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煙幕と神力

 火竜のブレス攻撃が火山の表面に当たると同時に、爆発音と衝撃波、そして巨大な煙幕が上がる。


 今までの戦闘からして、火竜は――少なくとも俺の事を舐めている状態の火竜は、自分から漏れ出ている魔力のせいか、索敵能力が低い。幸い、余りにも強力なブレスのおかげで、煙がこちら側にも上ってきている。煙幕が晴れるまでの時間でやれる事はある。


 俺はまず、なんだかんだで異世界に来てから、一番付き合いの長い相棒に声をかける。


「すまん、助かった。が、あんまり無茶はするなジョズ」

「さすがにいつまで助けてもらってばかりな訳にはいかないからな。このくらいはするさ。火の精よ『煙幕(スモーク)』!」


 いつの間にか俺の傍まで来ていたジョズは、魔法で煙を出して辺りをカモフラージュしながら答える。おそらく火竜の攻撃を逸らしたのはノワールの幻影魔法だろう。


 こいつらが来てくれたおかげで助かった。これを機になんとしてでもあいつを――


「……ん?」

「どうした?」


 俺が首を傾げると、ジョズは何事かと様子を窺ってくる。


「俺、どうしてあいつを倒そうとしてんだ?」


 俺の疑問に今度はジョズが首を傾げる。


「どうしてって……あれを倒さないとこっちがやられるんだろ?」


 ジョズが当たり前のことを言う。確かに当たり前なんだが……違う、そうじゃない。


「いや、何で俺はあいつから逃げる(・・・)んじゃなくて、あいつを倒す(・・)選択をしたんだ? 冷静に考えれば、いやどう考えても、あれと戦おうなんて自殺志願者じゃない限り考えない」


 俺の呟きに、ジョズは何言ってるんだこいつと言う目を向ける。


「は? 放っておくと街に火竜が出てくるからじゃないのか?」

「確かにそれもあるだろうが、俺が全力で逃げれば街に被害を出さずに逃げ切るくらいはできる……かは分からないが、少なくとも戦うよりはずっと労力と危険は少なくなる筈……あれ? 確かにそうだ。そもそも仲間が殺されたとかならともかく、あれを倒そうなんて俺が思う事は絶対にありえない。援軍を逃がすためって言うならともかく、最初から倒す以外の選択肢を見ていないなんてのはありえな――っ!?」


 自分で言っている間に、今まで忘れていた大事な事を思いだすかのように頭が覚醒していく。そしていきなり、頭を殴られるような衝撃を感じた。


“【←%&$!】の精神干渉がレジストされました”

“スキルの最適化が可能です【精神耐性】を【←%&$!】と統合し、【神力(仮)】に最適化しますか?”


 ……なんだ? 今のは。


 アナウンスでは「スキルの最適化」と言ってた事から、【←%&$!】と言うのはスキルなんだろう。そこまではいい。問題はそんなスキルを、俺は習得はおろかみた事も聞いた事もない事だ。


 ……しかも、何故今このタイミングで? それになぜ【精神耐性】と統合する? これは一体――


「どうした兄貴? 大丈夫か?」


 俺が深く考えようとすると、急に意識が朦朧としてきた。が、ギリギリのタイミングでジョズが話しかけてきたお蔭でなんとか踏みとどまった。とにかく無理やり意識を元に戻す。


「いや、何でもない。少し想定外の事態が起きただけだ」

「それってこの状態だと結構問題になるんじゃ……」


 ジョズが何か言っているが、今はゆっくり考えている場合じゃない。これが何を意味していようと、此処で考えに没頭していたら、見つかってドラゴンサクッとやられるだけだ。


「とにかく一度隠れるぞ、作戦を一から練り直す。丁度ノワールも来てくれた」


 火竜から漏れだす魔力のせいで【索敵】の精度がかなり低くなってはいるが、自分の従魔の位置くらいは分かる。ノワールはなんと俺が吹き飛ばした『フェンリル』の二人を背中に乗せて来てくれた。どうやらブレスの余波で吹き飛ばされ、そのまま気を失ってしまったようだ。


 ぎりぎりの所で駆けつけ、魔法で火竜の目を欺いて、さらにその間に人間二人を救出するのか。流石は俺の従魔、仕事が早い。


「隠れるのは……やっぱ地面か。『落穴(ピットホール)』、塞げ、『土塞(クレイカバー)』」


 すぐさま穴を掘り、さらに土をかぶせて隠れる。息苦しいだろうが我慢してくれ。


「……どうしたものか」


 とにかく地下にもぐって一息ついたが、実際はそこまで余裕が無い。はるか遠くにある火山の山頂から俺の力の波動……多分、【魔神の加護】を察知して飛んできたんだ。地下に潜ったぐらいじゃ見つかってしまう。一度【高速思考】を使い、状況を整理しよう。


 俺の取れる手は、大きく分けて二つ。


 一つはそのまま戦う事。


 さっきまではずっと戦おうと思っていたものの、冷静に考えるとまず不可能だ。未知数である【神力(仮)】にもよるが、賭けとしては分が悪い。


 もう一つは逃げる事。


 手っ取り早いのは、仲間達を全員『アイテムボックス』の中に放り込んで、その足で逃げる事だ。圧倒的にこちらの方がリスクが低いのだが、何故だかそんな事をは思い浮かばずに……いや、俺の頭の中の何かが、その考えを外に追いやっていたんだろう。


 とにかく、戦わずに逃げるのは大前提だ。俺の座右の銘でもある「三十六計逃げるに如かず」の精神を忘れてしまうとは、我ながら情けない。


 俺があれこれと思いめぐらせていると、再び同じ声が脳内に響く。


“スキルの最適化が可能です【精神耐性】を【←%&$!】と統合し、【神力(仮)】に最適化しますか?”


 そう言えばこれに返事をしていなかったな。【神力(仮)】についての説明があればいいのだが……


[神力(仮)] 発動すると、自身の中に眠っている潜在的な神の力を一時的に引き出す事ができる。神の力の内容は本人の性質に左右される。(力の内容についてはスキル取得後に閲覧可能です)


 と、思っていたら【鑑定眼】さんが仕事をしてくれた。説明を見る限りでは発動しない限りは効果を発揮しないようだし、取得する事には問題ないだろう。火竜から逃げるのにも、役立つかもしれないしな。


 俺はYESと念じる。続けて脳内アナウンスが響く。


“承認されました。【精神耐性】と【←%&$!】を統合します。……成功しました。【神力(仮) lv1】を獲得しました。”


[神力(仮)] 邪神の力を引き出す。発動中、指定した相手のエクストラスキル以外のスキルをすべて無効にする。また、運以外のステータスを一つ選んで発動させると、選択したステータスの値が二十倍になる。制限時間は自身のレベル×一秒。発動中は攻撃的な性格になりやすい。効果が切れると十二時間の間、運以外の全ステータスが発動前の十分の一になる。


 要するに相手のスキルを封じるのと、ブーストを掛けるためのスキルだな。デメリットがあるとはいえ、危なくなったら敏捷の値を引き上げると言う手もある。いや、そこまではいいんだ。問題は冒頭部分である。【鑑定眼】さんよ、あなた今なんと? パードゥン?


[神力(仮)] 邪神の力(・・・・)を引き出す。発動中、指定した相手の――


 何で!? 何でよりによって邪神なの!? ただでさえ【魔神の加護】なんていう、魔王が持っていたとされる加護を持ってんだよ!? それ以上にやばそうなのが来ちゃったんだけど!


 落ち着け、今は誰の力だなんて言ってる場合じゃない。発動中は戦闘狂になりやすくなると言うのが不安材料だが、死んでしまったら元も子もない。だからきっと大丈夫だ。……よし、落ち着いた。


【鑑定眼】によってもたらされた情報を吟味していると、ジョズに話しかけられた。


「それで兄貴、どうするんだ? 戦うのか? それとも逃げるのか? 火竜は流石に俺達……と言うよりは、兄貴の魔力なのかな? それが残っている事に気付いたみたいだが」


 もうばれたのか。いや、あの化け物相手によくもここまで隠れられたと言っていいだろう。


「そうだな……とにかく逃げるのは確実だな。俺も今回ばかりは死ぬ気で逃げないと行けないから、悪いがこっちに入って貰うぞ。『アイテムボ――」

「そこにいたか、小僧よ!」


 俺が魔法を唱えようとすると同時、火竜の怒鳴り声が聞こえ、天井がぶち壊された。


 暫く更新ペースは週1~2くらいに落ちそうです。来年には何とかペースを立て直したい。

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