創造神と邪神
二話同時投稿、こちらは一話目です。
かなり短いです。
その昔、ただ何も無い空間に佇む一匹の龍が居た。
その龍は自分以外に何者も存在しない空間で何万年、何億年と一匹で過ごしていた。
やがて龍は自分が死なない存在である事を悟ると、孤独と言う感情が芽生えた。
龍は孤独を紛らわせるため、長い時を生きた中で手に入れた膨大な魔力を使い、世界を創った。
龍は土魔法で大地を創り、水魔法で海を創り、火魔法で太陽を創り、最後に風魔法で空を創って、それをラオスティアと名付けた。
しかし、その世界は不安定で、常に龍の力で維持しなければならない物だった。
そこで龍は、世界を管理する為の存在――神を創った。
龍に創られた神々は、世界を調整し、自力で世界の維持ができるように生物を創った。
ある神は植物を創り、ある神は魚を、ある神は精霊を、ある神は獣を創り、最後にある神は知能を持った生物――人族を創った。
人族を見た神々は、それをまねて自分の管理する種族に知能を持たせ、エルフ、人魚、ドワーフ、獣人を創り、世界を神々の手から離れて管理させることにした。
それらを生み出した五柱の神は創造神と呼ばれ、世界の理を支配する神々を生み出し、人類に魔法を授けて人類を正しい方向へ導いていった。
しかし、ある問題が起こった。
神々の持つ感情。その中にあるわずかな負の感情が集まり、一柱の神を生み出した。
その神は自らを邪神と名乗り、負の感情を以て世界を汚染した。
人類は魔族やダークエルフへ、獣は魔物へと、次々に生物を邪悪な存在へと変質させていった。
やがて神にまで影響が及ぶようになると、創造神たちは邪神を滅ぼそうとした。
しかし邪神の力は強大で、五対一でも邪神を滅ぼす事はできなかった。
それを見た龍は、世界の汚染を止めるために自身の姿を模した神を創ると、それ竜神と名付け、創造神達の手助けをさせた。
六対一でようやく邪神を滅ぼす事ができたが、創造神達も大きな損傷を受け、長い眠りに着くこととなった。
しかし、世界の汚染はそれだけでは終わらなかった。
邪神に生み出された神は、一度滅んだ邪神を再び世界に呼び戻すために、世界を負の感情で満たそうと、魔族に世界を支配させようとした。
その中で魔神によって加護を与えられ、力をつけて生まれたのが魔族の王――魔王である。
魔王を中心とした魔族たちは人類の住む大陸から離れた魔大陸を拠点とし、人類を滅ぼそうとした。
個々の力が強い魔族と、圧倒的な魔王の力によって次々に蹂躙されていった人類は、最終手段として別世界から勇者を召喚した。
勇者は愛を司る神――イシュタルの加護を受け、竜神の遺産である龍人族の力を借りて多くの魔族を打ち滅ぼし、ドワーフとエルフによって鍛えられた聖剣を以て魔王を封印した。
魔王を封印し役目を果たした勇者は元の世界へと帰還し、王を失った魔族たちは人類の反撃によって魔大陸まで追われ衰退の道をたどって行くことになる。龍人族は魔族の活動が収まると、龍大陸へと籠り、人類の前にほとんど姿を見せなくなった。
また神界では、魔族という信者を失った邪神派の神々は徐々に衰退し、創造神派の神によって消滅させられることになった。
邪神派の神を倒した創造神派の神々は、負の感情が集まって再び邪神を発生させないために、負の感情を魔物と言う形で地上に返して調整したため、魔物の発生は続くことになったが、こうして世界は安定した物になったのである。
――聖神教聖典。第一章『世界創造』、第三章『聖邪大戦』、第十二章『勇者』より。
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何も見えない真っ暗な世界、その中に佇むのは一人の女性。その女性は無表情で虚空を見つめている。
「そう……勇者の因子が来たのね……こちらの魔神の加護は、魔王の因子かしら? 魔神とは違う神の力を感じるようだけど……」
そう呟きながら今度は目を瞑る。
「まあ、どっちにしても現魔王は死んでいないから、次代の魔王として覚醒する前に寿命を迎えるでしょうね。とすると問題は現魔王……人類よりも、あんまり龍まで殺し回られると困るわね。そろそろ竜達を龍種にさせないとね……加護の準備もしなきゃいけないし、余りここに居ると面倒なのに見つかるから――」
それだけ言ってその女性――竜神は姿を消した。
思っていたよりも投稿が遅れてしまいました。
ではここで投稿直前で「負の感情」の部分が「腐の感情」になっている事に気付き、慌てて修正を入れる作者の話でも……え? 聞きたくない? まあ日頃の行い……もとい日頃の検索の結果ですかね。