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ジャックと兄貴

今回は全部ジョズ視点です。

視点が結構な頻度で変わっていますが暫くはジョズ視点は出て来ないです。

 俺は兄貴と同時に洞窟の中に入る。洞窟は薄暗いが人が見えない程の暗さでもない。


 20秒ほど走った時、兄貴は別の道にそれて行った。おそらくあちらに捕まっている人たちがいるのだろう。あちらは兄貴に任せてまっすぐ進む。


 するとすぐに盗賊と遭遇した。向こうは突然現れた俺に動揺しているようだ。


 俺は盗賊に向かって蹴りを繰り出すとバランスを崩した盗賊の首元に正確に雪霧を突き刺す。そのまま雪霧を引き抜くと確認をせずに前に進んだ。しょうが無い事だし、何度も経験してきたとはいえ、やっぱり人を殺しにかかるっていうのはいい物でもないな。


 その後すぐに、別の盗賊が出てきた。今度は二人だ。どうやらさっきの戦闘音に反応して来たらしい。奥からもう二人が近づいてくるのを感じるしあまり時間はかけていられない。


 俺は片方に短剣を繰り出すと同時にもう片方の盗賊の顔面に向かってひざ蹴りをする。短剣の方は避けられたがひざ蹴りの方は綺麗に当たり、盗賊が後ろに倒れ込んでいく。

俺はそのまま倒れた盗賊の顔の上で踏み込み、短剣を避けた盗賊にもう一撃を食らわせる。少し前だったらここまで機転を利かせる事は出来なかっただろうが、兄貴と何度も命がけの訓練をしたおかげで細かい駆け引きもある程度できるようになった。


 その後きた盗賊も同じように倒し進んでいく。その後も盗賊が何人か出てきたが危なげもなく無力化させる。兄貴の索敵によれば8人と聞いていたが、全部で10人だった。少し物音をたてすぎて人が集まってきたか?


 俺はボスのいる部屋に突入しながら魔法を使う。


「火の精よ 槍と為せ 敵を貫け 『火槍(ファイアーランス)』」


 部屋に入ると同時に詠唱が完了する。俺は入った時に最初に目についた、正面の盗賊に向かって火の槍を飛ばす。


 魔法はあまり好きでは無いのだが、兄貴に「遠距離攻撃の術を持っておいた方がいい」と言われ、前からスキルを取得していた火魔法を鍛えた。


 火槍(ファイアーランス)は盗賊に当たると同時に爆発し、盗賊を吹きとばして近くにいた盗賊二人を巻き込む。洞窟内で火を使うと息苦しくなるが、そこまで大きな炎では無いので問題ないだろう。念のため早めに終わらせるか?


「て、てめぇ、裏切ったのか!?」


 俺の事に気付いた盗賊の一人が叫ぶ。確かに裏切ったことになるんだろう。


「まああれだ、俺に盗賊は似合わなかったってことで……なっ!」


 近くにいた盗賊が襲いかかってきたので拳で殴り、雪霧を使って追撃をかける。


 俺が首に短剣を突き刺すと同時に、強烈な殺気を背後に感じる。


「っ!」


 俺が慌てて短剣を引き抜き殺気から距離をとると、そこには盗賊団に入った時散々俺をこき使った男――つまり盗賊団のボスがいた。


「首を一突き、か……随分と人殺しに特化した戦術を使うようになったじゃねえかよ、ジョズ」


 盗賊団のボス、確か名前は……ジャックだったか。ジャックはいやらしい笑みをこちらに浮かべる。随分と余裕の表情だ。


「俺達を裏切ったようだが……今度は誰に媚を売ってんだ?」

「お前には関係ないだろ」


 ジャックが話しかけてくるが俺は話をする気はないという意思表示を見せる。


 ――こいつ、ジャックは俺の過去について知っている。


 俺がグラント帝国から都市ジェークルに来るにあたって、まあ俺はめちゃくちゃ強いという訳ではないので、自力でこれる訳じゃない。そこでまあ色々と犯罪にはならないものの、犯罪ギリギリのような褒められない事もしてきたわけで……その一部を盗賊団に入るためにこいつに話していたりするのだ。


「ふん、散々人を騙して、俺達も裏切って、今度のお仲間も騙そうってか? 全く悪い奴だな。お前は――」

「火の精よ 槍と為せ 敵を貫け 『火槍(ファイアーランス)』」


 俺はジャックの言葉を遮るように大声で詠唱をする。放たれた二本の槍の内一本はジャックへ、もう一本は俺達を囲んでいる盗賊達の方に飛んでいく。


 ジャックには避けられたがもう一本の火槍(ファイアーランス)は命中、さらにジャックの避けた先にいた盗賊に当たった。


「なんだよ、いきなりあぶねえな」


 ジャックは余裕の表情を崩さない。


「言ってろ。俺は兄貴を裏切ったりしねえよ」

「兄貴? それがお前の今の(・・)仲間か?」


 ジャックは俺の兄貴という言葉に反応する。


「尤も。過去を隠して媚を売って、用がすんだら逃げるだけの関係を仲間と呼んでいいならの話だがな」


 ジャックは挑発するように言う。確かに今までそんな事も何度もしてきたし、俺は正真正銘のクズなんだろう。


「……そうだな、俺は正真正銘のクズだろうな。だがな、俺が心から慕った兄貴にそんな重要な事を隠すわけないだろう」


 兄貴には過去の事を話した。それだけじゃない。最初に着いていくと言った時は途中で裏切ろうとしていた事もだ。


 それで色々とあったのだが、それがあの人を兄貴と呼ぶようになったきっかけだったりする。

 まぁ、その辺りは今考える事じゃない。今俺がやるべきことは兄貴に信頼されて任された仕事――こいつらの殲滅をするだけだ。


 俺は思考を切り替えて目の前の戦闘に意識を向ける。ジャックの獲物は剣。俺の雰囲気が変わった事に気がついて臨戦態勢に入ったようだ。


 俺はジャックから目をそらさないようにして盗賊の数を計算する。魔法でかなりの人数を削る事が出来たので取り巻きは……残り4人か、一人どさくさにまぎれて逃げ出したか? 雑魚達は大した事はないが問題は目の前のこいつだ。


 俺が盗賊団に入った頃、Cランクの冒険者を倒した事があると豪語していたがこうやって対面するとそれに見合う実力を備えている事が感じ取れる。


 先手はジャックが仕掛けてきた。俺に接近し剣を振り下ろす。俺はそれに対して短剣を受け流すように剣に当てて剣先を逸らす。


 俺はその直後にジャックの胸めがけて突きを放つが避けられ、距離を取られる。


 その後数合打ち合ったがどんどん戦闘が加速していく俺達に盗賊達は入るタイミングが掴めないでいるようだ。


「ほう、なかなかやるな。だがこの程度じゃ、なぁ!」


 あくまで余裕を見せようとするジャックの声を無視して攻撃を繰り出す。訓練のおかげか相手がどこを狙ってくるのかが分かる。それに最初は分からなかったが少しずつこいつの回避パターンも見えてきた。


 それで分かった事がある。確かにこいつは強いが……倒せない敵じゃない、このまま押し切れる。


 さらに攻防を繰り返すとだんだんとジャックの顔から余裕が消えて行くのが分かる。焦ったジャックが剣を放つが今までのような速度も正確さもない攻撃だ。


「はっ!」


 俺は横薙ぎに振るわれた攻撃を片手で(・・・)白刃取りをする。ジャックが驚いた隙をついて剣を持っている手を雪霧を使って切りつける。


「ぐっ!」


 ジャックは痛みをこらえきれず剣から手を離す。その瞬間をねらって首元にめがけて飛びかかった。


 何度味わっても慣れる事のない感覚を腕に感じながら雪霧を引き抜く。この怪我ならまず助からないだろう。


 ……これで、心に引っかかっていた何かが無くなったような気がした。


 その後、俺は周りの盗賊を気絶させてジャックの横に転がしておく。どうせ後で回収しに来るので問題ないだろう。


 俺は服にべったりと付いた血に顔を顰めながら外へ向かう。よく見ると小さな傷が数か所ほどついていた。


「おう、お疲れさん」


 俺が洞窟からでて眩しさに目を細めると兄貴の声がした。どうやら先に捕まっていた人たちを回収していたのだろう。


 数秒程まって目が慣れてくるとそこには兄貴の姿が見える。それとセレナさんと、おそらく捕まっていたのであろう三人の女性達。そして……


 三体のウルフがいた。


 今回はかなり難産でした。

 ジョズの過去をほのめかすために何度も書き直しをしているので作者が見直ししてもおかしい所があるかもしれません。


 もしかしたら大きく編集する……かも。

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