閑話 誠一と過去
今まで書き溜めていた小説を大幅に改稿するので少し更新が遅れます。
その間に誠一の過去編をどうぞ
俺の両親は俺が小学校二年のころに交通事故で他界した。当時八歳だった俺と五歳の妹は、親戚の叔父叔母に引き取られた。
その頃俺たちは叔母に暴力をよく振るわれていた。幼かった妹が何かをやらかすたびに殴られ。それをかばおうとした俺も殴られた。叔父はそのたびに俺たちを守ってくれていたが、叔父は仕事で夜遅くなるまで帰らずになすすべもなく殴られることもよくあった。夏休みなどは叔母から逃げるように二人だけでキャンプに行って夏休みを丸々過ごしたこともある。
俺が中学に入って半年ほどたった。最近は力もついてきたからか直接殴られたりするようなことはなくなった。
「よし、こんなもんか、そろそろ叔父さんも起きてくるだろうし用意しとくか」
今の時間は午前五時。俺の叔父さんは所謂社畜と言われている中でも、スードラと言ってもいいくらいの強制労働を強いられている人種なので、早朝に出勤して夜中に帰ってくるという生活を送っている。
「あれ? おはよう誠一。珍しいね、君が朝御飯を作ってるなんて」
リビングにやってきた叔父さんが俺を見て少し驚いた様子で言う。いつも叔父さんは早いので誰もご飯を作っていない。だから普段叔父さんはカップラーメンなどを食べて出勤しているようだ。
「いいよこのくらい。謹慎くらったんだからやっぱ少しぐらいは家族のために働かないと」
俺はクラスメイトをボコボコにしたということで、出席停止を食らってしまった。
俺はオタばれからいじめられていた。最初は物がなくなる程度の幼稚なものだったが、ある日主犯格と取り巻きの5,6人にリンチされそうになったので思わずボコボコにしてしまった結果、全員で仲良く出席停止となった。
どうやって相手をぼこぼこにしたのかはよく覚えてないのだが、囲まれて何発か殴られてやばいと思い、気付いたら相手をボコボコにしていた。
相手の被害は惨憺たる物で骨折や打撲はもちろんの事、脳震盪を起こして半日くらい意識が無いままの奴や、両足を折られ数カ月は歩けない状態に陥った者もいるらしい。そりゃ処分食らうわな、やった俺でさえドン引きだ。
「すまんな、俺がちゃんと面倒を見てないばっかりに学校でも家でもこんなことになってしまって」
「別にいいよ。このくらいは問題にならないって」
謝る叔父さんに答える。
「そうか、すまんな……ほう、この味噌汁うまいな。昔母さんに作ってもらった味がするよ」
俺の味噌汁を絶賛する叔父さん。そりゃあんたが普段手料理を食ってないだけだ。
「はいこれお弁当、行ってらっしゃい」
俺は飯を食べ終えた叔父さんに、玄関先で弁当を渡す。
「おう、わざわざ悪いなこんな朝早くに。お前ならきっといい奥さんになれるぞ!」
「奥さんかよっ!」
イケメンスマイル(目にすごい隈出来てるしそんなにイケメンじゃないけど)でサムズアップする叔父さんに思わず突っ込む。朝が早いので静かに突っ込む。
その後俺は二度寝して起きたらもう朝飯が全部食われていた。そんな殺生な。
「ふんっ、まったく学校で問題起こしといてなんの手伝いもしないのかいっ! まったくこれだからガキは嫌いなんだ」
「いや朝飯作ってやっただろ。それに手伝いも何もお前は掃除も洗濯もしてないだろ。いつも荵にやらせやがって。人の妹を何だと思ってんだ」
セリフで分かるとは思うが、荵は俺の妹だ。物心ついたころから叔母に虐待されている中で俺に守られていた結果、一時期兄にべったりな妹になって今でもブラコンの気が残っている。かく言う俺もシスコンなんだけどなっ!
「はっ、いきなり押し掛けてきた穀潰しにわざわざ飯までやってるんだから、そんくらいの事は当たり前だろうに」
いや飯を食うから穀潰しって言うんだからその言葉の使い方はおかしいだろ。むしろ仕事も家事もやってないこいつの方が穀潰しと言える。
ちなみにこいつは食器洗いとかも自分でやってない。全部妹にやらせているのだ。食器洗いもしないってそれ相当ひどいぞ、小学生の手伝い以下かよ。
その後は妹が作っておいてくれた昼飯を温めて食べたり叔母と口げんかしたり、勉強したり叔母と口げんかしたり、溜まっていたアニメをまとめてみたり叔母と口げんかしたり、家事をしたりして過ごした。どんだけ口喧嘩してんだよ。
四時ごろになると妹が帰ってきた。小学校って早くていいよね。俺も小学校に戻りたい。
「あれ~? お兄ちゃん掃除とか洗濯とか全部やってくれたの? ありがと~」
家に帰って来た第一声がそれかい、完全にお母さんだぞそれ。
「そりゃあずっと家にいるからな、そのくらいはしないと叔父さんとお前に悪いだろ。それと俺が家にいる間は飯とかも俺がやるから」
普段部活で遅くなって手伝えない分、こういう所でお兄ちゃん力を発揮しないとな。
「ありがとうお兄ちゃん。あ、それとこれ。お兄ちゃんが読んでたライトノベル! 今日発売日でしょ。お兄ちゃんのために買ってきてあげたよ!」
ありがたい。とてもありがたい。まさか謹慎くらうとは思ってなかったので通販も頼んでいなかったのだ。しょうがないから謹慎の期間が終わったら買いに行こう、と思っていたが妹のおかげで助かった。しかもとら○あな限定の特典まで付いている。
「ありがとな荵。でもランドセル背負ったままあんなところに行くな、せめて家においてからにしろ」
これはただの偏見だが、ああいう所に小学生の幼女を行かせるのは不安がある。それもランドセル背負ったまま行くなんてことしたら、やばい奴とかにストーカーされそうで怖い。
三秒ほどアイアンクローを食らわせた後、頭を撫でてやるとにへへ~と笑って自分の部屋に戻って行った。
やっぱ妹と言うのは可愛いものだな。荵の笑顔を守るためだったら俺は国に戦争を吹っ掛けてもいいかもしれない。個人だからどっちかと言うとテロだなそれ。
俺は妹の笑顔を守るために強く決意するのであった。
更新は遅れますが最低限一日一話は投稿する予定です。
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