ゴブリンと落とし穴
累計PVが3000を突破しました! ありがとうございます。
これからも強欲の花 ~クラスごと勇者召喚された結果がこれだよ!~をよろしくお願いします。
とりあえずこの家の掃除をしよう。とてもここは人の住める場所とは思えない。
……それにしてもひどい家をよこしたもんだなあの王女も、ドアはずれてんじゃねえか。
とりあえずドアは外れたままにしておいて中に入る。
「うわっ!……ゴホッゴホッ、ひどいなこれ……」
中は埃だらけ、蜘蛛の巣も張ってるし床なんて土だ。もちろんベッドなんて代物はない、あるわけがない。それどころか掃除用具もない。あるのは鍬とつるはし等の道具くらいだ。
「うーん。とりあえず寄りかかってでもいいから、寝れるスペースを確保しないとな……この辺でいいか」
適当なところを見つけた俺は、鍬を振りまわして蜘蛛の巣を払い壁をはたいて土やほこりを落とす。ついでに地面の土も払っておく。これで気持ち綺麗になった。
「まずはさっき王女にもらった服をここにおいてと、もう暗いけど寝る気にはなれないな、召喚されるときに時間がずれてたみたいだけど時差ぼけ起こしたりしないだろうな……ん?」
ガサガサッ
近くの草から何かが出てくるような音がした。
「えっ、ちょっ、おまっ、まさか魔物!?」
慌てる俺。まあ当然だろう。ときどきいる物語の主人公のように、めちゃくちゃすごい格闘技を持っているわけじゃない。慌てて当然だろう。おまけに今は何か武器を持っているわけじゃない。持っているとすれば鍬と向こうの方にあるつるはしくらいだ。百姓一揆かよ。
「とりあえず外の様子を確認しないと……」
小屋の中で震えていたら魔物に殺されました。なんて冗談じゃない。とにかく外の様子を見れば準備ができるだけましだろう。
外の様子を見ると120センチメートルほどの人型の魔物が出てきた。手には木の棍棒を持っていて下半身には腰布が巻いてある。俺をにらみつけていることからして、完全に俺を狙っているのだろう。
「ギ、ギギィ!」
棍棒を振り上げ俺の方に走ってくる魔物。だがそこまで速くない。50メートル11秒くらいの速さだ。それでも武器を持って走ってくる、というのは脅威でしかない。
「ふっざっけんなっ!?」
全力で家の中に逃げ込む俺。いや普通に怖いぞあいつ。素人でも子どもでも、武器を持って振り回すだけで十分な脅威になり得る。
家の中に入ってくるゴブリン(俺命名)。俺も牽制のために鍬を構える。一応先に鉄がついてるやつだから、やろうと思えば人も殺せる。いやだから百姓一揆か。
こちらに飛びかかってくるゴブリンに向かって全力で鍬を振りおろす。殺すのが何とかとかいってる場合じゃない。やらなかったら俺が殺される。もしかすると群れのところに連れてかれて、R18なことをさせられてゴブリンの子どもを産まされることになるかもしれない。いやそれはないな。
できるだけどうでもいい事を考えて気持ちを奮い立たせる。俺はそのまま勢いに任せて鍬を振りおろす。
「ギギッ!?」
俺の振りおろした鍬は、運よく棍棒に当たって武器をたたき落とせたようだ。
正直なところ、武器さえ封じればこんなチビは脅威ではない。いくら格闘技をやってないとはいえ、小学生程度の身長の奴に負けるほど自堕落な生活を送っていたわけではない。それにこっちには武器もあるしな。
「おらァ!!」
鍬を横に振るう。もちろん素人の大振りな攻撃なのでかわされる。が、それでいい。
「ギッ!?」
そのまま鍬から手を離してゴブリンにタックルを食らわせる。ゴブリンに馬乗りになったら近くに落ちている棍棒を拾って頭を何度も打ち付ける。手には肉をつぶす感覚が伝わってきて余りいい気持ちとは言えないな。
何度か棍棒で頭を殴るとゴブリンは絶命したようで動かなくなっていた。返り血がとんでもないことになっている。棍棒もズボンもワイシャツも血だらけだ。ブレザーだけ脱いでおいて正解だったな。
俺がゴブリンを殺してから数秒するとゴブリンの死体が光の粒子になって消えてった
「ううぉっ!?」
びっくりした俺はすぐにゴブリンの死体だったものから離れる。
やがて光の粒子は完全に消え去り、そこには何やら汚れた布と石が落ちていた。
「これは……ドロップアイテムか? どうでもいいけどどうせ死体が消えるなら返り血も消えて欲しいな」
確認のために【鑑定】を使う。
[ゴブリンの腰布
ゴブリンから必ずドロップする。ゴブリンが巻いていた腰布。汚い]
[ゴブリンの魔石
ゴブリンからやや低確率でドロップする。魔力を込めることができるが一定以上の魔力を注ぐと壊れる]
やはりドロップアイテムのようだ。あるのかは知らんが、冒険者ギルドの討伐依頼なんかだとゴブリンの耳を切り取ったりしないで、腰布でも渡せばいいのだろう。
それにしてもこの二つ……正直なところあまり役に立つとは思えない。
腰布はもちろんとして、ゴブリンみたいな雑魚から出る魔石は大体使えないようなクズ魔石だと相場は決まっている。そもそも今の俺は魔石の魔力を出し入れする方法なんて知らない。
仕方がない。今日は予想外の戦闘があって疲れたし、明日いきなり訓練に遅れるなんてあったらたまらないし着替えて寝よう。
「しかし、さっきみたいにゴブリンが寝ている間に襲ってきたら怖いな。このぼろい扉じゃすぐに壊れそうだし……そうだ、この腰布を使って……」
ゴブリンの腰布はそれなりの面積がある。家の隅で埃をかぶっているスコップを見つけた俺は、家の前に先ほど倒したゴブリンがちょうど入るくらいの穴を掘ってその上に布をかぶせた。更に布の四方に石を置いて上から土をかぶせる。即席落とし穴だ。
「思いつきでやっては見たものの……しんどいなこれ」
一メートル以上の穴を掘るのは正直相当しんどい。城に風呂があったら使わせてもらいたいものだ。
ちなみに穴を掘っている間はトランクス一丁に上半身は裸ブレザーという、かなり変態的な恰好をしている。
汗だくになった体をシャツの余り血が付かなかった部分で拭くと明日用の着替えをきてすぐに眠ってしまった。
少なくとも30話くらいまでは一日1~2話更新するつもりです。
なに、ちょっと徹夜すれば簡単ですよ。ハッハッハッ……はぁ
ご意見・ご感想お待ちしております。