表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘密兵器猫壱号  作者: 津嶋朋靖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/35

「なんで、こんなのと手を組むんです?」

ここから先はずっと瑠璃華の視点になります。

ややこしくなってすみませんでした。

「作戦は上手くいったわ。シーガーディアンのボートはすべて転覆して、乗員は救助したのち逮捕。さらに、ポール・ニクソン本人がシャチを狙撃しようとした映像をネットに流した。映像を見た人達はシーガーディアンを偽善者と罵り、支援者の大半は離れていったわ」

「じゃあ、なんでリアルが処分されなきゃならないんです?」

「私が甘かったのね。正直、リアルやトロンの正体が露見しても、問題はないと思っていたわ。でも、シーガーディアンの奴らがインターネットにリアルやトロン、サムの目撃情報を書き込んだの。それを見た世界中の人達から非難の声が殺到したのよ。『日本政府は猫や猿や鷹に非人道的な改造手術を施して兵器として使用している』と」

「ええ!? 兵器?」

「それを見た柳川総理はすっかり怖じ気付いて『動物部隊など存在しない。シーガーディアンのデマだ』と世界中に発表してしまったのよ。発表した以上、事実でなきゃならないという事で動物部隊の処分を命じたの」

「じゃあ、総理は自分の嘘を隠すためにリアル達を殺す命令を出したの?」

「そうよ」

「ひどい」

「でもね、糸魚川もその事を予想していたのよ。だから、予め動物達を逃がす手はずをしておいてくれたの。もっとも、総理のお庭番とも言うべき内調が、表立ってそんな事をするわけにはいかないわ。だから『捕まえようとしたけど、逃げられました』と総理に報告しておいたのね」

 なるほど。内調内部の人間がやったって聞いていたけど、まさか室長自らやっていたなんて。これじゃあ、ばれるわけないよね。

「でも、それじゃあ、なんで博士は」

 あたしはハミルトンを指差した。

「こんなのと手を組むんです?」 

「こ……こんなのって……」

 こんなの呼ばわりされて、ハミルトンはちょっと傷ついたみたい。

 まあ、この人は拉致には元々反対していたんだし、あんまし邪険にするのは可哀そうかな。  

「リアルを守るためよ。総理の嘘が露見してしまえば、もうリアルを殺す必要がなくなるわ。その結果、政権が倒れたとしても私の知ったことではない。でも、私の口からそれを話せば、科研の人達や糸魚川にも迷惑がかかる。だからシーガーディアンに情報をリークして彼らの手で発表させようと考えたのよ」

「じゃあ、なんでこの人達はリアルを追い回すんです?」

「公表するにあたって、知性化動物の実物を見せろと彼らは要求したのよ。大使館の周囲が見張られているので、トロンやサムを連れ出すのは危険。だから、行方不明になっているリアルを彼らに捜してもらったの。でも、こんな乱暴な事するなら頼まなかったわ」

 ビー!! ビー!! ビー!!

 突然、大きな音が鳴り響いた。

 博士がハミルトンの方を向く。

「この音はなに?」

「出航の合図です」

「まだ、この子を解放していないのよ」

「そう言われても」

「ブリッジへ案内して。この子を解放するように掛けあってくるわ」

 二人が部屋から出ていく。

 チャリン!! 

 博士が出ていく時、何かが床に落ちる音が聞こえた。何だろう? 床の上に何か小さなものが……鍵!? 博士、あたしを逃がすために落としていってくれたの?

 とにかく、せっかくのチャンス。

 あたしは鉄格子の隙間から手を伸ばした。

 ううん、とどかない。

 手がダメなら足を……あかん!!

 太ももが引っ掛かった。

 さて、どうしよう? 

 あれ? 鍵に何かがセロテープで張り付けてある。あれって、もしかして……

 あたしはケージからグッキーを掴みだした。

「グッキーお願い。あれを取って来て」

 リードを握りしめて、グッキーを外に放す。

 最初、グッキーはキョトンとした顔で何度もあたしの方へ戻ろうとした。

 しばらくして、鍵に気がついて走り出す。

 正確には鍵に貼り付いてるひまわりの種に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ