朝食と同行
なんか日間ランキング5位とっちゃったり累計2,000,000PVになっちゃってたり日間PVが25万突破しちゃったりして「えぇっ!?」とか「ほえっ!?」とか「おおぉ!?」って感じで驚いてばっかりです。
2015/08/19
ジョズの提案の時に、ある程度損得の計算をする描写を追加しました。
「…………うぅ、あと五分」
次の日の朝、俺は誰にも起きろと言われていないのに延長時間を要求し始める。もう朝か。
「うーーん。なんか変な夢を見た気がするんだが……何でか思い出せん」
地球では割と夢の内容を覚えていた方なんだがな。
目が覚めたので着替えると食堂へ降りて行く。今日は割と早く起きたためかジョズはまだ起きてきていないようだ。
朝食にもまだ早いような感じだったので軽く散歩をする事にした。まだこの町に詳しくないので把握も兼ねてだ。
散歩しながら歩きつつ【索敵】や『空間把握』を使っていると、この街にもスラムのような場所がある事が分かった。こういうしっかりしている道は素敵な風景が広がっているがこういう所にもスラムがあるんだな。
宿から戻ってきた俺は丁度降りてきたジョズと一緒に朝食をとる。そろそろこの街での生活も安定してきた事だし、今後の事についても話し合わないといけないだろうしな。
「なあ、ジョズはこれからどうするとかは決まっているのか? やっぱりこの街で冒険者を続けるのか?」
俺が聞くとジョズは少しだけ考えるようにして答える。
「いや、実は行きたい国があるんだけどな。そこがここから結構な距離があるからそこに行くまではいろんな街を転々としつつ金を稼ごうと思っている」
「へぇー」
ジョズは思ったよりしっかりした目的を立てていたようだ。
「俺もちょっと探している人がいてな……そいつらを探すためにいろいろな街を転々として行こうかと思ってる。今頃はまだノスティア王国ってところにいると思うんだがどの辺なのかわからん」
俺は後半は諦め気味に言った。それもこの世界は地図があまり発達していない上にやたらと面積が広いので近場の国ならともかく、遠方の地名などは全然地図にも載っていなかったのだ。
しかし情報というのはどうやら意外な所に転がっているようだ。
「ノスティア王国!? それって俺の目指している国の近くじゃねえか!」
ジョズは驚いたように叫ぶ。ノスティア王国について知っているのか?
「落ち着け、それよりもその話について詳しく」
何でもジョズはの故郷はグラント帝国という所らしくそこを目指しているらしい。しかもその帝国、ノスティア王国の隣国で、いつも戦争ばかりしているやたらと仲の悪い国同士らしい。
最近は睨みあいが続いていて直接手は出していないらしいがいつ再戦するとも分からないので出来る限り早く故郷に戻っておきたいらしい。
いやはや、全くどこで話がつながるのか分からないものだ。
だが王国の事を知っている人がいると言うだけで僥倖だ。ジョズが知っているという事は行こうと思えば行ける程度の距離にあるのだろう。
「それってここからどのくらいの所にあるんだ?」
「分からんな……何週間かいろんな街に滞在していたけど大体5年くらいはかかったな。潤沢な資金があれば馬車で3年くらいってところか?」
先程の喜びから一転。一気に落ち込んでしまった。遠すぎるだろ……俺のステータスを使って無理やり進めば数カ月もしないうちにたどり着けるか?
まあとにかく行ける程度の距離である事が分かっただけで十分だろう。
「それって方角とかも分かったりするか?」
「うーん。大体北西の方から来てた事は分かるんだけどそれ以上は分からないんだ。わるいな」
ジョズは申し訳なさそうにするが俺にとってはとても貴重な情報だ。こう見えてこの都市ジェークルは魔大陸にかなり近い場所にある。ここからノスティア王国を目指して行けばいずれ会う事が出来るだろう。
ついでに勇者召喚の事について怪しまれないようにそれとなく聞いてみたが勇者がどうととかなどの噂は全く聞いていないとの事だ。そりゃあ馬車で何年の道のりなんだ。飛脚を使っても最低でも1年はかかるだろうしそう簡単に情報は伝わらないということか。
俺がある程度の算段を立てているとジョズが言いにくそうに喋り出す。
「あのさ……行き先も似ている事だし一緒に行動しないか? いや、させてくれないか?」
ジョズはスプーンを机に置き真面目な態度でこちらを見つめてくる。
「……お前を仲間にしてメリットはあるか?」
一応ジョズには覚悟の確認の意味も込めて質問をする。これで戦闘を手伝うなどと言い出したら断ろうと考えていた。
「……そうだな、あんたには戦闘の手伝いはいらないだろうが……俺はグラント帝国からここまで来るのにいろいろな街を経由してきた。その辺の案内ができる。それと中には特殊な環境で育ったせいで他の場所では出てこないような魔物が結構出てくる。そうしたらいくらあんたでも強い魔物に前情報なしで襲われたら分が悪いだろ」
ジョズは少しだけ考えるとすぐに答えを出す。俺が追加戦力を必要としていない事や地理に明るくないことなどを瞬時に思いつける辺りかなり有能な人材である。
その事を踏まえて考えるとどうだろう。さっきの数カ月というのも俺が朝から晩まで全力疾走すれば、の話だしぶっちゃけそこまでして急ぐ気にもなれない。潤沢な資金ありで3年か。それなら俺の魔法を旅に役立てればもっと短縮できるか? ジョズが子どもだったりするならともかく、普通の旅をする分には邪魔にならないだろう。この世界の街はここしか知らないし、街の案内というのも魅力的だ。
「……そうだな、お前みたいに地理に詳しい奴だったら連れて行ってもいいかもな」
「本当か!?」
「ただし条件がある」
興奮するジョズを抑えるように声を重ねる。
「条件は簡単だ。今から1ヶ月以内に冒険者ランクをCに上げる事。それができれば連れて行ってやる」
俺が宣言するとジョズは驚いたように固まる。
「なっ、だってDランクからCランクに上がるのなんて3ヶ月はかかる事なんだぞ? いくらなんでも一カ月はきついって」
「お前は俺と会うまでにも冒険者だったんだろ? ならなんとかなるって。それに俺もある程度の事は助けてやる」
俺はこの条件が達成できなかったらジョズを連れて行かないつもりだ。しかし俺が特訓を付けてやったりある程度の手助けはしてやる。それでもできなければの話なのでそこまできつい条件でも無かったりする。
「……分かった。どうせ俺一人じゃ難しいしな。一緒に行ってくれなければ機会を失ったも同然だ。飲むしかねえよ」
ジョズは腹をくくった様に言うと朝食を掻き込む。
「よし、そうと決まれば冒険者ギルドだ! 必ずCランクになってやるぜ!」
ジョズはそのまま叫んで宿屋を飛びだしてしまった。全く元気のある奴だ。
「さて、じゃあ俺も今日一日がんばりますかね」
俺はジョズの足音が遠ざかって行くのを感じながら気合いを入れた。




