若きじじい
公園にいるのもつまらなくなったので帰ろう。陽がもうすぐ暮れそうだ。
指定席のブランコから降りて歩きだす。
右足を上げたら足下に一匹の蟻が歩いていたので、バランスを崩して転ぶとこだった。
このまま足を下ろしてたらどうなってただろ。死んだかな。
蟻は一回踏まれたくらいじゃ死なないって知ってる。でも二、三回踏まれたら死ぬんだったかな。残りライフを減らさないでやったんだ。感謝しろよ。
オスかな、メスかな。歩いてるくらいだからオスなんだろうな。働きアリだもん。
もし彼が踏まれたとしても足下を歩く蟻が悪いんだ。わかってるんだろか。みんな君よりデカイんだ。あっという間にやられちまうぞ。
彼はそのままよたよた歩いてる。蟻はあっち行ったりそっち行ったり、そうかと思えばキョロキョロしたり一匹で騒々しい。でも楽しいんだろな。そういうの。
蟻の巣の入口って、ブランコの近くに沢山ある。もしかして繋がってんのかな。二世帯住宅みたいに。なんかヤダな。仲間が多くて。あいつも他の奴らといるの嫌になったのかな。成虫だから大人だけど家出くらいしたくなるよね。
あいつが巣の入り口近くに着く。ちょっと戸惑ってる。やっぱり家出なんだ。無理に帰らなくてもいいんだよ。多分一匹で小さな巣くらい作れるさ。
でも帰った。一番手前の入り口から。地中の賑やかさが増した、気がする。気のせいか。
ふと気付くと陽が暮れていた。僕も家に帰らなきゃ。