休養と抱き枕
今回書いている途中で寝落ちしたんでところどころおかしい所があるかもしれません。一応点検はしたんですがね。
「ところで今は何時なんですか?」
「朝の8時だ」
俺の質問にダンが答える。皆は朝食を食べ終わったころだろうか。さすがに今日ばかりは訓練に参加できそうにない。ゆっくり休もう。
「まあお前は今日明日くらいは訓練を休んでしっかりと休むこった。それとこいつを預かってるから返そう」
そう言うとダンはポケットからかなり大きな石と何やら銀色の短剣のようなものを出した。
「あのオーガのドロップ品だ。倒したのはお前だからこれはお前に所有権があるだろう」
石はどうせ魔石なんだろうがこっちの短剣は何だ? 俺はいつものように鑑定を発動させる。
[オーガの魔石 亜種(9)
オーガの亜種からやや低確率でドロップする魔石が合成されたもの。
魔力を込めることができるが一定以上の魔力を注ぐと壊れる(0/100)]
[オーガソード 特級
レベル50以上のソードオーガから超低確率でドロップする短剣。その切れ味はすさまじく鉄も簡単に斬り裂く]
「おぉう……」
何やらすごい物を手に入れたようだ。この魔石もオークの時の五倍の魔力を込められるようだしあのふざけた強さに見合っていると考えていいのだろうか?
「じゃあ俺は他の奴らの訓練があるからもう行くぞ。なんかあったらオルトを呼べ、なんとかしてくれるはずだ」
どうやらダンはクラスメイト達の訓練に向かうようだ。ダンも病みあがりなんだろうがその辺はあの筋肉の不思議パワーかなんかで大丈夫なんだろう。元々俺ほどにダメージを食らってないみたいだしな。
ダンが医務室のドアを閉めると急に部屋の中が静かになったような気がする。少なくとも俺の体感温度は確実に下がった。
「そう言えばレベルって上がったのか? スキルのせいで経験値が少ないとはいえあのレベルの魔物を倒したら少しは恩恵があるはずだ」
急に気になってステータスを表示させる。
【名前】 セイイチ・キサラギ 17歳
【性別】男
【種族】人族
【レベル】42
【生命力】500
【魔力】 480
【筋力】 570
【防御】590
【持久力】430
【敏捷】 340
【魔攻撃】370
【魔防御】240
【運】300
◆スキル
[鑑定lv5]
[偽装lv3]
[剣術lv3]
[水魔法lv3]
[魔力操作lv3]
[土魔法lv3]
[無魔法lv2]
[使役lv1]
[剛腕lv1]
[威圧lv1]
◆エクストラスキル
[強欲の芽レベル1]
◆称号
[異世界を渡し者]
……これはまたずいぶん変わってるな。
まずレベル。これはいい、おそらくスライムよりも経験値が多い結果だろう。
次にステータス。レベルの上昇に伴いステータスも増加している。防御がかなり高くなっているのはオーガに殴られまくったせいだろうか? まあほとんど使ってない魔防御が低くなってるのはしょうがないしこんなものだろう。
次にスキルだ。こちらも途中までは問題ない。魔法のスキルが上がったのも俺が魔法を連射したからだろうし魔力操作も同じだ。そこまではいい、そこから先は俺の身に覚えのないスキルだ。
俺は鑑定を発動させる。
[剛腕lv1] 発動すると一時的に腕の力が強化される。
[威圧lv1] 相手をひるませることができる。効果はスキルのレベルとステータスに依存する。
別にこんなスキルを得た覚えがないのだが……どういうことだ?
特に思い当たることもないのでひとまず飛ばす。次はエクストラスキルだ。
『強欲の芽レベル1』、これはおそらく『強欲の種』の上位スキル? と言ったところだろうか。強欲の種の効果から察するに俺から経験値を吸って成長したのだろう。取りあえず鑑定を使って調べてみる。
[強欲の芽レベル1] 所有者が得られる経験値が二倍になる。また、所有者の経験値の半分を吸収する。
更に倒した相手のスキルのうち、自身が所有していないものを取得することができる。ただし、レベルがあるスキルは全てlv1となる。
おお! なんかチートっぽい!
このレベルがあるスキルはlv1になるってのはつまりレベルの無いスキルもあるんだろう。俺はまだ見たことないけどな。
ためしに剛腕を使ってみる。少しだけ腕の痛みが和らいだ気がする。骨が折れているせいかよくわからないのが残念だ。
次に威圧、これはちょっと今は使えない。ほら、スライムちゃんが犠牲になるしね? 元気になったらゴブリンにでも使ってみるか。
「さすがにずっとベッドだとすることないな……魔法の練習でもするか?」
とはいってもこんな所で火魔法を使うほど俺は馬鹿じゃない。今回使おうとしているのはズバリ、回復魔法だ。
回復魔法、その名の通りの魔法だ。傷を治す、病気を治す、麻痺や毒の状態異常も直せる。ランクが高ければ部位欠損も直せるし死にかけの人間も元通りにする事が出来る。
一応呪文は覚えている。今までなかなか使う機会がなかったから後回しにしていたのだ。
「我が魔力よ 神の波動を借りて 汝の傷を癒せ 『ヒール』」
……何も起こらない。ステータスも確認してみたが魔力が減ってる様子も見られない。
おそらくイメージがしっかりとできていなかったんだろう。詠唱があるからと言ってイメージなしで魔法を使うことはできないようだ。
「骨折が治るイメージか……下手にやると骨が変な方向にくっついたりしないよな?」
俺も詳しいわけではないが確か骨折した時にできた骨のかけらや内出血をしてたまって血液が取り除かれた後新しい骨が形成されていくんだったか?
それでその後に柔らかい骨が形成されてだんだんと骨の本来の機能がそなわて行くとか。
しかし正直この世界にそんな知識があるとは思えない。この世界は生活レベルでは異世界おなじみの中世ヨーロッパレベルだ。魔法があるからかいろいろな所でそれ以上の生活水準なところもあるが大体はその程度、更に魔法に頼り過ぎているせいで科学技術はもっと後退しているようだ。
ならどうやって治すのだろうか? 魔力を使って回復を促進させるのじゃなくて魔力で骨を作りだすとかか?
念のため無魔法を使って腕を固定しておく
「魔力よ 我が腕となり支えよ 『ストッパー』」
俺が唱えると右腕が固定される。今のが無魔法のストッパー。つまりは物を固定する魔法だ。これで腕を固定すると今度は回復魔法を唱える。
「神の波動を借りて 我の骨を創りだせ 『ヒール』」
魔力を練る部分は省略したうえでいろいろとアレンジしてみた。
今度は成功したようで骨がくっついていくのを感じた。
“【回復魔法】スキルを獲得しました”
念のために腕を振ったり『魔力操作』を使って腕に魔力を流してみるが異常は見当たらない。どうやら成功したようだ。
俺は何回かに分けて全身に回復魔法をかける。何回かオルトさんの使っていたハイヒールを見よう見まねでやってみたがそれも成功したようで今では内臓から皮膚の擦り傷まですべて治った。
結果、回復魔法についていくつかわかった事がある。
一つは回復の仕方についてだ。この回復魔法は細胞分裂を促して傷の治りを早くするようなものではなく魔力が傷を治してくれるようだ。分かりやすく言うと指がちぎれて指を治すとしたら指があったところに魔力で作られた指ができる感じだ。
魔力で作ったからだとか大丈夫なのかとも思ったがどうやら遺伝子情報を読み取って再生するから回復魔法を使った後は自分の体の一部になるようだ。正直なところ不思議が多くて俺にもよくわからない。
その後ベッドから抜け出して飛び跳ねてるところをオルトに見つかって怒られたり体が治っているのを驚かれたり今日は安静にしていろと言われたりして一日を過ごした。いつも訓練をやっているのに今日はほとんどしなかったせいか調子が出ないな。
その後夕食の時間になってオルトさんから許可が下りたので食堂に向かうと意外な人物に出くわした。
「あらこんばんは。セイイチ・キサラギさん」
「ご丁寧にどうも。王女様」
俺を見るなりいきなり突っかかってくるマリー。一体何がしたいんだこいつは。
「それはそうと何かご用でしょうか?」
「いえ、あなたの住んでいる森にソードオーガが出てきたと聞きまして。それであなたは勝手に騎士長まで連れだしたとか」
どうやら今回の事は結構大事なようで王女の耳にも届いているらしい。おそらくお偉いさんには伝わっているのだろう。
「まあ貴方もしぶとく生き残れたようでなによりです」
「ええ、さすがはこの国の騎士ですね、ソードオーガ程度しか討ち漏らししない程の手際の良さには頭が下がります」
売り言葉に買い言葉って奴だろうか。向こうから突っかかってきたからついつい乗っかってしまう。
王女もめちゃくちゃにらんできているのでできるだけ早く立ち去った。
その後夕飯を食べてスライムを迎えに医務室に行くとオルトさんが話しかけてきた。
「セイイチさん、今日はあの周辺で調査が入るみたいですしどうせならここに泊まりませんか?」
「調査?」
「はい、今回のソードオーガの事件を受けて騎士団があそこの周辺にダンジョンが発生していないか調査するそうです」
つまりあれだ、今回のソードオーガは近くにダンジョンができた影響で現れたのではないかってことか。ダンジョンって自然発生するもんなんだな。
まあ正直俺もあんな汚い所で寝るよりふかふかのベッドで寝た方がうれしいのでお言葉に甘えて泊らせてもらった。
ベッドに入るとスライムが一緒に入りたそうにこちらを見てきた。いや眼はないけど。
「おまえも一緒に入るか?」
俺がきくとスライムは嬉しそうにベッドの中に潜り込んできた。スライムの体は思ったよりすべすべしていてひんやりしているので気持ちがいい。
俺はスライムの体を抱きながらすぐに眠りについてしまった。
誤解がないように補足しておくと「強欲の芽レベル1」までが名前です。ニドラン♂的な感じで「レベル1」までがスキルの名前なのでこれで問題ありません。
---おまけ---
吾輩はスライムである。名前はまだない。
私は主人の帰りが遅い事が気になってドアの隙間からこっそりと外に出て主人を探し出した。
するとなんと主人がオーガにやられそうになっていたのだ!
しかし私が出て行ってもせいぜい踏みつぶされるのが落ち、主人の盾になる事も出来ない。
そう思った私は陰から主人を見守っていた。
しかし状況は悪くなる一方。オーガに殴られ蹴られボロボロになった主人を見ていられない。
オーガは主人にとどめを刺そうと爪を振り上げた。
私はついに我慢が出来ず主人を守ろうとしたその時だった!
主人はいきなりオーガを圧倒しそのまま剣で目をついて倒してしまったのだ!
さすがは私の主人。あんな大きな魔物でも倒してしまった。
しかし主人はそのまま倒れてしまった。私は主人を助けようとしたが私ひとりではとても主人を運ぶ事が出来ない。
どうしようかと辺りを見回した私は主人と同じように倒れている人を発見した。
その人は怪我が主人ほどひどくないようなのでその人を起こして主人をお城まで運んでもらった。
その後目を覚ました主人は怪我がひどいので訓練ができないと言って一日中私のそばにいてくれた。
その夜主人と私はベッドの上で熱い夜を過ごした……




