12話 模擬戦
「ん……ってこの前の兄ちゃんか。どうだい?あそこはいいところだったろう?」
おやじは俺の事を覚えていたようだ。
「ああ、一部を除けばいいところだったな」
「俺も初めて行った時はそう思ったぜ」
おやじは、がははは!と笑いながら言った。やはりおやじも思ったのか。
「それで、今日はどうしたんだ?」
「こいつの装備を揃えようと思ってな」
俺がサレナを前に出すと、おやじは若干観察するような眼でサレナを見た。
「そっちのお譲ちゃんか。見たところ魔術師だが、杖が欲しいのか?」
「いや、杖はいらない。というか、よく魔術師だと分かったな」
「そりゃ、そんな恰好してりゃあな」
「じゃあ、俺と最初に会った時も俺のことを魔術師と思ったのか?」
「ああ、そうだが……違うのか?」
なるほどな。俺を見た王様が魔術師かと聞いてきたのはローブのせいか。
魔術師と誤解されるのは嫌なので、やはりローブはサレナにあげよう。
「俺は魔術師ではなく、魔法剣士だ」
「は?魔法剣士?」
どうやらおやじも知らないようだったので、軽く説明する。
「魔法と剣をどちらも使う!?」
「そうだが……そんなに驚くことか?」
「そりゃ驚くぞ。剣と魔法が使えるなんて15年前に居た勇者か魔王ぐらいだからな」
へぇ。15年前にも勇者が居たのか。
そう言えば、ここに来る途中に勇者の銅像があちこちにあったな。ということは、15年前に居た勇者はかなりの功績を残した人物なのかもしれない。
「まぁ、それは置いといて」
「置いとくのか……まぁいい。杖が要らないとなると、何が欲しいんだ?」
「短剣だ」
何故、杖ではないかというと、サレナは無詠唱で魔法を唱えることができるからだ。
杖は通常、詠唱時間を短くさせるための物なので、必要ない。
短剣は万が一、接近戦をしなければいけなくなった時の為の保険だ。
まぁ、まずサレナに近寄ることはできないと思うがな。
「短剣か、ここにあるのを売ってもいいが、素材があるなら安く作ってやるぞ?」
素材か。そう言えば、ヴァードラ(ヴァ―ギグルドラゴン)の死体があったな。
「そうか、ならヴァーギグルドラゴンの死体があるんだが」
「は?ヴァーギグルドラゴン?……もしかしてあのドラゴンを倒したのって、兄ちゃんか?」
「そうだが……それより、こいつはまだ解体していないんだが、どこで出来る?」
「それよりって……俺はとんでもない奴を客にしたみてぇだな。解体なら冒険者ギルドの方に頼めばいけると思うぞ」
「そうか。なら解体してからまた来る、ああ、それと短剣のほかに俺のマントも作ってくれるか?」
「分かった。俺の名前はハルバートだ。兄ちゃんとお譲ちゃんは?」
「レギオンだ。こっちはサレナだ」
「レギオンとサレナか、解体出来たらすぐ来いよ!!よーし職人として腕が鳴るぜ!!」
ハルバートはドラゴンを素材にすることに興奮しているようだ。
赤髪の女性が品質はおやじの気分次第と言っていたが、これならいいものが出来そうだ。
俺はハルバートによろしく伝え、冒険者ギルドへと向かった。
俺達が冒険者ギルドに入った瞬間、ザワザワしていた冒険者達は一斉に静まり、こちらを見てきた。
「おっおい、あいつ、昨日ドラゴンを殴り殺したって言う、竜殺し(ドラゴンキラ―)の……」
「あっあいつが!?」
「違うだろ、アイツ確かこの間登録したばっかりのFランクぜ?」
「は?Fランク?」
何人かの冒険者が小声で話しているのが聞こえる。もう噂が流れてるのか。
まぁ、別に知られても問題は無いと思うのでいいか。
「よう、リーネ」
俺は少しずつざわつき始めたギルド内を進み、受付からこちらを見ていたリーネに声をかけた。
よく見ると服のサイズが合っていた。それでも、美しいふくよかな胸は目立っていた。
「こ、こんにちはレギオンさん。そのー突然すみませんがギルドカードの討伐数を見せてもらえませんか?」
「いいが……なんでだ?」
「いえ、少し確かめたいことがありまして」
「ふーん」
リーネの言われた通りギルドカードの討伐数を表示させ、渡した。サレナは討伐数を見て、やっぱり、という顔をし、ギルドカードを俺に返した。
「やはり、ドラゴンを倒したのはレギオンさんでしたか。ギルドマスターがドラゴンを倒した者が見つかり次第、連れてきてこい。との事なのでついてきてください」
「分かった。こいつも連れて行っていいか?後で冒険者登録するつもりなのだが……」
俺はサレナを前に出し聞く。
サレナはいつも通り無表情なのかと思ったが、リーネ――主に胸――を見て自分のまな板を少し触った後、少々殺意の籠った目になっていた。
「……いいですけど……なんだかその子も化け物のような気がします……」
化け物か。あながち間違ってはいないな。
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「おや?キミは……」
リーネに言われた通り、俺達は付いて行きたのだが……この人、さっき道を聞いた人じゃん。
「知り合いですか?」
「知り合いという程でもないが、ここに帰ってくる前に道を尋ねて来たんだよ」
リーネの質問にギルドマスターの、赤髪の女性が答えた。
「まぁそう言う訳だ。俺の名はレギオン。Fランク冒険者だ」
俺が自己紹介すると、赤髪の女性が眉を顰めた。
「Fランクが一人でドラゴンを倒したのか?」
「ああ。一人で倒した。Fランクなのは、この間登録したばかりだからだ」
俺が説明すると、赤髪の女性は「ほう……丁度いい」と呟いていた。誰にも聞こえないような呟きではあったが、俺の耳はその呟きを捉えていた。
「……そうか、なら、君が本当にドラゴンを倒せる程の者なのか見極めるためにも、私と模擬戦をしよう」
赤髪の女性の要求に、俺は迷わず首を縦に振った。
どれほどの強さなのか確かめたかったので丁度いい。
「私の名はアリア。Sランク冒険者兼ギルドマスターをしている」
「ふーん。よろしく」
「ルールは簡単。どちらかが降参するか、気絶するかしたら終了です。もちろん、殺害は禁止です」
俺達はアリアについていくと、大きなグラウンドのような場所へついた。
審判はリーネがしてくれるようだ。
「レギオン君、キミはドラゴンを殴り殺したそうだが、剣は扱うのかい?」
「もちろん使えるぞ。むしろ剣がメインだな」
そうは言ったが、この世界に来てから一度も剣を使ってないな。
「へぇ。でも見たところ剣は持っていないようだが?無いなら貸そうか?」
「いや、大丈夫だ。【武具創造クリエイティブウエポン】」
俺が手を胸の前で合掌し、離すと、左手の手の平に魔法陣が浮かび上がる。そしてその魔法陣から、剣の柄が出てくる。俺はそれを掴みとり、引き抜く。
現れたのは、禍々しくも邪悪なオーラを放つ魔剣。などではなく、神々しいオーラを纏う聖剣だった。
「なっ!そ、それは、伝説の聖剣……!?」
アリアの目が見開かれる。
「よく分かったな。こいつは聖剣エクスカリヴァーだ」
これはマコトが俺と戦う時に持っていた聖剣を完全再現したものだ。
スキル【武具創造クリエイティブウエポン】で作った物なので、性能は完全に同等である。
何故、これを出したかというと、魔剣を使うよりは聖剣の方がイメージいいかなー。と思ったからだ。魔剣振り回している奴が勇者とかなれんだろうし。
しかし、仮にも聖剣。俺との相性は最悪なので、聖剣本来の性能の3割も出せない。
まぁ、俺のステータスで使うとめちゃくちゃなことになるが。
「……何故キミが聖剣を持っているんだ?」
「秘密だ。それより、早く始めようぜ」
俺は聖剣を正面に構える。【武具創造クリエイティブウエポン】で作った物は20分もすれば消えてしまうので、グダグダしている暇はない。
また作れはするが。
「……分かった。今は聞くまい」
そう言ってアリアは日本刀を構えた。
一時の静寂が場を支配する。
だが、地面をダン、と蹴る音によって静寂の時は崩れる。
先に動いたのは俺だ。
俺はアリアに素早く近づき、上段から斬りかかる。
だが、アリアは体をゆらりとずらし、回避する。俺は返し刀で腹部へと斬りかかる。それをアリアさんは刀で受け流す。
うん。やっぱり強いな。力任せで剣を振り回すだけじゃ流石に無理か。俺の場合、力任せでも常人には捉えられない程の速度で斬りかかってるはずなんだけどな。
「どうした?そんなものか?」
アリアさんが煽ってくる。ちょっとイラッとしたので真面目にやることにする。
「そちらこそ、避けるだけですか?」
「言うね。じゃあ行かせてもらおうかな」
アリアはそう言うと、刀を鞘へと戻し、何かのスキルを使ったのだろう。姿勢を一切変えずに一瞬で接近し、居合切りを放ってきた。剣先は軽く音速を超え、光速に迫る勢いで近づいてくる。
俺はバックステップで回避し、距離を取った。
「凄い反応速度だね。私の初撃を避けたのはキミが初めてだ」
「たまたまだ、たまたま」
「なにが、たまたま、だっ!」
アリアがまた、スキルを使い俺の目の前まで一瞬で接近してくる。ある程度の速度なら捉えられる筈なのだが、全く分からない。転移魔法などを使っているようには見えないが……
「奥義《飛連光劫斬》」
流れるような美しい斬撃。全方向から放たれる音速を超えた光の斬撃は、常人ならば一瞬の内に肉片へと姿を変えるだろう。
もっとも、常人ならばだけどな。
俺は収まることを知らない、無数の斬撃を全て聖剣で弾き返し、左手の人差し指と中指で刀身を掴む。そして硬直しているアリアに聖剣を振り、首筋で止めた。
「そ、そこまで!勝者、レギオンさんです」
俺は聖剣を首筋から離し、具現化を解く。
「ははは、キミ、ホントに強いね。ドラゴンを倒したのもうなずける。一体何者だい?」
「将来勇者になる男だよ」
「そうか、キミならきっとなれると思うよ」
リーネと後ろで観戦していたサレナも首を縦に振っていた。
「そういえば、さっきの奥儀、普通の人なら死んでたぞ」
そう、さっきアリアが放った技は確実に俺でなかった場合死んでいた。
俺だったからよかったものの、そうでなかったらあっという間にミンチの出来上がりだ。
「ああ、それなら大丈夫だ。もしもの時は私のスキルを使うつもりだったからな」
「何のスキルだ?」
「私のスキルは【時間支配】。自分自身のスピードを上げたり、時を止めたり、1秒前まで時を戻すことができたりする」
おいおい、なんてチートなスキルだよ。
「もっとも、時を止めてる間は攻撃することはできないし、時を戻せば2日は寝込む程の頭痛がするけどね」
それでもこのスキルは強力だ。それに、この人はかなりの努力をしてきたのだろう。先ほど【サーチ】して分かったが、レベルは150だった。素のステータスがかなり高いのでこのスキルと併用すれば、そう敵はいないだろう。
「さて、今日キミと会ったのはただ単に模擬戦がしたかった訳ではないんだ」
「と、言うと?」
「キミをAランクに昇格させよう。ということさ」
ここまで読んでくださってありがとうございました。
今後は土日に投稿していこうと思います。




