置き去りと神々
どうしてこうなった……
2015/06/02
ユニークスキル→エクストラスキルに訂正させていただきました。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! 眩しい! こんなにまぶしいなら先に言えよおおおおおおおおおおおお!!! 目が、目がぁー!!!!
神と名乗る男のカウントダウンと共に強烈な光が俺を襲う。これ、下手したら失明するんじぇねえの?
耐えきれず腕で目を押さえる。が、それでも眩しく感じられる。
そして、光が収まった俺が見た光景はなんと……
「なんでっ!!!???」
――誰もいない教室だった。
俺が一人でパニックを起こしているとスピーカーから声がかかった。
『改めて、こんにちは、如月誠一君。僕は君たち人間に神と呼ばれる存在だよ』
いきなり自己紹介を始めやがった。もうわけわからん。
が、なんとなくわかった気がする。なんで俺がここに一人でいるのかを。
『賢い君ならもう分かると思うけどね、君がなんでここに残ったかわかるかい?』
なんか悪いことをした時に叱りに来る先生みたいな言い方やめろむかつく。
『……なんか今ものすごく失礼なこと考えてたでしょキミ。……まあいいけどね。それで僕がなんで君を引きとめたかわかるかい?』
まあこの流れで行くと、答えは一つしかないだろうな。
俺は無言で続きを促す。するとスピーカーから声が流れてきた。
『君のHDDを見させてもらったけどね、あれはさすがにないかな、うん』
「…………」
しばしの沈黙。
『まあ冗談はこのくらいにして、本題に入ろうか。それにしても君には本当に驚かされたよ。確かに僕が設けた一時間の中に鑑定のレベルを上げる人が出てくるだろうというのは予想していたね。もっと言うとスキルレベルを上げた人にはご褒美をあげようかとも思っていた。そして実際にレベルを上げた人も、君を入れて三人ほどいたしね』
意外に鑑定に気付いた奴もいたんだな、このクラスはそういうのを知ってるやつがいないから俺だけだと思っていたが……少々自惚れすぎていたようだ。
『まあそれでも君以外の二人は、鑑定Lv2までしか手に入れることはできなかったけどね。その点に行くと君はすごいよ。まさか鑑定Lv3まで手に入れる人が出るとは思わなかった。それに偽装スキルまでとるとはね。本当に驚いたよ。辛かったでしょ?』
あれ? 確かに偽装を取る時はびっくりするほど頭が痛くなったが……鑑定の時は気のせいで済むレベルだったはずだぞ?
『ああ、もしかして鑑定Lv3は簡単に取れたことに疑問を持ってる? 僕もわざわざ転移させるような事が無いから、あんまり詳しくはないんだけど、どうやら「知識量の差」に関係しているみたいだね。君はこういう異世界小説とか好きだったでしょ? しかも君自身が物凄い量の知識を持っていたしね。そのあたりの知識の差とかが影響して、早くとることができたんだろうね』
なるほど、俺のオタ知識と無駄知識が頭にあったおかげで、情報を司る鑑定のレベルアップに補正がかかったという認識でいいだろう。イメージのおかげで偽装スキルの取得にも補正がかかっていたようだ。
『後は質問があれば受け付けるけど?』
と、神からの声がかかってきた。疑問を解消するいい機会だろう。
「まず、俺は他のやつより遅れて転送されるけど召喚に時間差が出てくるなんてことは起こるか?」
『ないね。他の子たちはいま世界の狭間で待機中。わざわざ君を呼びとめたのは僕だからね、そのくらいはするよ』
「じゃあ次だ。俺が偽装スキルを取った時に感じた頭痛、あれは血管が切れるサインみたいなやばい痛みだったりするのか?」
『それも違うね。あれは本来得ることのできない魂にスキルを書き込んだから感じたいわば魂の違和感。脳自体にダメージはないから痛みによるショック以外で気絶や死亡はあり得ない。ついでに言うと向こうに転送されたときに魂を向こうの世界になじませるから向こうでスキルを取得するときは頭痛は起こらない。むしろ高山トレーニングの要領で、向こうに行ったらスキルが上がりやすくなっているはずだよ』
よかった、あれで脳が破損とか言われたら立ち直れなかった。本当に良かった。
「あともう一つ。俺達のステータスは全部100だが、あの世界の普通の人はどのくらいなんだ?」
まだどのくらいすごいのか実感が無い。
「うーん、いい質問だね。大体成人男性で、全ステータスが70前後って言うところかな? これは農民のステータスだから、狩猟を生業としている人は時々筋力とかが100あったりする程度。冒険者だったら、魔物と戦うからもっと上だけどね」
なるほど。農民と言っても向こうの人は体力があるんだろうし、おそらく今の都会人な高校生よりも格段に強くなっていると考えていいだろう。
「じゃあ最後に一つ。さっき鑑定のレベルを上げたやつに褒美みたいなことを言ってたけど、鑑定のレベルを二つも上げて更に偽装スキルまで入手した俺にはどんなご褒美が待ってるんだ?」
ここはとても重要なことだ。わざわざあんな痛い思いまでしたんだ。褒美が上乗せされないと割に合わない。
『あれ? 君って意外にがめつい?……まあいいや、君に授ける褒美は二つ! 一つは【強欲の種】というエクストラスキル。それも僕直々に作ったから世界で一つしか存在しないスキルだね、これを授けよう』
【強欲の種】か、どんなスキルかは知らんがまあ追々分かってくるだろう。
「もう一つは?」
『君だけに特別に一つ、ステータスの数値を三倍に――』
「運を上げてくれ」
即答する。
『即答だね。しかし、どうしてまた運なんかを上げるんだい? 君の性格とかだと筋力上げそうだけどね?』
神は面白がるように言った。いや、俺そんな脳筋に思われてんの?
「これは俺の勝手な予想だけど運だけはレベルアップでステータスが上昇しないんじゃないのか? そんな簡単に運が手に入ったら今頃その世界は富豪だらけだろ?」
まあゲーマーの感だけどな。と俺が呟くと神は楽しそうに笑った。
『やっぱり君は面白いよ。僕は君に会えて本当によかったと思っている。僕の友人なだけあるね』
俺は最後の神の言葉の意味を理解できなかった。
俺が神の言葉に首をかしげていると、淡い光が俺を包んだ。
『じゃあそろそろお別れだね、ちなみにそっちの世界にも神は居るからね、この世界より身近な存在として。君なら僕以外の神ともうまくやっていけそうだね。まあ、健闘を祈るよ』
神は親しい友人と別れるかのように言うと、突然俺の体を淡い光が包んだ。
『さようなら、また会える日まで――誠一君』
神が最後につぶやいた言葉の意味を理解しようとして――俺の意識は途切れた。
***********
何も見えない真っ暗な世界。その中でただ一人、少年のようにも見える男性が椅子に座っていた。
少年は何やらペンのような機械をくるくると手の中で弄んでいた。
「後の処理は君たちでやっておいてくれ」
少年が後ろを振り返ると、いつの間にか二人の男女が立っていた。
「よかったのですか? あの方に【種】を渡してしまって……」
二人のうち男性の方が、ペンを受け取りながら少年に尋ねる。
「いいんだよ。元々あれは彼の作ったものだ。それにあれを一番扱えるのは彼自身だしね」
どこか嬉しそうに話す少年を見て、もう片方の女性は苦笑する。
「まあそういうことならいいのでしょう。貴方が持っているといつの間にか失くしてしまいそうですしね、フフフ……」
「ひどいなぁ、僕だって友達の形見を簡単になくしたりしないって」
女性が笑うと少年は拗ねたように言った。
「まあ、あなたの人を見る目だけは確かですからね、信頼してますよ」
女性は優しい声音でいうと手をたたいた。
「彼には期待してるよ……心からね」
次の瞬間には、三人の姿は跡形もなく消えていた。
【名前】 セイイチ・キサラギ 17歳
【性別】男
【種族】人族
【レベル】1
【生命力】 100
【魔力】 100
【筋力】 100
【防御】100
【持久力】100
【敏捷】 100
【魔攻撃】100
【魔防御】100
【運】300
◆スキル
[鑑定lv3]
[偽装lv1]
◆エクストラスキル
[強欲の種]
◆称号
[異世界を渡りし者]
今度こそ誠一君には異世界に行ってもらいます。