。それなら俺には関係の無いことだな。負けるはずないし。


「何故こんなルールを追加したいかというと、こちらとしてもジークを放っておくことが出来なくなってきたからだ」

「と、言うと?」


 俺がアリアにそう返すと、アリアは何かを思い出すかのようにして語り始めた。


「……昔は彼も仲間思いのいい奴だったんだよ。今のようなプライドの高い女たらしではなく、な。

 彼はAランクになるまでは真面目に依頼をこなし、達成率も高く性格もよい優秀な人材として我々ギルドは高く評価していたんだ。だが、ある日彼は変わってしまった。

 それはAランクになる為の、試験を兼ねた依頼を受けた時だった。チェーンリザードと呼ばれるAランクモンスターを倒すという依頼だった。あの時、私も試験官としてそれを見ていたよ。彼は正に神速と呼べる速さで相手を翻弄し、見事に討伐して見せた。そして我々は彼こそAランクに相応しいと彼にAランクの称号を与えたよ。

 だが、その後から突然、彼はおかしくなった。真面目だった面影はなくなり、時々依頼は受けるものの、殆んどの時間を女性と遊びまわる日々となっていた。

 そこまではまだいいさ。依頼はたまにだけど受けるし遊びまわるのも彼の勝手だけどね。だけど、最近になって妙な噂や報告が上がるようになってきた。

 彼が一緒に依頼を受けた人を殺しているとか、盗賊団と協力している、とか。

 もちろん私は否定したよ。最近は感じが悪いが、そんなことをするような人では無いと。

 でも、その思いは儚く散ったよ。

 私は自分自身の目で確かめるために彼を尾行したんだ。そしたらね、彼が盗賊団の者と会っているのを見てしまったんだ。私の立場と言う物もあるし、流石にそれを見逃す訳にもいかなくてね……。

 はぁ全く、嫌な話だよ。私は少なくとも彼を信用していたんだがね……」

「……」


 つまり、どういうことだってばよ。話が長くて途中から聞き流してしまったには理解が出来ん。


「っとすまない。長々と喋ってしまったね。つまりは彼に勝って、止めて欲しいってことだよ。キミが彼に負けるとは思わないけど、頑張ってね」

「ああ」


 俺は何処か暗い顔をしたているアリアを尻目に訓練場へと向かった。



=========================================


「よう、逃げずに来たようだな」

「む……」


 闘技場に着くと、盗賊風の軽量装備をしたジークが腰辺りに付けた短剣を舐めるように眺めていた。


「もう一度言っておくぞ、今の内に降参しておとなしくどっかに消え――「だが断る」……」


 俺はジークの言葉を遮るように言った。ジークはプルプルと震え、でこに青筋を浮かべて拳を握りしめている。


「チッ。ならさっさとやろうぜ。ルール上、殺しはしないが一生動けない体にしてやんよ」

「ああ、そうだ。ルールの追加で『負けた者はランクの剥奪及び、冒険者ギルドへの侵入禁止』だそうだ。ギルマスの命令だから絶対な」

「はんっ、いいだろう。どうせお前が負けるんだ。俺には関係ないね」


 はっはっは。そっくりそのままお返しするぜ。


「両者、構え。初め!!」


 リーネの合図で試合が開始される。ちなみにもしも俺が力加減を間違えて、ジークを殺してしまった場合は俺が蘇生させることになっている。そんなことできる訳ないと言われ、納得させるのに若干時間がかかった。


「ふんっ!不正をしてAランクになった野郎が!俺に勝てる道理は無いんだよ!!」


 ジークは合図と同時にこちらへと接近してくる。単純な俊敏の値だけで言ったらアリアを越えているだろう。だが、そんな速度では俺に近づくことなどできない。


「な……!?」


 俺は軽く地面を蹴り、ジークの周りを回るように移動した。


「なんだ!?幻覚魔法か!?」


 あっれぇ。おかしいな。ちょっと早歩き程度で周りを歩いてるのに残像が出来てるぞ……。今の俺は自分の前に自分が居ると言う謎の状態になっている。

 これ、走ったらどうなるんだろう……。

 

「!?どこに消えた!?」


 俺はちょっとした好奇心で走ってみたのだが……。なんという事でしょう。人が視認できる速度を越えてしまいました。たぶん本当なら摩擦熱とかで周りとか大変どころの騒ぎじゃなくなってるんだろうけど、魔法で抑えているので大丈夫だ。サレナが遠くから『……ご都合主義乙』とか言ったような気がするが気にしない。


「ふん、怖気づいたか?さっさと姿を現したらどうだ」


 現したらどうだって……さっきからあなたの周りをぐるぐる回っているんですが……。

 

「やっと姿を現したか、今度は逃さんぞ!!」


 俺は段々とやってくる吐き気に危機感を感じ、動きを止めた。うっぷ。目を回してしまった……。


「もらった!!ってなにぃ!?」


 ジークが俺に向かってジャンプし短剣で上から刺しに来たので、刃を人差し指と中指で挟み、動いが止まったところに優しい、それはもう優しいデコピンを入れた。するとジークは後方へ砲弾のように吹っ飛んで行き、壁にぶつかってしまった。


「お、おーい。死んでないかー?死んでたら返事をしろー」

「いや、死んでたら返事出来ませんよ!」


 それもそうか。しかし、返事がないな。マジで死んだんじゃ――


「ぐ、ぐぐぐ。許さん。許さんぞ!!」

「おおー生きてた。案外タフだな」


 俺が蘇生の準備に取りかかろうとしたところで、ジークは瓦礫から這い出てきた。それも゛禍々しいオーラ゛を放ちながら。






ここまで読んでくださてありがとうございます!!

誤字、脱字等がございましたら報告してもらえると幸いです。


並行して書いております、[絶対防御の転生者~神の裁き?全部俺が防いでやんよ~]も読んでくださると嬉しいです。

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