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死とスライム

今回は短めです。キリがいい感じに終わらせようとしいた結果こうなってしまいました。

 俺は崖から落ちるセイイチをただ呆然と見ていた。


 何が起こったのかが分からない。

 俺は魔力切れを起こしながらも気力で走ってくる、セイイチの手を引っ張ってやろうとして手を伸ばした。そしてあいつは俺の手を捕まえようとして……突然地面が消えてあいつが落ちて行った。


 なぜ地面が消えたのか、答えはすぐに分かった。上を見るとキメラが火を吹いた直後のような体勢で天井につかまっていた。おそらくこいつが火を吹いて地面を消し飛ばしたのだろう。


 それだけで分かる、圧倒的な実力差。


 最初に放った攻撃も完全に手加減していた。だからセイイチが止めてもぎりぎりで止める事が出来た。途中で疲労がたまってきたと思っていたのも、全て本気じゃなかったからだ。


 ――これが、キメラの本気。


 ――どう足掻いても越えられない、圧倒的な壁。


 俺はすぐに落ちて行くセイイチに目を向ける。すでに距離は10m近く離れてしまって絶対に助からない。全快の状態のセイイチだったらなんとかなるかもしれないが、あいつは今魔力切れを起こして走るだけで精一杯だ。


 俺は騎士団長。幾度となく戦闘をして来たプロだ。


 だから分かってしまう。もう絶対に助からない事を。


 だから分かってしまう。この状況で取るべき最善の手段を。


 キメラはまだ落ちて行くセイイチを見ている。


 魔物は階層間を移動する事が出来ない。これは絶対のルール。あいつから逃げて、他の勇者を安全に届ける一番の方法。


 俺は落ちて行くセイイチに背を向けてダンジョンの階段を上った。


――結衣SIDE―――


 私は誠一くんに言われて一つ上の層に避難した。誠一くんとダンさん。それと数人の生徒はまだ残っているようだし私も助けにいきたかったが鈴ちゃんに止められた


 鈴ちゃん曰く「行っても足手まといになるだけ。下手したらそのせいで如月くんが死ぬことだってあり得る」との事。余りにも正論だったので私も渋々待機していた。


 しばらくするとダンさんが戻ってきた。

 ダンさんは頭から血を流しており、多少ふらついているがそれでもしっかりと歩いて来た。


 クラスのみんなからは歓声が上がる。この中で一番強いダンさんが帰ってきたおかげで安心しているようだ。しかしダンさんの顔は暗い。


 そこで私は気がついた。クラスのみんなの中で一人だけ戻ってきていない事に。

 その人は私が一番戻ってきて欲しいと願っている人だという事を。


 私は最悪の考えを振り払う。彼はきっと戻ってくるはずだ、あの魔物にとどめを刺して遅れているだけだと。おそらくその予想が外れているであろうことが分かっていても、どうしても考えてしまう。考えなくてはやっていられなかった。


 私がダンさんに尋ねようとした時にはすでに野本くんが話しかけていた。


「ダンさん。誠一は? 誠一はどうしたんですか?」


 いつものようなダラダラとした感じは一切なく、荒い口調でダンさんに問いかけた。

 しかしダンさんはなかなか答えようとはしない。答えに困っているというより答える元気がないと言った感じだ。


「どうしたんですか? 如月くんは……彼はどうしたんですか?」


 いつの間にかダンさんの傍に来ていた鈴ちゃんが問いかける。するとダンさんはゆっくりと口を開いた。


「あいつは……キメラと戦って……死んだ」


 死んだ、という言葉が頭に残る。なんで?……死んだ? 誰が?


 周りがその言葉に驚いてざわついているが私の耳にはそんな事は入ってこなかった。


 ――助けなきゃ。


 きっと誠一くんは生きている。絶対に生きていていつの間にか何事もなかったかのように戻ってきてくれる。だから私は助けないといけない。


「結衣! どこへ行くの!」


 鈴ちゃんが何かを叫んでいるようだが私の頭には入ってこない。そのまま階段を降りようとして――私の意識は途切れた。



――二宮SIDE―――



 俺はなにも考えられなかった。如月が死んだ。俺は如月を攻撃した。

 ……俺が殺したのか?


 俺の頭の中に人殺しという言葉がぐるぐると回る。


 俺はたぶんキメラのせいでおかしくなっていた。そして如月はその事を知っていた。だから魔法を俺達に使った。それは分かっている。


 しかし自分がいなかったら、如月は死ぬ事が無かったのでは?


 俺はどうしてもその事を考えてしまう。俺が殺した。人を殺した。それだけで頭の中がいっぱいだった。


 ――でも、それでいいんじゃないのか?


 俺の頭の中で醜い声が聞こえた。


(お前はあいつを憎んでいた。そいつが死んだならいいんじゃないのか?)


 そんな声を振り払う。俺は確かに如月の事を嫉妬して、恨んでいた。名前呼びをしていた頃には殺意すら湧いた。

 でも、それでも実際に死んでほしいなんて思ってなかった。思う訳がない。当たり前だ。


 それでも俺の頭の中では何かがささやきかけてくる。俺は頭を抱えて蹲る。自分の醜い声から逃れるために地面を殴る。


 何も知らない生徒達はクラスメイトの一人が死んだ事を悔やんでいる。浅野も随分と悔しそうだ。あいつは結局、あのとき何にも出来なかったから余計に悔しいのだろう。


「……とにかく、このままではしょうがない。一度戻って報告をするぞ」


 ダンが暗いまま声をかける。俺は何も考えないようにして生徒達についていった。



**********



 勇者達が暗い雰囲気で王城に帰還した頃、一人だけ誠一の生存を確信している者がいた。


 「それ」は誠一が住んでいた小屋の中で主人の帰りを待っている最中にある異変を感じ取った。


 本来使役スキルは、使役された魔物が主人とある程度の意思疎通をできるだけのものだった。


 しかし「それ」はしっかりと異常を感じ取った。それが自分の主人の命の危機であると本能的に感じ取った「それ」は、小屋の中を動き回り主人が訓練の合間に採集していた薬草類を拾い、主人が作ってくれた専用のカバンにしまった。


 使役スキルは主人が死ぬと自然と効果を失い野生に帰る。もちろん幼い頃から育てられた魔物の場合はその限りではないが、それでも使役スキルの効力は失われる。


 だからこそ「それ」は分かっていた。自分の敬愛する主人が生きている事を。


 準備を終えた「それ」は小屋の扉を体で押しあけ外に出る。


 その目に飛び込んできたのは鬱蒼とした森の中にポツンと立っている小屋。オーガとの戦闘の後が生々しく残っている巨大な岩。


 スライムは再び主人を救うために旅に出たのだった。


 取りあえずこれで王城編? は終了です。今はまだ付けませんがそのうち章を付けて管理するかも。


 次の話までに一週間ほど間が空きます。その間もサボっているわけではないのでご期待ください。



---おまけ---


 吾輩はスライムである。名前はまだない。


 私はオーガを倒した主人に憧れて一緒に訓練をするようになった。


 最初は主人と一緒に運動をするくらいだったが時々主人の気が向いたときに『ぱわーれべりんぐ』なる物をしてくれたおかげで私はより一層強く、そして美しくなった。

 今では一対一ならオークとも互角に戦える。


 ある日主人がダンジョンに行くと言った。


 私も一緒に行きたかったが主人に他の勇者もいるのでダメだと言われたため我慢をする。


 主人が行った後は日課のとれーにんぐで家の近くに居る魔物を倒して小屋の中で素振りをする。主人に教えてもらった『しゃどーぼくしんぐ』という技らしい。


 私は主人の命の危機に気付くまで運動を続けていた。

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