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閑話 バレンタインとチョコ

 一日遅れのバレンタイン特集。gdgd&キャラ崩壊につきご注意を。

 俺は何もない真っ白な空間で目を覚ます。前にどこかで見たような気もするが、思いだせない。


「これは――夢か?」


 既視感があるっていう事は似たような夢を見たのかもしれない。それならなんとなく理解出来る。


「ってことはこれって所謂明晰夢って奴か? だとしたら夢を自在に操れたりするのか?」


 一応知識として知っていたし、一時期明晰夢を見る練習もしていたからな。その時は結局できなかったけど、もしかしたら魔法を使う感覚で想像すれば夢を操ったりできるのかもしれない。


「じゃあ例えば――妹よ出ろ! なんてな」


 流石に魔法と明晰夢は違うだろ。それに妹が出てくる魔法ってどんな――


「ハッピーバレンタイン!」


 不意に後ろから聞きなれた声がして振り返る。そこには天使が、むしろ熾天使とか女神とか言った方が正しいのではないかと思うほどの美少女。つまり俺の妹がいた。


 年頃の女の子としては不安になる、ユ○クロとし○むらで全身を固めた洋服に、腰の上辺りまで伸ばした綺麗な黒髪。さらに出るべきところも引っ込むべきところも引っ込んでるこのスタイル。


 うん、間違いない。俺の妹だな。


「ってことではいこれ、チョコ」


 荵はどこから取り出したのか右手に持ったチョコを俺に渡してくる。地球では毎年妹からしかもらえない人生を送っていたが、俺はそれを不幸だとは思っていないので問題ない。


「ありがとう! 愛してるぜっ!」


 俺はチョコを貰うと荵に抱きつこうとして避けられる。これが俺のバレンタインの御約束であり、このイベントが終了した事を示す。


「よし、今年のバレンタインも無事に終わった――」

「ハッピーバレンタイン!」


 俺が高らかにバレンタインの終了を宣言しようとすると、再び俺の背後から声が聞こえる。


 そこには結衣と神田さんが、ついでに大地もいた。これ、一体どこから出て聞いているんだろうか。


「今年は愛しの誠一くんのた・め・ぐはっ!」


 開口一番寝言をほざいてきた大地をぶっ飛ばすと、大地がいたところにチョコが落ちていた。ドロップアイテムですね、わかります。


「あ、あの……よっ!……よかったらこれ!」


 そんなに緊張されながら渡されるとこっちもキョドっちゃうんですけどね……


「お、おう……ありがとう」


 できる限り平常心を保って結衣からチョコを受け取る。かなり気合が入って作ったみたいで、義理じゃ無くて本命ですと言われたら信じてしまいそうだ。これが女子力か……


「オーケー。いい動画が撮れたわ」


 恥ずかしかったのか耳まで真っ赤にしている結衣に、いつの間にか無表情でスマホを向けていた神田さんが何事もなかったかのように話しかける。今すぐ消してもらえませんかね?


 神田さんを微妙な目で見ていると荵に服を引っ張られる。


「お兄ちゃんお兄ちゃん。あの人彼女さん? いつの間に女引っ掛けて来てんの?」


 俺だけに聞こえるような声で聞かれるが、とてもドスが効いているような気がするのは気のせいなんですよね?


「それはそうと、私も一応持って来たわ」


 神田さんはスマホを奪おうとしている結衣を片手でいなしつつ紙コップを取り出す。だからどっから出してるんだ……


 それはそうと、紙コップとはいったい何を用意しているんだろうか。


「本来チョコレートって言うのはカカオを焙煎した苦い飲み物で強壮としての役割があったそうよ」


 そう言って神田さんは俺の手に紙コップを押しつけてくる。受け取ったコップを除きこむと、どろっとした茶色い液体が入っている。但し、ホットチョコレート甘い匂いなんてこれっぽっちもない。


「このボケをするために、わざわざカカオを丸ごと手に入れた私をもっと労いなさい」


 何故かドヤ顔をしている神田さんは気にしないとして、モテないなりにチョコの事を調べているので、最初は苦い飲み物だったと言うことくらいは知っているが、流石に実物を飲んだ事は無いので興味はある。


「おう、ありがとうな」


 冷めないうちに飲んだ方がよさそうなので結衣のよりも先にこちらを飲ませてもらう。多少苦いのは覚悟の上だ。


 ……何とも言えない味だな。苦い以外の感想は特にないが、思っていたほど飲みにくい訳では無かった。


「うん、苦い。あと、感想に困る」

「心配ないわ。その反応も織り込み済みよ」


 なんじゃそりゃ……本当によくわからん人だな。神田さんと幼馴染をしてる結衣って実は凄いのかもしれない。


 などとくだらないことを考えていると、さらに声が聞こえる。


「「「ハッピーバレンタイン!」」」


 今度は大勢の声が聞こえてきた。一体誰だよ……


「兄貴、チョコ作ってきたぜ!」

「はっはっは、地球にはバレンタインというイベントがあるのだな!」

「人間よ、チョコを寄越すのだ」

「久しぶりだね。たまには魔神様特製チョコレートなんてどうだろう?」


 上からジョズ、ダン、火竜、魔神タナトスだ。お前らは一体何をやっているんだ。それと大地が火竜の尻尾に吹き飛ばされてるぞ。


 急に騒がしくなった白い空間だが、不意に頭に柔らかい何かが乗っかる感覚がした。


 上を見ると、いつの間にか現れたスライムが俺の頭の上でくつろいでいた。流石に、スライムはチョコを作れなかったようで、少ししょんぼりしている。俺はそんなスライムを慰めるようになでてやる。


「そう言えば、お前にも名前をつけてやらないとな……そうだな、じゃあ――っておい、こら!」


 俺はスライムに名前をつけようとしたが、その瞬間スライムは目にもとまらぬ速さで俺が手に持っていたチョコレートをかすめ取る。


「馬鹿、そっちは荵の――うっ、頭が!」


 スライムからチョコレートを取り返そうとした瞬間、頭に激しい痛みが走った。それと同時に思いだされるのは前回この白い空間に来た時の光景。


「早くスライムを止めないと……」


 俺は起き上がってスライムをなんとかして止めようとするが、スライムは火竜や魔神さえ反応を許さない速度で全てのチョコレートを飲み込んで行き……


「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!……って、あれ?」


 俺は宿屋のベッドで目を覚ます。今、何で叫んだんだっけ? 何か悪い夢でも見たんだろうか。思いだせない。


「……もっかい寝よ」


 全く疲れが取れていない俺は、すぐに二度寝してしまう。なので、枕元おいてあった手紙付きのチョコレートに気付くのはもう少し先になるのだった。





『君達の周りには本当に面白い人が多いね。これは面白い物を見せてもらったお礼だとくれていいよ。尤も、君達は覚えていないだろうけど。By神』


 最初はチョコレートボンボンで酔っぱらった鎌倉さんが積極的になるお話を描いてたけど、途中で完全にノクターン行きになる文章になったので没。

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