10話 解放
ピロロン
お、レベルが上がったみたいだな。ステータスを見てみると、レベルが1002になっていた。
ステータスもしっかり上がっているが、これ以上強くなってどうするのか……
よく見ると称号が増えていた。竜殺し(ドラゴンキラ―)か、よく考えてみるとドラゴンを殺した事は無いな。
ドラゴンは中立的な立場だったから殺す必要が無かったんだよな。
しかし……弱かったな。魔法が効かなかった事には驚いたが、撲殺出来る程度の装甲だとは思わなかった。
いや、俺が異常なのか?まぁいいや。そんなことより、コレどうしよう。頭を殴って脳を破壊したので状態は良好だ。
だが、解体しようにもそんな知識を俺は持ち合わせていない。それに、解体できたとしても置き場所に困る。
どうしたものか。
あっ、サレナが収納魔法を使えるんだった。
「サレナ、これ収納できるか?」
無表情のまま口を開けているサレナに聞いた。
「……出来ると思う」
サレナはそう言って、白目を剥いたヴァ―ドラに近づき手を当てる。すると、ヴァードラは一瞬の内に手の平に吸い込まれた。
「……出来た」
流石、魔王の娘。収納魔法でしまえる量はMPに依存するのため、常人にはそんなに多くはしまえないのである。
サレナはMPが常人よりはるかに多いので、2500tぐらいの容量はあるだろう。常人は多くて1t程度だな。
感心していると人が集まってきたので、宿まで【瞬間移動】した。
宿は特に何も被害を受けていなかったので、安心した。
ヴァードラが放った火球を弾き返したりしていたら、宿に飛んでいく可能性があったので握りつぶしておいて正解だった。
中に入るとミナが心配そうな顔で近づいてきた。
「レギオンさん、中央の方にドラゴンが出たって聞いたけど大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫だ。あのドラゴンならさっき倒してきたから」
「はははっ面白いこと言うのね。SS級モンスターのドラゴンを倒した、だなんて」
「まぁいい。そんなことより、こいつも同じ部屋で泊っていいか?」
俺はサレナを出して言う。相変わらずサレナは無表情だな、と思ったがよく見ると口を引きつっていた。きっと一面緑色な所に思う事があったのだろう。
「え?あ、うん、いいよ。200ガバル追加で払ってくれるんなら」
ミナは一緒の部屋で?といった顔をしていたが、気にせずに200ガバル払い部屋へ戻った。
ベットにサレナを座らせ、俺は椅子に座る。
「サレナ、お前本当に何も知らないのか」
「……知らない」
サレナの目が泳いだ。嘘下手すぎだろ。
「隠さなくてもいい。お前が魔王の娘だという事は分かってる」
「――っ!ドラゴンを殴り殺したり、私が収納魔法を使えることを知っていたり……あなた、何者?」
「勇者だといったら?」
「……殺して」
「残念だがそれは出来ないな」
「……何故?」
「俺は勇者ではなく、魔王だからだ」
俺は魔王のオーラを少し解放しつつ言った。
「っ!お父様より遥かに邪悪なオーラ……本当に何者?」
「だから言ってるだろ?魔王だってな。もっとも異世界の、だが」
「……私は何をすればいいの?」
「そうだな、とりあえずお前が何故奴隷になっていたのか教えてくれ」
そう聞くとサレナは俯いて言った。
「……最初、私は魔王城で暮らしていた。でも、突然お父様に眠らされて気がついたら薄暗い部屋で鎖に繋がれ、奴隷になっていた」
ふむ、魔王は何故、娘を奴隷にしたんだ?しかも、奴隷にした後にはドラゴンで娘を殺そうとした。
ドラゴンが魔法の効かないヴァードラ(ヴァーギグルドラゴン)だったのはサレナの魔法対策だろう。
しかし、何故一度奴隷にした後に殺そうとしたんだ?殺そうと思えば眠っている間に殺せただろう。
自分の娘を直接殺すのに躊躇ったのだろうか。うーん、分からんな。
「サレナ、魔王城はどこか分かるか?」
「……分からない。私はずっと魔王城に居たから」
直接聞こうと思ったが、無理か。まぁ、そう焦ることもないな。
会いに行ってそのままバトル、何てことにもなりかねないし。
今後サレナを殺そうとしてくる奴はいるだろうが、その時は俺がぶちのめせばいいだけだ。
「サレナ、お前には今日から俺の手伝いをしてもらう」
「……世界征服?」
しねぇよ!めんどくさい。
「違う。人助けだ」
「……魔王が?」
「ああ、元の世界では魔王だったが、この世界では勇者をしようと思っている」
「……へんなの」
「俺も変だとは思うが、親友との約束があるからな」
「……親友?だれ?」
「勇者」
「……もういい、分かった。手伝う。どうせ奴隷だし、嫌でもやることになる」
サレナは何処か諦めた顔をしていた。
「ん?奴隷じゃなくすることぐらい簡単だぞ?」
「……え?」
「してもいいが、手伝いはしてもらうぞ?」
「……分かった。手伝う。物扱いは嫌」
この世界の奴隷は完全に物扱いで人権なぞ、一切無いらしいからな。確かにそれは嫌だろう。
「物扱いするつもりは無いんだがな……ちょっとこっちに来い」
俺はサレナを近寄らせ、背中を向けさせた。そして、背中に手を当て呪文を唱えた。
「【因果改竄】」
するとサレナは光りに包まれた。しばらくすると光りは収まった。
なんか契約の儀式と似ているな。
「……なんだか体が軽くなった気がする」
「そうか、それならよかった」
サレナは安心したのかベットにうつ伏せになり、スヤスヤと寝てしまった。
俺は1階に下り、食堂で緑緑した夕食を食べ2階に戻ると、みすぼらしい恰好のまま寝ているサレナに毛布をかけ、床で寝る、なんてことはせずサレナをぐいぐいと端へ追いやりベットで寝た。




