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オーガと逃走

4/20 オーガの大きさを変更しました。

 魔法の訓練が終わると夕飯に向かい図書館に向かう。最近は勇者伝説の本や魔法の本などを適当に漁っていたが今回は従魔について調べる。


 本の内容をまとめるとこうだ。


 基本的にはそこらへんにいる魔物の中で自分と相性がいい相手を見つけて使役スキルを使い従魔にする。相性が悪かったり相手に強さに対して自分の使役スキルが低すぎると使役は失敗する。逆にスキルのレベルが圧倒的に高いと相性が悪い相手でも無理やり従魔にできるらしい。


 使役スキルは魔法使い向けのスキルで詠唱をしている間従魔に自分の身を守らせたり魔法が使える魔物だったら魔法の補助をさせたりしていてソロの魔法使いは大体このスキルを持っているらしい。


 更に従魔が魔物を倒すと主人にも経験値が入るらしい。俺の場合手に入る経験値が少なくなってしまうので朗報だろう。


「そろそろ帰らないと明日がきついし帰るか、どうせなら光魔法の実験でもしながら帰ろう」


 明日も早いのでそろそろ帰る。早寝早起きは健康の基本だな。


 帰る前に訓練場によって剣を借りに行くとダンが素振りをしていた。


「こんばんはダンさん。剣を借りに来ました」

「おう、セイイチか。剣ならそこにあるから持ってけ。ついでにこのまま朝まで一緒に訓練しないか?」


 俺は訓練のお誘いを丁重にお断りすると剣を借りて家に戻る。て言うかあのおっさん徹夜で剣振り続けてんのかよ。あんな化け物が汗だくで剣振ってるのは本当に朝まで素振りをしているからなんだろう。


 俺がボロ屋に戻ると家の周りに魔物が集まっているのが見えた。最初はいつも通りゴブリンだろうと思い剣をふって駆け出したのだがある程度近づくと何かがおかしい事に気付いた。


「ゴブリンにしてはやけにでかいな……オークか? でもなんで?」


 小屋の周りにいるのはオーク。それも5体もいる。確かこの辺にオークが出るのは一年に一度あるかないかじゃなかったのか? めちゃくちゃいるんだけど?


 まあそんな事を言っていてもしょうがないので俺は訓練用の剣をさっそく構えるとオークの群れに突撃した。


「グエッ!グガガガ!」


 俺が接近するとオークの一匹が俺に棍棒を振りおろしてきたが俺は難なく避けるとオークの目を狙って突きを放つ。鉄製なので普通に斬っても大丈夫だと思うがこれは訓練用の刃を潰した剣だ。確実性を上げるために目を突くと脳まで貫通したようでオークは一撃で倒れた。


 オークが光の粒子になっていくのを視界の端でとらえながら次のオークの頭に向かって剣を叩き付ける。ダメージを受けて声を上げてるところに顔面蹴りを食らわすと吹っ飛んでいく。


 そのまま残りのオークを片づけてドロップアイテムの回収をした。オーク肉と魔石がそれぞれ5個ずつだ。


「しかしなんでこんなにオークがいるんだ? 一年に一度しか出てこないような魔物が二日連続、しかも全部で6体も出てくるとは……」


 一応王城の外とはいえここは王国の外壁のすぐそばだ。警備が急に緩くなったとは考えにくい。ではなんで?


  Q.なぜオークがこの辺りに多く出るようになったのか。

A.可能性その一 オークが俺達に気付いてよってきた。

可能性その二 警備が緩くなった

可能性その三 ここ周辺の生態系が何らかの原因で崩れた。


 まず可能性二はないだろう。となると可能性一、または三だ。一の場合はともかく三の場合について考える。


 ここ周辺の森の生態系が何らかの形で崩れた。よく考えてみるとこの可能性は低くないだろう。


 もしかするといくら雑魚だとはいえ小屋の周辺に来る魔物が多い気がする。最初の日はゴブリン一匹だったのだがそれ以降はレベル90のスライムや5体10体の雑魚が毎晩のように押し寄せてくる。


 普通魔物カースト最底辺のスライムはlv90になんてなれない。それこそ野犬に遭遇しただけで死亡フラグが建ってしまうレベルの魔物が他の魔物を倒してレベルを上げるなんてほとんど不可能に近い。できたとしてもせいぜい共食いをしてレベルを2や3辺りまで上げるのが精いっぱいだろう。


 しかし生態系が崩れた結果スライムがゴブリン等自分より上の魔物を偶然倒してしまうという現象が起きたとしたら? レベルが上がればスライムでも自力でゴブリンくらいなら倒す事は出来るようになるだろう。


 だとしたら何で生態系が崩れたのだろう。


  Q.生態系が崩れる要因と言えば?

  A.原因その一 森林伐採や環境汚染など人間の問題。

 原因その二 人為的または不幸な事故で本来ここにいるはずがない魔物がこの森に入り込んだ。


 まず原因その一は無いと思う。この世界は科学が未発達のファンタジー世界だ。森林伐採ならともかく環境汚染や温暖化なんてことは起こらないはずだ。むしろこの世界で起こっていたらがっかりだ。


 となると原因その二だろうか? 人為的なものだとしたら王女の嫌がらせか俺の動きに感づいた国王……ガウルだっけ? が俺を不幸な事故で(・・・・・・)死んでしまうように誘導したかと言ったところか。


 事故だとしたら近くにダンジョンが形成されたとかその辺りだろう。ダンジョンが自然発生するのかは知らないが小説だと大体自然発生するし可能性はゼロじゃない。


 その後もいろいろと考えてみたが結局よくわからなかったので小屋に入ってスライムと一緒に寝ようと思ったその時だった。


 俺の近くにある木が飛んできた(・・・・・)


「なっ!?」


 俺はぎりぎりのところで身をかがめて避ける。それと同時に剣を構え直して飛んできた方向を観察する。


 すると出てきたのはオークよりも大きく5mは軽く超えるであろう巨体に頭から生えた立派な角。オーガだった。


 しかし何か俺の知っているオーガとは違う。俺が図鑑で見たオーガは確か赤色だったはずだ。しかし今俺の前に出てきたオーガは黒い。しかも異様に長い爪を持っている。あきらかにやばい雰囲気しかしない。もしかするとこいつが生態系を壊していた犯人なのかもしれないな。俺はすぐに鑑定を発動させる。


[ソードオーガ lv103

【生命力】1900/2000

【魔力】50/50]


 結果を見た瞬間俺は全力で逃げ出した。

 俺はソードオーガが何なのかは全く知らない。それでも本能が全力で警鐘を鳴らしている。

遭遇した時は普通のオーガより強そうだという印象しか持っていなかった。しかしこれは無理だ。スライムなどとは比べ物にならないくらい強い。


 とにかく今は全力で逃げる。それで時間を稼いだらダンに助けを求めよう。おそらくダンならこいつを倒せるだろう。何よりこいつの相手ができそうなのを俺はダンしか知らない。まずは全力で逃げて王城に逃げる時間を稼がなくては。


 そう思い走る俺。しかし現実は俺が思うほど優しくなかった。


「……えっ?」


 走っている俺の真横に岩が現れた。それはもう唐突に。全く反応できなかった。

 それだけならまだいい。問題はその岩にあった。


「この岩って……まさか!?」


 その岩は俺の住んでいるボロ屋のそばにある直径十メートルは軽くある岩にそっくりだったのだ。俺は時々外に出るとその岩の上に座って日向ぼっこをしたりしていた。


 その岩が何で30m以上離れた俺の真横にあるのか? その疑問は後ろを見た瞬間に解決した。


 俺の後ろにはオーガが腕を振り切った体勢で岩があった場所にいた。十メートルもある岩を片手で投げたのだ。しかも俺が全く反応できないようなスピードで。


 俺はその瞬間死を意識した。今の攻撃が威嚇なのかそれともたまたま外したのか。そんなものは問題ではない。

 どっちにしてもあの化け物に狙われたら確実に死ぬ。逃げることすらできずに殺される。


 俺は余りのショックに思わず立ち止まってしまった。その瞬間オークが超スピードで接近してくる。


 目にもとまらない速さとは言わないが時速60kmは出ている。逃げる事は無理だと察した俺は剣で防御の姿勢を取る。


 そして二秒もかからずに俺に追いついたオーガは俺の首を狙って爪を振る。明らかに敵に向けた攻撃ではない。完全に俺を獲物だという目で放った一撃。

 しかしそれでもダンと模擬戦をした時と同じくらいの速さで振られる。俺はぎりぎりのところで剣を合わせて受け流す。


隙を見て斬りかかってみるが全く効いていないようでオーガの硬い皮膚に弾かれる。


 距離を取って魔法も放ってみるが全て弾かれる。完全に手詰まりだ。


 どうする、考えろ。どうやってここを切り抜ける? 別に倒す必要はない。逃げ切れればいい。最悪大けがを負ってもオルトさんに治してもらえばいい。


 あいつはなんで俺を狙った? 腹が減っているからか? ならばどうすれば切り抜けられる? 


 俺は服の中にあったオーク肉を投げつけた。オーガは爪で肉を真っ二つにするとそれを食らい始めた。だがそれも一瞬で食べ終わりこちらに目を向けている。


 今度は肉を二つオーガの後ろをめがけて投げる。するとオーガの目は肉を追って後ろ側を向きゆっくりと歩き始めた。どうやらちょこまかと抵抗する俺よりも道端にころがっているオーク肉の方がオーガは気に入ったようだ。


 残りの肉も遠くの方に投げ込むと俺は全力で王城へ向かって走る。今度こそオーガから逃げ切れたようでオーガは追ってこない。


 しかしいつ帰ってくるかも分からないのでとにかく全力で訓練場に向けて走る。ダンがあの化け物に勝てるかどうかは分からない。だが今俺が頼れるのはダンだけだろう。


 訓練場に着いた俺はダンに向かって叫ぶ。


「ダンさん! 大変です!」


 すると素振りをしていたダンは動きを止めてこちらを向く。


「セイイチじゃないか。どうしたんだ? 魔物にでも襲われたか?」

「はい、オーガが、確か……ソードオーガ? ってやつが出て来ました」


 俺がダンに伝えるとダンは顔色を変えた。


「ソードオーガ!? お前大丈夫だったのか!?」

「は、はい。ぎりぎりのところで逃げてきました」


 俺が言うとダンは俺にやさしく肩を置いた。


「安心しろ。お前がここに来たってことはまだ倒せてないんだろう? 俺が行って倒してやる。案内してくれ」

「でもダンさん、剣は……」

「安心しろ。訓練中でも剣は近くに置いてある。おいお前ら! この剣を片づけておいてくれ。俺は用事が出来た!」


 ダンが近くで訓練をしていた兵士たちに声をかけるとダンは訓練場のそばに置いてあった剣を手に取った。


主人公って運300も虚しくいろいろ巻き込まれてますよね。


---おまけ---


吾輩はスライムである。名前はまだない。


 私は主人の手によって生み出された。主人は生まれたばかりの私に待機命令を出してどこかに行ってしまった。

 私は寂しかったが主人の命令を忠実に守るいいスライムなのだ。それに帰ってきた主人は私にオーク肉を与えてくれたので私は満足だ。


 次の日、主人は朝から私に待機命令を出してどこかに行ってしまった。私は寂しかったが主人の命令を守るいいスライムであるために待機し続けた。

 せっかくなのでこの埃だらけの家を主人が帰ってくるまでに綺麗にしよう。


 家を綺麗にした後は体を伸ばして運動をしながら主人の帰りを待っていた。


 夜になると家の周りをオークが取り囲んで来た。私は怖かったが主人の命令を守るために必死で家の中にいた。


 しばらくすると帰ってきた主人が簡単にオークたちを倒してしまった。さすがは私の主人。今日のオーク肉も楽しみだ。


 すると更に魔物が出てきて主人は小屋から離れたのか気配を感じ取れなくなってしまった。

 きっと主人はこの小屋と私を巻き込まないように気遣ってくれたのだろう。さすがは私の主人だ。


 出てきた魔物がなんなのかわから無いがきっと主人なら簡単に倒して肉を持ってきてくれるはずなのだ!

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