人数と半分
またもや投稿が遅れ……
ノスティア王国に召喚された勇者は全部で35人。内一人が行方不明――まあ、俺の事なのだが――のため今いる勇者は全部で34名であるはずだ。
「……17人?」
思わず声に出してしまった。それを女将さんは違う意味で受け取った様で、
「そう、17人もいるんだよ。先代勇者様だって一人しかいなかったんだ。魔王とやらの封印が解けかけているみたいだけどこの分ならすぐに解決しちゃいそうだね!」
と笑った。確かに数を見れば前回の17倍だ。何も知らなければあまりにも多いと言えるだろう。
「ちょっと聞いてもいいか? その情報はいつ、誰から聞いてそんなに広まったんだ?」
俺は女将さんに尋ねる。街がにぎわっているということはそれなりに一般的な話のはずだ。出所によっては中途半端に情報を掴んだやつが流したニセの情報かもしれない。
「ん? あれはたしか昨日……いや、一昨日の事だね。街中で公表された、しかもお上が直々に掲示した内容だから信憑性はかなり高いんじゃないかい? なんたって大陸一の技術力を持っているらしいしね。きっと今でも冒険者ギルドに行けば原文が飾ってあるんじゃないかい? 興味があるのなら見ておいてもいいと思うよ」
女将さんの話を聞きながら食べていたパンを飲み込み、考える。この情報が正しいとして、残り半分のクラスメイトはどこへ消えた? 殺害され……ては、さすがにないはずだ。いくらなんでも貴重な戦力を自ら捨てに行くとは思えないし、勇者達に知れたら大問題では済まない。
だとしたらなんの理由があるんだ? 半数を魔大陸に送り出したとして、残りの半数は自分の手元に残しておくのか、それとも――
「……隣国との戦争?」
「ん? 何かいったかい?」
「いや、何でもない。ありがとう」
思わず口に出てしまったようでそれを不思議に思った女将さんを誤魔化しつつも再び思考に戻る。
昔の記憶の中からノスティア王国に抱いていた印象を思い出してみる。余りいい印象は受けない。と、言うより王女の記憶があまりにも酷いんだろうな。実際にダンみたいないい人だっていたわけだし。
後は……グラント帝国と仲が悪いんだよな、政治に関してはからっきしだが仮想敵国ってところだろうか。勇者の名前や実力を利用して隣国に喧嘩を売っている可能性も……さすがに飛躍しすぎているとは思うがないとも言い切れない。
……この辺りについては公表されていないのか? この国の諜報技術がどの位なのかは分からないが、大陸一と言うくらいなのだから国の内部事情を探ることくらいはできるはずだ。
ああ、確かに他の国の国家機密のような情報をぽんぽんと公開するわけにもいかないよな。
「念のためギルドで公式の文章を読んでおくか……と言う訳でジョズ、明日ギルドによるぞ。一応情報収集も兼ねてここには2,3泊して置く予定だから久々に依頼でも受けてみたらどうだ」
考えているうちに空になった皿から目を離し、ジョズに伝える。俺は明日は情報収集だな。勇者の数が半分なのはさすがに気になる。
翌日、俺はジョズと冒険者ギルドに来ていた。さすがギルドの総本山とでも言うべきか、とにかくでかい。敷地の広さは都庁くらい、高さは10mほどの3階建てだ。
いつまでも建物を見ていても仕方がないので中に入る。するとこの階はおそらく素材を売りつける所なのだろう。重そうな荷物を持った人が並んでいた。
それを見ながら階段を上る。二階には掲示板が貼ってあり、そこに押しかける人々がいる。おそらくあれは依頼の紙が貼ってあるのだろう。ああいう所を見ると人が多いギルドもそれはそれで大変なんだな。
三階は酒場になっているようなのでまずは二階を良く見てみる。すると柱に高そうなフレームがついた紙が貼られていた。何人かの冒険者がそれを興味深げに読んでいる。
「あれか?」
俺が呟きながらその紙を見る。そこには予想通り、勇者召喚についての事が書かれていた。
何やら形式ばった難しい文章で書かれていたが、まとめるとこうだ。
近年先代勇者によって行われた魔王の封印が弱まりつつある。その事態を重く見たノスティア王国は勇者召喚を実行した。
その後、数ヶ月ほど王国内である程度の戦闘経験を積んでから勇者達17名がノスティア王国から魔大陸へ向けて遠征を始めた。
ノスティア王国は勇者を出発させると同時に、この事を完全に公表した。
「へえ……何か大変そうだな」
ジョズは他人事のように呟く。しかし俺にはいくつか気になる点があった。
まずは「出発したのが17人」とは書いてあるが「召喚されたのは17人」とは書いていない。これだけなら偶然かもしれないが、数ヶ月間勇者を囲っていたと言う事実は公表されていないはず。
その情報を掴んでいるということは召喚されたのが17人だけじゃないと言う事を知っていたとしてもなにもおかしくはないはずだ。
俺が張り紙の前で腕組みをしつつ考えていると、
「ん? ここらじゃ見ねえ顔だな。余所から来たのか?」
と、俺に話しかけてくるおっさんの声が聞こえた。
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