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頭痛と勇者

今回は長めです。

 その後、数人からの意見が上がって浅野が黒板に書き込んでいく。


「皆は他に意見はあるかな? ないならこのまま多数決に入るけれど」


 誰も手を挙げない。まあ話についていけてないからってのもあるんだろうがな。

 

「じゃあ多数決を取るよ、じゃあまず無人島派の人」

 三人ほど手を挙げた。


「じゃあ次に森派の人」

 五人ほど手が挙がった。


「じゃあ最後に草原派の人」


 浅野がここに手を挙げたのを見て、残りのほぼ全員がここに手を挙げる。俺もここにしたがこいつらはいいのか? こいつの判断で自分たちが命を落とすかもしれないのに、それでも他人に任せたままだ。まあ俺の言うことではないから放っておくか。


「じゃあ草原で決まりだね。まだ時間まで30分ほどあるし、さっきの神様が言ってたステータス? についても確認しておこうか、ここからは皆自由行動でもいいよ」


 浅野が「ステータス!」と唱える。いや別に念じるだけでいいのだがお開きの合図の意味も込めているのだろう。


 周りも浅野にならって唱え始める。まあ俺はもう確認したし、レベル上げに専念しますかね。


【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]

【鑑定】[木でできた机、足の部分は金属でできている]


 ……ん? 鑑定のし過ぎだろうか、頭痛がしてきた。


【鑑定】!


[机  5年

 机の面は木でできている。また中に物を入れられるようになっていて足の部分は金属が使われている。]


 よし、どうやらレベルアップしたみたいだ。それにしてもさっきの頭痛はなんだったんだ? 魔力切れか? いや、確か確認した時は鑑定では魔力を消費していなかったはずだ。ステータスを確認してみたが、魔力も生命力も変わっていない。


 俺が首を捻っていると、復活した大地がこっちに振り向いてきた。


「なぁ誠一、見ろよこれ全ステータス100だぞ、これってすごいのか?」

「あの神は平均以上騎士未満と言っていたからな、鍛えてない人間と比べりゃ強いんじゃねぇの? て言うかお前いつから復活してたんだよ」


 神からの説明を聞き流していたであろう大地に教えてやると俺もステータスを出した。


【名前】 セイイチ・キサラギ  17歳


【性別】男


【種族】人族


【レベル】1


【生命力】 100


【魔力】 100


【筋力】 100


【防御】100


【持久力】100


【敏捷】 100


【魔攻撃】100


【魔防御】100


【運】100


◆スキル


[鑑定lv3]


◆称号


なし

 


 ……よく考えたら、この鑑定レベルはこのクラスでは異端なんじゃないだろうか?


 俺はまだ人に見せたわけではないが、周りでは数人がステータスの見せ合いっこをしている。


(あんまりステータスを見られたくないんだが……)


 こういうファンタジーには大体偽装スキルみたいなものがあったりするのだが、あいにく俺は持ち合わせていない。


 ならば今から取得できないだろうか?


(偽装スキル。偽装偽装偽装偽装偽装偽装……うーん、ダメか?)


 取得できそうな気配がしない。


 じゃあ今度は考え方を変えてみよう。ステータスが偽装されているところをイメージしてみる。

 

 ――偽装スキル。今持っているステータスの上に、偽のステータスをはりつけるイメージで……


(偽装偽装偽装偽装偽装偽装偽装偽装偽装偽装偽装……痛っ!?)

 また頭痛がした。しかも今度は鑑定スキルの時とは比べ物にならないくらいの痛みを感じる。


 ステータスボードを確認してみてもやはり生命力は減っていない。ならこの痛みの元は?


 Q.この痛みはどんな時に起きるのか。


  A.鑑定スキルのレベルをあげようとしたとき、また偽装スキルを獲得しようとした時。


 このことから考えてスキルの獲得・レベルアップの前兆の痛みと考えられる。


 なぜ痛むのかは知らないが生命力にも魔力にも影響がないんだから死ぬことはないだろう。次は痛みを我慢して無理やり習得させてみる。


(偽装偽装偽装偽装偽装偽装偽装偽装偽装偽装……)


“スキル【偽装】を習得しました。”


 ……いってええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?


 言葉にできないくらいの痛みを感じた。昔、インフルエンザで40℃出てるのに布団の上で跳ねまわった時より痛い。思わず自分がマゾに生まれてこなかったことを呪ってしまうくらいに痛い。よく気絶しなかったな俺。


「どうした誠一? 大丈夫か?」


 頭を抱えて叫びそうになる俺を不審に思ったのか、大地が尋ねてくる。


「いや、少し風邪気味でな。こんな体調で異世界とか勘弁してほしいよ全く。そういえば神の指定した時間まで後何分くらいになるんだ?」


 話題をそらしてごまかすと意外な人物から答えが返ってきた。


「確かあの放送が終わったのが八時四十分ごろだから、後十分くらいかな?」

 驚いた俺が振り返るとそこに立っていたのは鎌倉さんだった。


「うおっ、鎌倉さんか。どうしたの急に?」


 俺が聞くと鎌倉さんは若干あわてた様子で


「えっ? あ、いや、その、ほら! 鈴ちゃんに会いに来たらたまたま声が聞こえたからね、たまたまだよ」

「チッ」


 なんとなく舌打ちをしたような声が聞こえたのでそちらを振り返ると一瞬中学生のようにも見える少女がいた。


「あれ? 神田さん。今何か舌打ちするような声聞こえなかっ――」

「してない」


 一瞬で否定された。せめて最後まで言わせてほしい。彼女の名前は神田鈴かんだれい。鎌倉さんの幼馴染で、女子の中で唯一遠慮せずに話せる仲だったりする。一度そのことを本人に言ったら、馬鹿を見る目で舌打ちされたからそれ以来怖くて言っていない。


 神田さんは天然なのか、ときどき俺と鎌倉さんを体育倉庫に閉じ込めたり、音楽室に閉じ込めたりしてくる。体育倉庫で体育着一枚の鎌倉さんと二人きりになった時は、本当に焦ったが俺なんかがクラスのマドンナ鎌倉さんとつりあう要素など一つもないという、つらい現実を自分に見せ続けることで必死に理性を保ち続けていたのは俺の苦い思い出の一ページだったりもする。


「あ、そういえば如月君はステータスどうだった? 私は全ステータス100で鑑定っていうスキルが入ってたんだけど……」


 一瞬ドキリとする。俺のステータスも全部100だがスキルは鑑定Lv3と偽装Lv1という周りと比べておかしなステータスをしている。ここはばれないようにごまかさないとな。


「あ、ああ。俺も全ステータス100だしスキルも同じだ。多分皆同じステータスみたいだな」


 とりあえず「皆同じだからわざわざ見る必要はない」と思わせるように誘導しておく。


「俺も全100に鑑定スキルが入ってるな」

 ラッキー、大地も同じアピールをしてくれた。


「ああそっかー。皆同じみたいだねー」


 ちょっと嫌な汗をかいたが、なんとか誤魔化せたみたいだ。


「それにしても異世界か……いまだに信じられないよ」

 

 鎌倉さんがしんみりとした様子で呟く。


「でもまあ、信じるしかないんじゃないのか? 実際にあの神とかいう奴は、俺たちを椅子に縛り付けたりいろいろやってみせたしな」

 大地が思い出すように言う。


「まあ確かに、あれはまさしく神の力って感じだったもんな。それに……」

 俺は自分の机を掴み全力で窓に叩きつけた。


 ガンッ!


 硬い物がぶつかり合うような音が教室に響いた。


「この通り罅一つ入らないしな、完全に神の仕業っていってもいいんじゃねえの?」


 振り向くと大地達三人だけでなくクラスの全員がこっちを向いていた。まあかなりでかい音出したから当然と言えば当然か。


「おい如月! もし窓ガラスが割れて誰か怪我したらどうするつもりだ!」


 やっぱり馬鹿(二宮)が突っかかってきた。クラス全員が見てた時点で予想はしてたけどな。


「ちゃんと周りに人がいないかの確認くらいはしたぞ」


 ちなみに硝子は内側から割ると、破片が外側に飛び散るから内側にはあんまり飛ばない。少しはこちらにも飛び散ってくるけど、ほとんど飛ばないから被害を受けるのは俺程度だ。


「うるさい! おまえみたいな周りのことを考えないような奴と一緒にサバイバルなんてできるか! 絶対に迷惑をかけるに決まってる!」


 このセリフだけで協調性のなさが分かるってのは一種の才能ともいえるかもしれんな。などと心底どうでもいいことを考えていると、再びスピーカーから男の声が流れた。


『やあお待たせ、転送先をどこにするか決めたかい?』


 一時間ぶりに聞こえる男の声、今度は喋る事もできるが皆静かに聞いている。


「はい、僕たちは草原に転送してほしいということに決まりました」

 浅野がスピーカーに向かって答える。


『なるほどね、了解……と言いたいところなんだけどね、予想外の事が起こって草原に転送できなくなったんだ』


 衝撃の事実を伝える男にクラスはまたざわざわとし始める。

 が、それもすぐに止んだ。身動きが取れない。どうやらまた喋れなくさせられたようだ。


『面倒くさいから一気に説明させてもらうよ。向こうの世界のノスティア王国っていうところがね、今勇者召喚の儀式ってのを行っているんだ。その魔術が今僕が異世界につないだ君たちを運ぶ道に穴をあけてきてね、君たちは急遽草原じゃなくてノスティア王国に行ってもらうことになったよ。ごめんね』


 つまり神の言ってることはこうだ、「本来トリップさせるつもりだったけど、勇者召喚のためにそっちに送らせてもらう」と。こちらとしては草原に落とされるよりは生存率が跳ね上がるから願ってもないチャンスだな。


『理解してない人もいるかもしれないけど行けば分かるからいいよね。君たちを送る準備に入ろうか。あ、この世界に君たちがいた痕跡は跡形もなく消すからそのつもりでね。戸籍や、他の人の記憶とかが全部消えちゃうからそのつもりで。じゃあカウントダウンと行こうか、五・四・三…』


 え? 痕跡が消えるってどういう意味だ? 謎の失踪事件とかにならないってことか。生きた痕跡ってことは俺のHDDの中身(やばいブツ)とかも消してくれるんだろうし、そっちの方がまし……なのか?


 ……消してくれるよな?


 ってちょっと待て、もうカウントダウンかよいくらなんでも早すぎだろまだ心の準備が――


『二、一、〇! 行ってらっしゃい!』


 そんな能天気な声と共に、教室は真っ白な光に包まれた。


しばらくは最低でも一日一話投稿を心掛けさせていただきます。


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