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アルブレットの災難

時刻は深夜1時頃か。

真っ暗な道をアルブレットは進んでいた。

急いでミスリルを本部に届けて帰れば、朝の出勤時間まで5時間は寝れるだろう。

何とか先を見通せる程度の儚い明かりを頼りに、道を進んだ。


「!?」


突然明かりに犬が飛び込んで来た。

アルブレットはハンドルを切り、どうにか犬を引かずに済んだが、道の脇に乗り出してしまった。


「くそ……なんなの……」


ブレーキを強く踏んだため、衝撃でハンドルに顔面を打ち付けた。

しかし、口の中を軽く切った程度で、大したケガではなかった。


ふと、何気なくバックミラーに目をやると、何者かが近づいてくる。

近くを通った人が助けに来てくれたのか?

そう思ったが、次に男の手に持っていたものを見て、凍り付いた。

大きな鎌を持った男が、車に近づいてきていた。










俺は行きつけの飲み場で、カウンターの隅に座り、ジュースを飲んでいた。

ぐっと飲み干し、渇きを潤す。

すると、マスターが話しかけてきた。


「お客さん、ちょっと面白いものがあるんですが、どうでしょう?」


そう言って、ボトルを見せてくる。


「おい!そいつは……」


一瞬、酒か?と思ったが、マスターは即座に否定してきた。


「酒じゃないんですね。一杯飲んでみてください」


マスターは、グラスに紫の液体を注ぎ、俺の前に出してきた。

俺は光にかざしてその液体を見つめる。

見た目は赤ワインみたいだが、と一杯口にする。

妙な味がした。

アルコールが入っている、が、ほのかにそれを感じさせる程度で、酔いを誘うほどの量ではない。

俺が口を開く前にマスターが言った。


「面白いでしょう?これは、酒のようで酒ではないんです。アルコールは入っていますが、度数はほんの5パーセントに満たない、これは法律に触れない新しい飲み物なんですよ。もちろん何杯も飲めば酔っぱらうから、一人の客にはせいぜい2杯までしか出さないんです」


「……そういうことか」


どうやら、こいつが出回っている酒の正体だ。

そして捜査線上に上がらなかった理由が分かった。

店員らは、これを酒として取り扱っていないのだ。

法律では、「アルコールを含み、酔いをもたらす酒の販売の禁止」とある。

こいつはアルコールは含むが、酔いをもたらすか、と言えばかなりあいまいだ。

そして、実際酔いが回らないのであれば、実証されたことにはならない。


俺は思わずニヤッとした。

やられたなアル、と言ってもう一杯飲んだ。

やはりこんなものであっても、酒の味は恋しかった。


しばらく飲んで、妙に静かだな、と思い始めた。

俺ははっとした。

ポールがいねえ!


金を払って店から出た。

剣の状態のままで、アルの車に乗せたままだ。

この店から本部まで、大体2時間の道のりか。

くそ、めんどくせえことをした。

俺は大通り脇の道を駆け出した。


しばらく走っていく。

すると、誰かが倒れていた。


「おいおい、今度はなんだ?」


俺はどんどん近づいて行く。

そして、その足が徐々に早まる。


「なっ……」


俺は目を疑った。

地面を血に染め、倒れていたのはアルブレットだった。


「アル!」


俺は急いでアルに駆け寄って上体を起こし、声をかけた。


「大丈夫か!おい、何があった!」


しかし、アルの体はぐたりとしたまま動こうとしなかった。

すでに、この世を去っていた……


「ふざけんなよ……」


誰がこんなことをしやがったんだ。

俺は思考を巡らし、すぐに一つのことに思い当たった。

アルを殺したやつは、恐らくミスリルを狙っていたに違いない。

その証拠に車がない。

アルの命を狙っただけなら、車など必要がないからだ。

あれだけの重さのミスリルを運ぶのに、担いではない。

効率よく車ごと拝借したのだ。

そして、その実行犯こそ、吸血鬼に違いない。

俺はそう思い、周囲に意識を集中させた。






この世界には、魔力を持つ者と扱う者がいる。

魔力を持つ者は、ポールのような特殊なドラゴンなどである。

そして、扱う者は、ディックのように魔力を持つ者に働きかけて、超常的な現象を起こす。

ディック自身には魔力はないが、魔力を感じとることはできる。

ポールは自分でもコントロールできるが、意識してない場合、常に魔力を放っている。

今回、車に取り残されたポールを探し出すため、ディックは魔力をかぎ分けて居場所を突き止めようとした。






「そこか」


俺はここから数キロ先の場所にポールの魔力を感じ取った。

同時にミスリルの放つ強力な魔力も感じ取った。


「相手はこいつを感じ取って、アルに近づいたってわけか」


俺は道路を横切って最短距離で、その場所を目指した。


そこには大きな屋敷があった。

屋敷の脇にはアルの車が止めてある。

俺はその車に近づいて、後部座席を開けた。

そして、


「戻れ」


そういうと、ポールは剣からドラゴンの姿に戻った。


「ぷはっ」


「おい、何があったか説明しろ」


「やべえよディック!アルがやられちまった!」


ポールは事情を話し始めた。

ミラー越しでしか見えなかったが、相手は鎌でアルを殺したらしい。


「野郎っ」


俺はいきり立って屋敷に飛び込もうとした。



アルブレット→おかま→大鎌

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