事故と模擬戦
体調が……それでも俺は書き続ける。なぜならそこに物語があるからだ! 作るの俺だけど
次の朝、俺はいつもの時間に起きていつものようにダンと訓練をしていつものように風呂に入りいつものように食堂へ向かった。
食堂に着いた俺は丁度同じ時間に結衣が来たので挨拶をしておいた。
「おはよう鎌倉さん。眠そうだね」
「おはよう誠一くん。昨晩いろいろあってね……それよりも結衣って呼んでよ!」
なんか微妙に話をそらされた気がしなくもないのだが……
「いや、だってなんか他のやつらの前だと呼びづらいじゃん。何て言うか……さ?」
大地には結衣って言ったけどな。
「そんなの私は気にしないから大丈夫! ほら、呼んでくれるまで離してあげないっ!」
「おう!?」
急に腕に何やら柔らかい感触を感じた。結衣が俺の腕に抱きついてきたのだ。何してんのこの子!? て言うかそもそもこの人こんな積極的な人だっけ? あんまりこういう事はしてこないような人だと思ってたんだけど……好きな人ならともかく俺なんかにこんな事していいのか?
「ちょ、とにかく離してよ鎌倉さん!? こっちの方がいろいろとまずいからね!?」
「じゃあ結衣って呼んで? ほら、結・衣!」
……あれ? こんなキャラだったっけこの娘? なんかおかしい気がする。ちなみに俺の腕はいまだに柔らかい物体にホールドされている。むしろこのまま離してもらわないでもいいのではないだろうか? いや、それはないな。とにかくこの人を落ち着かせなければ
「え、えっと……結衣?」
「よろしい」
俺が言うと結衣は腕を放してそのまま食事に行ってしまった。本当にどうしたんだろうあの娘。ああ、腕の感触が消えてしまった。俺は巨乳が嫌いなわけではない。ただ貧乳の方が好きなだけだ。
大きい おっぱい
小さい おっぱい
そんなの ひとの かって
ほんとうに つよい トレーナーなら
すきな おっぱいで
かてるように がんばるべき
ハッ!……つい暴走してしまった。そもそも勝つって何にだよ? 欲望? いや、欲望に完敗した結果がこれか。
荒ぶる感情を抑えつつ席に着こうとすると急に胸ぐらを掴まれて口を押さえられると人気のない所に引っ張られた。何この神技? 暗殺者か何か?
俺が犯人を見るとなんと神田さんがいた。え? なんで?
「あの、神田さん? 一体何――ぐぇ」
俺が聞こうとすると首を腕で押さえ付けられた。本当に何してんのこの人?
「今から聞く質問に正直に答えなさい。あなたは昨日の夜一体なぜ野本くんの部屋に行ったの?」
眼鏡の奥から物凄い目力で睨みつけてくる神田さん。え? 俺なんかした? 何で大地が出てくんの? もしかしてこの人大地の彼女?
「え、いきなりなんで……俺はただあいつの所に話をしに行っただけで……」
何か浮気がばれたお父さんみたいになってしまった。俺何もやましいことしてないよ?嘘は付いてるけど。
俺がそう答えると神田さんは舌打ちをして俺を解放してくれた。何あの人めっちゃ怖いんだけど? もしかして元ヤンだったりするの? 一週間前まで俺と同じ高校二年生だし結衣の幼馴染と言っていたからそんな事はないと思うけど……
その後大地にもいろいろと質問をされ解放された頃には訓練の時間が近づいていたため今日は図書館に向かうことなく訓練に行く事になった。まったく、何なんだ本当に。
「よし、今日からは模擬戦を中心にやっていく。素振りの時よりも実戦的な技術をしていくぞ」
ダンが皆に向かって言う。別にまだ実際に魔物と戦う訳ではないのだろう。なんかやけにプログラムが遅い気もするが……何でだ?
まあどうせ考えてもわからなそうなので指示に従うんだがな。
「じゃあまずは軽く素振りをしたらペアを組んで打ち合え。やり方は今見せるから見とけ、おいセイイチ! 出番だ!」
「……はい?」
今なんて? やり方を見せる? つまり戦えと?
「どうした? 早く来い」
ダンはもうやる気満々のようだ。勝てる気がしないのだがどうしろと。
「どうした如月、早くいけよ。それとも怖気づいたか?」
二宮が俺を馬鹿にしながらせかしてくる。いや普通怖気づくだろ。おまえらはあの筋肉ダルマの素振りを見たことがねえからそんなことが言えるんだよ。
そんな事をここで言ってもどうせ理解はされないので素直にダンの下に歩いていく。クラスメイト達がめっちゃ見てくる。何なんだこいつら、いやお手本なんだから見るのは普通か。
「じゃあ簡単に手順だけ説明するぞ。向かいあったらお互いのペースで合図をして打ち始める。実際にやるから見てろ」
ダンが両手で木剣を俺の方にかまえる。マジでやんの?
仕方ないので俺も木剣を構えて向かいあう。
ちなみに今は二人とも心臓などの急所を守る簡単な胸当てしかつけていない。木剣とはいえ当たったら普通に痛いし下手したら骨が折れるかもしれない。しかもダンの図体がでかいせいで余計に威圧感が出ている。正直怖い。
「では行くぞ……フッ!」
ダンが物凄い勢いで踏み込んで剣を振ってくる。おれはぎりぎりで反応して剣で防ぐ。するとすぐにダンから蹴りが飛んできた。ちょっ、蹴りがありなんて聞いてねえよ。
腕で蹴りを受け流した俺はお返しとばかりに剣をダンの胴体へ叩き込むが難なくかわされて腕で剣をたたき落とされる。
一度距離を取ろうとしたところを首に木剣を当てられて試合終了だ。
どうやらダンは全く本気ではなかったようで涼しい顔をして立っている。いや、やっぱり顔は暑苦しいな、それはいつもだけど。
「……とまあ、こんな感じだな。取りあえず二人一組で同じように模擬戦をしておけ。時間になったら終了だ」
そう言うとダンは訓練場の岩に座ってこちらを見るだけになった。
二人一組……余りいい思い出があるとは言えないな。尤もほとんどは大地と組んでたから問題はないのだが。
「よう誠一。さっきの凄かったじゃねえか。ちょっと俺と組んで戦ってみようぜ?」
大地が誘ってきてくれたのでありがたく組むことにする。凄かったと言っても完敗だったんだけどな。むしろ試合と呼べるほどのものじゃなかった。
「ふん、あの程度で調子に乗るなよ如月。あのくらいなら俺でもできる、まあ調子に乗っても痛い目に逢うのはお前だから俺は一向に構わんがな」
大地と模擬戦をしようと思っていると横から邪魔が入った。もしかすると俺の周りより高いステータスと剣術スキルのおかげで俺の方も結構いい動きをしていたんだろうか? ダンが強すぎて実感がわかない。
その後は時間になるまで大地と打ち合い続けた(全て俺の勝ちだったが)。するとダンから声がかかり、
「よし、今日の訓練はここまで。今日からは魔法の授業が入るから剣の訓練が多少短くなるぞ」
そう言うとダンはどこかへ行ってしまった。多少というより午後にあった訓練が全部無くなっているんだが。
どうやら昼飯を食べたら図書館に行くほどに時間はないようなのでそのまま魔法の訓練がある部屋まで移動する。
魔法の訓練か。まだ魔法なんて三日しか使ったことないし独学なので人から教わるというのはやはり楽しみだ。
風邪気味なのでできるだけ更新ペースを落とさないように頑張りますがもしかすると更新が遅れる事があるかもしれません。




