戦闘スタイルと暴食
更新が遅れ大変申し訳ありませんでした。
新たな仲間が増え、俺はベルを頭に乗せるとノワールに乗り、ジョズを連れて再び進みだす。ノワールとベルはまだ互いに警戒しているようだが、そこまで険悪と言う訳でもないので多分大丈夫だろう。
ノワールに乗って暫く進むが、周囲に魔物がほとんどいないことに気が付いた。俺が【索敵】の範囲を上げてみると、先程までいたはずの魔物の反応がほとんど消えている。代わりに魔物のドロップ品が落ちている。
「もしかして、ベルが倒したのか?」
俺がダンジョン内に落ちているドロップ品を拾いあげながら頭上のベルに尋ねると、俺の元に飛んでくる時に邪魔だから倒したという思念が伝わってきた。そんなに急いで駆け付けてくれたのか……
人が倒したものならともかく、自分の従魔が倒した魔物のドロップ品なら遠慮する必要もないと思い、落ちている物を回収しつつ先を進む。それにしてもこの辺の敵は決して弱い敵ではないのだが、よくこんなに倒したものだ。さっきのウルフを倒した事といい、今のこいつなら『サウロスの迷宮』でも浅いところなら生きていけそうだな。
そんな事を考えて暫く進んでいると、横道から魔物が飛び出してきた。人型で2m以上ある巨体。ここでは定番の魔物、オーガだ。
丁度いいのでジョズの相手にしようと思い、ジョズに声を掛けようとするが、それよりも早くスライムが紫色の液体をオーガに浴びせかけた。
「グアッ!?」
いきなり攻撃をくらったオーガは煙が上がる顔を抑えつけてもだえる。今のは【溶解液】のスキルと水魔法を組み合わせた技だろうか、あのスキルにそんな使い方があるとは思いつかなかったな。
オーガがひるんだところに【触手】スキルを使い鞭のように攻撃をすると、飛びかかってオーガを覆い尽くして取りこんでしまった。
オーガを倒した……いや、食べた? ベルは飛び跳ねて俺の頭の上に綺麗に着地し戻ってきた。おそらく普段の戦闘スタイルなのだろう、見事な手際だ。
「何だ今の!? 魔物を食べたのか!?」
一連の動戦闘を見ていたジョズは理解が追いつけていない。まあ、俺もベルのスキル構成を見る前は魔物を食って倒すなんて戦闘方法は信じられなかったしな。
心なしかドヤッとしているベルとは対照的に、ノワールは悔しそうだ。俺達を乗せてるから接近タイプのノワールは活躍ができないんだよな。気持ちはわかるけど勘弁してくれ。
「見ての通り、ベルの戦い方はこんな感じだ。俺も見てきた訳じゃないから分からないけど、スライムの雑食性を極限まで高めるとこうなるんじゃないのか? 魔法系のスキルを持っているのは他のスライムを食って手に入れたんだろうな」
スライム限定とはいえ、相手からスキルを奪うことができれば本来手に入るはずの無いスキルまで手に入れることができるのは俺も良く実感している。尤も、【触手】や【肥大化】のあたりはそう言うスライムがいたのか、それとも食べることに特化する過程で手に入れたのか微妙なところではあるが。
後はどこかの魔神がなにを考えてか加護を与えたり、複数の神様がベルに興味を示していたと言うのも少なからずあるのだろう。神々の間でうちのベルが話題になってたりしたらちょっとかなり複雑な気持ちだ。
ベルの事を撫でながらここでの戦闘はジョズに任せるとベルに言うと、ベルは胡散臭そうにジョズの事を見ていた。まあ、この四人の中で最弱だから無理もないのだが。
「ベルは戦闘スタイルが独特すぎてアドバイスがし難いけど、少なくともジョズよりは強いし、ジョズも本気で鍛えないとどんどん置いて行かれるぞ。右前方から反応ありだ」
また現れた魔物を油断しているジョズにぶつける。ジョズも今までの戦闘で慣れているのか、さほど危なげもなく対処することができた。この調子なら進むペースを上げても大丈夫だろう。
「まあ、その前に昼飯にするか」
そろそろ正午になるし、周りに魔物もいないのでこの辺りで休憩にする。『アイテムボックス』から食材を取り出した所で、ベルの昼食はどうするかに気付いた。
「ベルは魔物食ってるけど、昼飯も食うか?」
ベルは【大食い】スキルを持っているが、どのくらい食べるのだろうか。そもそも、魔物は死ぬと光の粒子になるし、お腹が膨れるのか?
ベルの返答は、光の粒子になる前に体内に入れればお腹は膨れるそうだ。そう言えば草原でウルフがゴブリンを襲って食べてるのを見たな。生命力が無くなったら光の粒子になって消えていたが、ゴブリンがしぶといおかげか、身体の三割くらいは食われてたな。尤も、普通の魔物は魔物では無い動物を襲うことがほとんどなので、魔物が魔物を食べると言うことはあまりないのだが。
だが魔物は魔物、飯は飯なのか、ベルは飯も食べるようだ。これは【大食い】持ちの効果か? まあ食糧はある程度余裕があるし、ダンジョン内でドロップした食糧もあるので一匹増えた所で大して変わらないだろう。
……なんて思っていた時期が私にもありました。
いやはや、ベルのあんな小さい体のどこにあれだけの量が入るんでしょうか。少なくとも五人分は食べていたので、このペースで消費していくとダンジョンの中で自給自足をしなければならない事態に陥りかねない。唯一の救いは金は持っているので、ダンジョンの外に出れば食費の問題で困ることは無い事だろうか。
とはいえ、こんなにもおいしそうに食べてくれるベルを止めるのは何とも心苦しい。表情がないのに全身から幸せがにじみ出ているのが分かるその食べ方はただただ可愛いと言う他ない。俺の妹の荵と同じ土俵に立てる数少ない存在といっても過言ではないのではないだろうか。そして何より、俺のためにこんな所まで来てくれたベルを全力で甘やかしてあげたい。
そんなわけで、食事の量を維持する為に、ペースを上げつつ魔物との交戦回数が上がってジョズの負担が増えるのであった。いや、俺もジョズに見えないように横道の魔物とか倒してるんだよ?
一ヶ月なろうから切り離された生活を送っていたら、なろうのシステムが色々と変わっていて軽い浦島太郎状態。どうやら罰が当たったようです。
今後は一ヶ月も間が開くことが無いよう努めます。
次話は絶対に明日投稿します。