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ガチムチおっさんとお風呂

サブタイトルだけ見るとあれなことに……

この小説にBLは入れません。今回も、これからも。

 朝起きた俺はまず最初に寝坊していないかを確認した。まだ日の出にはなっていないようなので少なくとも寝坊はしていないようだ。


「よっと。さすがに座ったままの体勢で寝ると体が痛いな…」


 服に付いた土を払ってうーんと伸びをすると自分の掘った落とし穴に落ちることがないように気をつけて外に出た。


「さすがにまだ早すぎるとは思うがどうせやることもないし城に行っちまうか。もしかしたらシャワー借りれるかもしれないし」


 早めに行けばすぐに朝飯も食えるしな、昨日は昼飯も晩飯も食べてないしさすがに腹が減っている。


 そして裏口? から城に入った俺は今絶賛迷子中である。


「あれ? ここどこだ? って言うかおれ食堂の場所なんて知らないんだけど」

 と、城の中をうろうろしていると中庭だろうか? 外から音が聞こえてきた。


「お、この城の関係者かな? 食堂の場所でも聞こう」


 俺が外に出ると筋肉がすごいおっさんが剣の素振りをしていた。どうやらここは訓練場のようだ。


「ふんっ! ふんっ!」

「あのーすいませーん」


 剣がビュンビュン音を立てているので怖くて近寄りたくない。俺の背後に立つな! とかいって斬りかかったりして来ないよな?


「ふんっ! ふんっ……おや、お前は……その髪の色からして勇者か?」

「あ、はい。セイイチ・キサラギと申します」


 この世界では黒髪は珍しいらしい。まあ異世界にはよくある話だけどな。

 素振りしている間はよく見えなかったが思ったよりフレンドリーな顔をしていた。でも腕から見えるものすごい筋肉が大量の汗でテカっていてあんまり肩を組まれたりしたくないな。


 などと物凄く失礼なことを考えているとおっさんが自己紹介をした。


「俺はこの国の騎士団長をやっているダンだ。今日からお前ら勇者の稽古をつけるからよろしくな」


 どうやらこのおっさん――ダンが訓練の指導をしてくれるらしい。

「どうだ? せっかく早起きしたんだ。俺が指導してやるからお前も訓練するか?」


 おっさんから突然の誘いを受けた。

「え、いや、俺はいいですよ。ダンさんと同じペースで素振りとかできませんし邪魔になるでしょう?」


 ここは丁重にお断りさせていただく。こっちは腹が減ってるんだ。あんまり動きたくない。


「何、遠慮するんじゃない。どうせそろそろ終わりにしようと思っていたところだ。30分くらいのびたところで変わらん」


 今の時間は5時ちょっと前。もう終わらせる予定というのは本当のようだ。

「それならなおさら悪いですよ、俺なんかのためにわざわざ時間を取ってもらったりなんか……」


 本当は腹が減ってやる気が出ないだけだがそれを言うと負ける(何に?)気がするので言わないでおく。


「だから遠慮するんじゃない! どうせ訓練の時間で勇者全員教えてやるんだ。その時に一人分教える手間が省けると考えれば安いものだ」

ガッハッハと笑うダン。悪い人には見えない。


 その後結局勢いに負けて稽古をつけてもらうことになった。


「もっと顎を引いて足は前に。そう、そうだ。それともっと腕を内側に寄せるような感じで……うむ、なかなか筋がいいな。向こうで剣の心得でもあったか?」

「いえ、俺はどちらかというとインドア……部屋の中で本を読んでたりする方が好きでしたから武術についてはあまり知りませんね」


 家の中がラノベでぎっしりだしな。剣の心得なんて昔スター〇ースト〇トリームの完全再現とか言ってレプリカの剣を振り回してたこともあったがそれ以外は全くやってない


 ……体育の剣道で剣道部員を負かしたこともあったがハンデ付きだったしな。俺の実力がどのくらいかよくわからん。


「ほう、もしかしたらお前には剣の才能があるかもな、勇者として恥ずかしくないレベルにまで精進しろよ!」

 ガッハッハと笑うダン。やっぱこの人はいい人だな。心の底から笑いかけてくれている。


 その後数十分ほど剣の素振りをして稽古は終わった。


「やはりお前にはなかなか才能がある。将来が楽しみだな!」

「いや将来は魔王討伐したら帰りますから」


 多分魔王討伐しても帰れないんだけどな。


「ハッハッハ、違いない。ところでどうだ? まだ飯まで時間があるが風呂でも入るか?」


 何・・・だと・・・?


「えっ……今なんて?」

「ん? 風呂でも入るか? と言ったんだが?」


 どうやら聞き間違いではなかったようだ。もしかしたら神からもらった運三倍が効いているのかもしれないな。


「是非入らせてください! ぜひ!」

「お、おう……別に風呂なら昨日も入ったはずだろうに……まあいいか。このまま浴場まで行くぞ」

「是非お供します!」

「どうしたんだお前……まあいいけどよ」


 人が変わったかのような俺に苦笑するダン。っていうか他の勇者たちは昨日風呂入ったのかよ、うらやましい。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁきもちぃぃぃぃぃぃぃぃ」

「……お前、俺よりおっさん臭いな」 


 風呂に来た俺とダンは体を洗い湯船につかった。ちなみにシャンプーなどという便利なものはなかったので髪の毛は石鹸で洗った。


「それにしても勇者たちもそうだったがお前らの世界では風呂は身近なものなのか? ずいぶんとなれているように見えるが」

 まだ体を洗っているダンが訪ねてくる。大浴場に二人しかいないと声がよく響くな。


「ええ、まあさすがにここまで大きい風呂は高級宿にしかありませんが……人が一人入るくらいの風呂なら大体の家庭にありますよ」


 この世界の文明レベルは魔法があってある程度発展しているとはいえ中世のヨーロッパ程度だ。科学の代わりに魔法が発達しているせいか科学の不思議みたいなものを全部魔法の力で片づけられているところがあり科学レベルだけで言えばもっと昔になるだろう。


「そりゃすげえな! お前らの世界には魔力が存在しないんだろ? どうやってこんな大量の水を用意してるんだ?」


 声がでけぇよおっさん。響くから大声で喋んな。ついでに石鹸の泡が乳首とか大事なところとかを隠しているせいで見た目がすごいことになってる。


「人って言うのは頑張らなくていいようにするための努力を惜しまない生き物ですからね。魔法があろうとなかろうとそれは変わりませんし、魔法が使えないなら他の方法を考えてしっかりと成長するんですよ」


 人々は空を飛びたいと願った。ライト兄弟はそれを実現させた。同じようにエジソンは蓄音機を作った発電機を作った。そして現代日本にはラジオやテレビ、自動車や電車ができた。アニメが作られた。ラノベも作られた。あ、そういえばあのラノベあの後どうなったんだろう? 気になる……いやそうじゃなくて。


「そんなもんなのかね。俺もぜひ一度ニホンとやらを見てみたいものだ」

 その後も世間話などをして俺たちは風呂を上がった。


「しっかし王女様からはセイイチって勇者は勇者にふさわしくない落ちこぼれだって聞いてたからどんな奴かと思ったが……剣の才能はあるし面白いしかなりいい奴じゃねぇか」


 こんなガチムチのおっさんに気に入られてもうれしくねえよ。ってちょっとま

て。


「落ちこぼれ、ってあの王女様が言ってたんですか?」


 ここが重要だ、あの悪女何適当な事言いふらしてんだ。


「ああ、俺だけじゃなくてガウル陛下やその場にいた貴族達全員に話していたぞ。……それについてだが王女様の話を鵜呑みにしてお前にいい顔をしてない貴族がかなりの数いるからな、気をつけておけよ」


 ダンが声をひそめて俺に忠告をする。ふむ、貴族か。異世界物の小説の知識でしかないがそういうのを信じる奴は大体汚い貴族だよな……いやこれは完全な偏見だけど、それと国王の方にも注意しておかなきゃいけないな。やることを増やしやがってあの悪女め。


「まあ警戒しておくにこしたことはありませんね。ありがとうございます」


 その後訓練の準備があるからと言って別れたダンに教えてもらった通りに食堂に向かった。


「ほえぇ~やっぱすげえなこれ」


 食堂というからどんなものだとうろ思っていたが予想以上に広い。学校の食堂の五倍はあるだろう。うちの学食は結構広い方なんだけどな……


 すでにクラスの半数は来ていて食堂の一部だけ結構埋まっている。どうやら自分で料理を取っていくバイキング形式のようで料理を持って歩いてる奴もいる、


 俺は周りの目を避けるため食堂の一角から出ないでかつ周りから距離がある所を狙って席に着いた。


「よっ、誠一! 一緒に飯食わないか?」

 席に座って一息ついたのでとりあえず食いものでも取りに行くかと考えた俺に大地が話しかけてきた。


「ん? ああ、別にいいぜ」

 目線を避けると言っても貴族達からの嫌な視線と昨日ステータス見せた時のことで注目を集めたくなかっただけだし一緒に食うことに問題はないだろう。

二人で料理を取りに行くと馬鹿(二宮)が出てきた。お前地味に出番あるよな。


「おい如月! お前鑑定スキルを持ってないんだってな! そんな奴が鎌倉さんを守れるわけがない! お前は鎌倉さんにふさわしくないんだよ!」


 ここで喚くなよ料理につばが入ったらどうしてくれんの? 食べ物の恨みは恐ろしいってことをその身を以て体験してみるか? そもそも鎌倉さんにふさわしいってなんだよ。俺は鎌倉さんの彼氏か。


「分かったから黙れ。周りの貴族に見られてんぞ」

 馬鹿が騒いだせいで俺達のことを周りの貴族が見ていた。


「……チッ、運が良かったな。これで許してやる」

 お前は小物ヤンキーか。


「何なんだあいつ? 鎌倉さんにふさわしいってなんだよ」

「……鈍感め」

「ん? 何か言ったか?」

「いや、なんでもない」


 首を傾げる俺に何かを呟いた気がするが気のせいのようだ。


 確か朝食の後は訓練だったか? ダンに剣について習うんだろうか? さっきは腹減ってて本調子じゃなかったし訓練は真面目に受けるとしよう。


如何 今回の事件はある程度運三倍の力が働いていたりします。

後々主人公の運300がどの位なのかの記述もあるのでお楽しみに(?)

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