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ドラゴンと○○

「おい!キマサッ、どうやってその剣を持ち込んだ!」


衛兵の一人がそう叫んだ。


「らあっ!」


俺は聞く耳持たず、全力で剣を振り下ろした。

ブオン、と空を切る。


「やべっ……」


力みすぎて相手に剣を読まれたか。

更にカウンターの鋭い一太刀を相手は放ってきた。

一瞬斬られたかと錯覚したが、間一髪でかわせた。

続けざまにもう一人の衛兵が突きを放ってくる。

それもギリギリ剣でいなし、一歩飛びのいて背後に駆け出した。


「おい、待てっ!」


「くそ、来るんじゃねえよ」


相手の方が剣はできる。

俺は、ここはまともにやりあわない方がいいと判断し、衛兵に向かって剣をぶん投げた。

衛兵は足を止め、それに対処すべく剣を構えた。


「戻れ!」


俺がそう叫ぶと、剣がもとの姿に戻った。

衛兵の目の前で突如剣がドラゴンとなった。


「バカヤロッ!ぶざけんなっ!」


ポールは慌てふためき相手の目の前でばたつく。

衛兵の方もびっくりして、ポールに向かって剣を振り回す。


「うおっ、な、なんだ」


ブンブン、と衛兵が剣を振り回している間に、俺は扉を突っ切って客室の一室に紛れ込んだ。


「キャアアーッ」


そこにいた女性の客が悲鳴を上げる。


「静かにしろよ、見つかるじゃねえか」


俺は少し考えた。

この状態からどうすればいいか。

この飛行船を落として、ミスリルを回収するか?

しかし、乗客もいるし金持ちが多い。


(さすがにまずいか……)


しかし、ここで手に入れなければ面倒なことになる。

空港に降りたらミスリルを手に入れたとしても脱出するのは困難だろう。

この上空という好機を逃す手はない。

俺はあることを閃いて、厨房に向かった。


客室の更に先に厨房はあった。

外が騒がしくなっていたが、もうじきかたが着くはずだ。

調理場のコックに見つからないよう、背をかがみながら移動する。


「あれだ」


お目当てのものを目視し、そこに向かう。

すると、上の空調ダクトからポールが現れた。


「おいディック、やってくれたなっ」


「おう、生きてたか」


「あのなっ、ああいう使い方は間違ってるって何度言ったらわかんだっ」


「あーうるせえうるせえ」


そんなことを言ってる内に、俺はお目当てのものに近づいて、つかみ取った。


「おいっ、今何取ったんだよっ」


俺が手に取ったもの。

それは胡椒である。






一方、衛兵はディックを探して客室内を探していた。

女性客の証言で、その男は厨房のある奥の方に走っていったということが分かった。

厨房に向かう途中、衛兵の2人はこんな会話をしていた。


「おい、さっきのってトカゲじゃないよな……」


「ああ、あれは俺が思うに、トカゲなんて可愛いもんじゃないと思うぜ」


「だよな、あれって飛行船の中に持ち込んだら絶対まずいもんだよな……」


「ああ、絶対マズい。それより、剣に変身するドラゴンなんて、お前知ってたか?」


「いや、知らん」





俺はポールを伴って厨房を出た。


「おいっ、手に何持ってんだよっ」


ポールが耳元でわめきたてているが、無視だ。

すると衛兵がやって来た。


「貴様ッ」


相手は剣を抜いて、ジリジリと迫ってきた。


「おっと、こいつを見な!」


俺はポールをわしづかみにし、もう片方の手には胡椒を構えた。


ん?と衛兵がその組み合わせを確認する。

ドラゴンと胡椒。


「や、やめろっ!それだけはよせっ!」


衛兵は慌てふためき、ポールも慌てふためく。


「オエエエエエッ」


ジタバタして俺の手から逃れようとするが、絶対逃がさん。


「この胡椒をこいつに振りかけたら、どうなるか分かるよな?」


胡椒でむせたポールの口から火が出て、引火して一気に火の海と化すだろう。

それを予測した衛兵は剣を投げ捨てて早まるな!と叫ぶ。


「ミスリルのある倉庫に案内しな、乗客の命と引き換えだ」


衛兵を前に立たせて廊下を進む。

チラっとこちらを振り向いたが、えらい剣幕だ。

そんな目で見るなって。

俺は悪魔じゃないぜ。


道は一本しかないから、乗客の目にも止まる。

トカゲ?と声が聞こえた。


「俺はトカゲじゃねえっ」


ポールがわめく。


そして、倉庫にたどり着き、中に入る。

山積みになっている荷物の中から、ダンボールを見つけた。

その箱には、黒い文字で「みすりる」と書かれていた。


「こいつか」


持ち上げようとするが、結構重たい。

20キロくらいありそうだ。

俺はそれを窓に向かって投げつけた。

ガシャアアンという音が響く。

そして、その割れた窓からポールを掴んで飛び降りた。






瞬く間にこのことはミスリルの所有者の耳に入った。

盗賊から守るため、空路を選んだにも関わらずこのようなことになるとは。

ちなみにミスリルの元となる特殊な金属は、鉱山から採掘され、所有者はその鉱山の持ち主である。

この飛行船の行き先はオークション会場で、ミスリルはそこで取引される予定だった。

このミスリル塊を目当てに、有力な宝石商や権力者が集まる。

所有者の男は、すぐ捜索を依頼した。




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