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宿と睡眠

 町に入ると目に飛び込んできたのは大量の人。さすがに東京のようにとは言わないが千葉駅周辺くらいの人はいるだろうか? 例えが悪いな、30点。


 人が多いのもありとにかくにぎやかだ。更にここは商業の中心地でもあると言うのでさらに活気づいているのだろう。


 俺は辺りを見回して適当な屋台を覗く。


  屋台ではちょっとハゲ気味のおっさんが何かの肉を売っていた。


「おっさん、これ何の肉?」

「まだおっさんじゃねえよ! これは牛の肉だ。尤も、どんな肉でもウチの秘伝のタレに付ければ超高級になるけどな!」


 最近はずっと自炊だったので人の作った料理ってのを食べてないな。自炊って言うよりはサバイバルだったけど。


「じゃあ二本くれ、いくらだ?」

「一本で銅貨3枚、二本で5枚に負けといてやる」


 俺は銅貨を5枚支払うと串を持っていく。そのまま門の近くでジョズが来るのを待つ。


 串はおっさんが豪語するだけあってうまかった。タレも長年時間をかけて作ってきたのだろう。深い味わいだ。


 それからしばらくするとジョズが歩いてきた。馬車はどうしたのだろうか。


「よう、遅かったな。馬車は?」


 俺が聞くとジョズは手に持った袋を目の前に掲げて言った。


「ああ、なんかいろいろ調べるためにって一度全部没収されたな。調べ終わったらくれるらしいから安心しな。代わりに懸賞金として金貨ももらったしな」


 まあそう言うことなら仕方が無いだろう。


 いつの間にか辺りも暗くなっていた。やっとダンジョンの外に出られたんだからちゃんとした宿屋で眠りたい。


「で、もう寝たいんだけど宿がどこにあるか知らない?」

「俺が一回来たときに泊まった宿でよければ案内できるぜ」


 俺が聞くとジョズが宿を知っているそうなのでついて行く。そして着いた先は結構な年代を感じさせる大きな家だった。


 中に入ると恰幅のいいおばちゃんが入口のすぐそばで受付をやっていた。


 奥には食堂のようになっていて可愛い娘さんが注文を取っている。ザ・異世界の宿屋といった造りだ。


 おかみさんはこちらを見ると大きな声で尋ねてくる。


「いらっしゃい! 一晩で一人銀貨2枚、ごはんは別料金だよ! どうする?」

「じゃあ俺は7日間お願いします」

「俺も同じで」


 俺がまとめて大銀貨3枚を出すとお釣りが銀貨2枚返ってきた。どうやら銀貨10枚イコール大銀貨1枚のようだ。


「それじゃあ411号室と412号室だね、一応鍵もあるけど泥棒に入られても文句は受け付けないからね!」


 俺はおばちゃんから鍵を受け取ると階段を上がる。そのまま部屋に入るとベッドにダイブした。正直あまり寝心地のいいベッドとは言えなかったが今までのように地面で寝るよりは100倍ましだ。


 久しぶりの普通の寝床のおかげかとてつもない速さで眠気が襲ってくる。さすがは人間の三大欲求というだけの事はあるだろう。


「念のために……『防御結界』」


 壁に向かって結界を張ったし今の俺の魔法なら普通の泥棒には侵入できないだろう。


 そのまま俺は体をベッドに委ね意識を手放した。



***********



“『$%?⇔&』からの干渉がレジストされます”

“『$%?⇔&』の影響がなくなりました”

“【←%&$!】による精神への干渉が起こります”



**********



 意識が覚醒する。何か夢を見ていたような気もするが思い出せない。取りあえず起きるか。


「ふぁ~~~あぁぁぁぁぁ」


 久しぶりに熟睡したからか体が凄く重く感じる。寝過ぎたか?


「よっこいしょういち――った、たたたたたたた」


 あ、足攣った。やばい、久しぶりすぎて完全に油断していた。


 俺が足の痛みと格闘して約3分後、取りあえず歩けるくらいには回復したので結界を解除する。結界が維持したまんまという事はまだ朝早いのだろうか。


 そう思って窓を見ると朝日が少しずつ昇って――あれ?


「太陽って確かあっちからは上らないはずだが……」


 よく見ると朝日じゃない気がする。もしかして夕日か? でも俺は昨日の夜に眠ったはずで……


「もしかして、丸一日寝てたの?」


 急に休日を寝過してもったいないような気分だ。しょうがないだろ。眠かったんだよ。


 さすがに寝過ぎて腹が減ってきた俺は飯を求めて下に行く。するとおかみさんが心配するような声をかけてきた。


「あんた、どうしたんだい? なんか朝になっても起きてこないしドアも開かないからって連れの男が心配してたよ?」


 ああ、そうか。ジョズがいたのか。完全に気が付かなかったな。余程疲れてたんだろう。


「ああ、大丈夫だ。さっきまでずっと寝てただけだ。ってことで何か飯くれ、おかみさんのお勧めで」


 俺が言うとおかみさんは苦笑する。


「それじゃあ今日はシチューだね。大銅貨1枚だよ」

「じゃあそれで」


 俺が銀貨を払うとお釣りとして大銅貨9枚を受け取る。なんとなくこの世界の通貨が分かってきた。


 しばらくするとおいしそうなシチューが出てくる。俺がそれを食べていると唐突に宿屋の扉が開けられた。


「ふう、さすがに腹減ったな。おかみさん、夕食を頼む。あ、あんたか、何やってたんだよ? 呼んでも出てこないしいドアも開かない心配したんだぞ」


 宿に帰ってきたのはジョズ。どうやらどこかに行っていたようだ。


「悪いな、ちょっと疲れがたまってたみたいでずっと寝てたんだ」


 最近はダンジョンの中で生活してたからな。あんなベッドなんて贅沢なものあるわけが無い。


「ふーん、まあいいけど。明日はちゃんと起きてくれよ?」

「分かってるって」


 俺は飯を食ったらそのまま部屋に戻りすぐに眠りに落ちる。まだ寝足りないのかよ。


 ……太らないよね?


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