表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/128

ロードと肉

 最近朝起きられなくなって辛い、毎日幼馴染の美少女に起こされたいものです。まあ早く寝ろよという話なのですが。

「それにしても、厄介なことになったな」


 ギルドを後にして宿に向かう途中、ジョズが呟く。


「いまいちわからないんだが、そんなにオークロードって厄介なのか?」


 流石にSS-ランクをかき集めるような事態がそうホイホイと起こるとは考え辛いので、有名な逸話でも残っているのだろうか。


「まあ俺が生まれる前の話だが、30年ほど前にハーメルンの所有している鉱山かなんかでオークロードが発生したって言う話は有名だな。魔鉄鉱が枯れてからそのまま放置されていたらしいが、そこにオークが住み着いたとかで、そこから上位種が発生していったらしい」


 ハーメルンと言えば俺が火竜に理不尽な理由で襲われた、龍神の山脈があったところだ。オークだったり竜だったり色んな敵に襲われてるな。


「魔鉄鉱が産出される程度には魔力の濃い土地だったから魔物が育ちやすかったのと、完全に捨てられた鉱山だったから発見が遅れたのもあって、大混乱が起きた。俺が生まれる前の話だけど、街に魔物が押し寄せるまでオークロードの存在に気づかず、最終的に当時SS冒険者だったドレッド――鍛冶屋で会った奴だな――巣に単騎突撃して討伐したらしい」


 ちなみにその時の功績でドレッドはSS+に昇格したらしい。その時のオークロードは特に規模の大きいものだが、小さな規模でもSS-ランク冒険者が二人は必要と言われている。


「ギルドマスターが言ってたように、今まで別件とされていたオークの群れとの関連性があるのだとすれば、規模は相当大きくなっているだろう。ダンジョンの大きさ次第だが、下手するとハーメルンのときに匹敵する規模になるかもしれないな」


 ハーメルンにオークロードが発生した時は、万を越えるオークの軍勢に大量の上位種が一斉に街に向かって攻め込んできたと言う。片っ端から集めて来た冒険者や警備隊、ハーメルンの開発した魔導兵器を出して防衛を行ったが、それでも押し切られそうになったらしい。幸い、ドレッドの活躍に寄って街への被害は最小限に抑えられたが、ドレッドが居なければ国に壊滅的な被害がもたらされていたと言われている。


「仮にハーメルンの時と同じ規模だったとして、今の戦力で戦えるのか?」


 今この街にいるのはSS-冒険者が五人。規模が小さければ十分制圧できるだろうが、SSランク――それもSS+ランクにも近い実力を持っていた――冒険者一人と比べると圧倒的に戦力が足りない。


「うーん……あの時は攻められてからの対応だったから状況は違うし、ドレッドも結構あっさりと倒していたみたいだからなんとも言えないが、少なくとも楽は出来ないと思うぞ」


 俺の質問にジョズはそう答える。龍神の火山のときにように大量の雑魚を相手にするだけならともかく、オークロード本体やその取り巻きの上位種はどのくらい強いのだろうか。


 ジョズに訪ねてみると、実際に戦ったことが無いから正確なことは分からないが、と前置きをして説明を始めた。


「オークロードは上位竜(グレータードラゴン)に匹敵するとまで言われているから、そいつの相手だけでSS-ランクが冒険者一人必要だろうな。ロードは複数のオークナイトっていう魔物を取り巻きに持っている。そいつらは一体一体の強さもさることながら、そいつらを指揮するオークジェネラルってのがいて、下手な騎士団よりも統率が取れていると言われている。強さは巣の規模に比例するらしいけど、あんまり情報が無いからよくわからん。突出して危険なのはそいつらだけだが、それ以外にも身体能力や魔力が強化された上位種がいたり、オークカーネルやオークルテナントとかいうロードのいる巣にしか出てこない特有の個体が指揮をとる事があるからそいつらは警戒する必要があるな」


 俺の記憶が正しければ、カーネルとかジェネラルとかって軍隊の階級だよな。やっぱり王がいると軍隊が形成されたりするのだろうか。


 ……念のため、開発した新技を使えるようにしておくか。それと、もう一つの切り札も準備しないとな……


 宿に戻り夕食を撮ってから部屋に戻ると、ベルが迎えに来てくれた。俺はベルにも飯を上げつつ、オークロードの討伐をどうするかを考える。


「そう言えば、ベルも俺たちのパーティーじゃナンバー2なわけだよな」


 ぷるぷると緑色の体を震わせながら食べ物を取り込むベル。こんなに可愛いフォルムをしているが、これでもA+ランク冒険者のジョズよりも余裕で強い。俺もベルの本気を見たことは無いが、少なくともそこらの魔物に遅れをとることはないだろう。でもやっぱり敵陣に突撃させるのはやっぱり不安だな……


「明後日、オークロードっていうやつを倒しに行くんだけど、ベルはどうしたい?」


 俺が食べ終わったベルにそう尋ねると、ベルは体を伸ばして全力で感情を表現してきた。【使役】スキルからを通しても感情が伝わってくるが、これはおそらくオークロードの肉を食いたいんだろうな、なんとなく分かるぞ。


「でもかなり危険――」


 俺が言い切る前にベルは俺の頭の上に乗っかる。頭の上に乗っかっていれば大丈夫と言いたいのだろうか。


 俺はその場で前後に一回転する。ベルは頭にしっかりとくっついて離れることはない。俺は更に部屋の中を激しく飛び回り立体的に動き回るが、それでもベルは頭に張り付いて微動だにしない。これなら激しく動いても問題ないだろう。


「それでも少し不安だけど……危なくなったらすぐ逃げるんだぞ」


 ベルを戦闘に出す事自体は不安だが、戦力としてはとても頼りになるのでやはり嬉しい。


俺の許可が出るとベルは嬉しそうに俺の頭から飛び降りる。これは戦うことができるのが嬉しいのか、それともオークロードの肉が楽しみなのか……


「まあ、いいか。とりあえず俺も準備をしないとな……」


 まだ一日余裕はあるが、こういうものはなるべく早いうちに使えるようにした方がいいだろう。俺はオーク対策の用意をしてから眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ