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閑話 trickとtreat

ハロウィン特集的なあれです。やっつけで書いたんで次話投稿と同時に消すかも。

「トリック・オア・トリート!」


 そんな声が響く。気付くと俺は真っ白な空間にいた。あれ? 俺は確かハーメルンで…

…ダメだ、思い出せない。


 思い出せないものは仕方ないので声がした方を向いてみる。するとそこには満面の笑顔の鎌倉さん……結衣がいた。


「……え?」

「だから! トリックオアトリートだよ! お菓子くれなきゃいたずらしちゃうよ!」


 ごめんなさい。ついていけないです。


 俺が混乱していると、いつの間にか神田さんが横にいた。


「いいからお菓子を寄越しなさい。さもないと……そうね、じゃあ……今から結衣の服一枚ずつ脱がして――」

「取りあえず落ち着こうか!?」


とにかく落ち着かせてから『アイテムボックス』を開き、何かお菓子はないか探してみる。すると町で買ったパイが入っていた。それを取り出すと目を離したすきに服を脱がせにかかっている神田さんと結衣に渡す。何なんだ一体……


「誠一! トリックオアトリ――ぐへっ!」


 背後から突然現れた大地にカウンターを決める。一撃で地面に落ちた大地にせめてもの無さけとして同じものを背中に投げておいた。


「一体どうなってるんだ――おっと!」


 気配を感じて右に移動する。するとさっきまで俺のいたところに人が降ってきた。


「はっはっは。セイイチ、トリックオアトリートだ!」


 地面が透明なのでよくわからないが、地面にめりこんだはずなのにすぐに起き上がるダン。何か久しぶりに見た気がするぞこのおっさんも。


「いや、そもそもなんでこっちの世界の人がハロウィンをしってるの!?」


 とにかく頭が追いつかないので一つ一つ突っ込んでいく。そもそも微妙に暦が地球と違うからハロウィンなんて分からないはずだ。


 そんな事を思っていると正面から高速で飛来する丸い物体が現れた。


「今度は人ですらないのか……ってお前は!」


 俺はその物体を腹で受け止めてやる。そのまま勢いで後ろに倒れこんでしまった。


 俺の腹にぶつかってきたのは緑のぷるぷるとしたボディーに薄緑の核、スライムだ。


「いてて……何でお前までいるんだよ」


 俺がスライムを抱えて起きあがるとスライムが腕の中でうねうねと動き出した。


「ん? なんだ、お前もお菓子がほしいのか?」


 どうやら正解のようでふるふると震える。


「うーん、何かあったか……」


『アイテムボックス』の中を探してみると道中で奮発して買ったハチミツが出てきた。それをスプーンですくいとってスライムに近付けてやると、体に取り込ませていく。


 しかし、スライムは満足してくれないようだ。


「もっと欲しいのか?――っておい!」


 俺がスライムに尋ねると目にもとまらぬ速さで俺の左手からハチミツが入った瓶を奪い取った。そして瓶ごと体内に吸収していく。


「ばか! お前何してんだ……っておい、まて!」


 スライムはまだ満足しないのか、『アイテムボックス』の中に入っていく。そこには何も食いものはないはずなんだが……


 そこで衝撃的な物を見てしまった。『アイテムボックス』の中にある魔石、毛皮、牙、爪、その他の素材をスライムが吸収していく。やがて『アイテムボックス』の中身を食べつくしたスライムは巨大化していく。


「はああああっ!?」


 俺が驚いている間もスライムはどんどん大きくなっていき、この謎の空間を飲み込み、神を飲み込み、世界を飲み込み――











「……ってなんでやねん! ……あれ?」


 俺は宿屋で目覚める。思わず叫んでしまったが何をしていたのか思い出せない。何か夢を見ていた気もするが、何故か思いだせない。


 ただ一つ、俺が言えることは……


「なんか……無性にかぼちゃプリンが食べたくなったな……」


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