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Luge  作者: トト
6/7

Falschung・Himmel(フェルシュング・ヒンメル)~偽者の空~

いや、あの…嘘ついてすいませんでした!!!


PCの調子が直ったと思っていたのですが…あれは嘘だったようです。


間違いなくシュ〇ちゃんが言ってますねb


ですが待ってくれていた人、ありがとうございます!!!!


では、楽しんでいってください。

「……(ゴンッ)」


どうやら食器を片付けようとして壁にぶつかったみたいだ。


「…ぷっ」


俺は振り向いてその状況下を見るとつい笑ってしまう。


「っ//////」


赤くなってる赤くなってる(笑)


彼女と暮らし初めて早一ヶ月がたった。


あの台風の日、あの後俺は彼女を拾い、家に運んだ後眼を使って色々な情報を手に入れた。


まず彼女は目が見えないということ。


だが目の前で話しをしたりするとまるで見えてるかのように目線が合うのだ。


だが本人いわく、見えてないようだ。


容姿は美しいの一言しか出てこない程のスタイル。


見た目によらず結構ドジなところが結構萌えポイントに違いないだろう。


Luge(リューゲ)の人間ということもあるだろうがなぜか服は浴衣というチョイス。


前、服を買いに行ったときなんて一着買うのに財布が空になるほどの値段だったし。


いや、とても似合ってるし本人も気に入っているのでいいと思うが…


容姿の続きだが、まず髪が赤いというところがLuge(リューゲ)らしい。


しかも髪の毛が赤いのに不思議と浴衣が似合ってるっていうのも面白いポイントだ。


ほとんど必要以上の言葉は発しないが、たまに必要以上に喋る一面も持っている。


まだこちら側、ま~人間の世に来てまだ間もない彼女は、初めて見る物に体制がないため初めて見る物に対してオドオドすることがある…


これが最高に可愛かったりするわけだ。


理解出来ない物に対しては無言で考え始めたりするし、初めて会う人に対しては物陰(俺に)すぐ隠れるし…


どうやったらこんなに可愛い行動が自然と身に付くのかが不思議なものだ。


しかも容姿がここまで整ってる以上のものときたもんだ。


初めて会った時から別れる時までの身長やスリーサイズは変わってはいただろうが見た目変わった感じはなかった。


身長は百五十センチぐらいだったと思う。


スリーサイズは…いや、わかるはずがないが。


ただ胸は十五歳にしては豊かな方だったと思う。


…あれが十五歳の普通だったのかもしれないが…


現代の方の霧葉は…ん~まぁ大きくはなったと思うが、わからない。


……

………


「…な、なんだその目は」


霧葉の出会いから容姿を語っていると何故か無姫と封架にとても冷たい視線を向けられる。


「別にぃ~」


「…なんでも」


なんでこんなに意味ありげな感じなんだ?


「いや、なんだよ」


気になった俺は負けじと聞き返す。


「べべ別にぃ~」


「…なななんでも」


「なにに動揺してんだよ!!」


無姫はいきなり立つと手を後ろで組み、口を尖らせながら石ころを蹴る素振りをする。


「封架はやらなくていいからな!」


無姫のことをジッと見ていた封架が突然立つので次の行動を察した俺は先に釘を指しておく。


「…ムッ!」


「なんで怒ってるの…」


釘を指すと何故かそっぽを向かれる。


「お前はいつまでやってんだよ…」


無姫の方を見ると未だに石ころを蹴る素振りをしていた。


「やはり、小さいのは嫌いか?」


「…は?」


唐突に無姫がよくわからない質問をしてきたので、俺は呆けたかのように首を傾げ疑問形で返してしまう。


「だ、だから…っぱいは、小さいのは嫌いかと聞いてるんだ!」


「パイ?まぁ~大きい方がお得だわな」


「パイじゃない!おっぱいだ!」


「…あ~え~…別に(こだわ)りはないかな…」


「ち、小さくてもいいのか!?」


「いいんじゃないか?」


実際のところなんでそこまで胸にこだわっているのかが理解に苦しむな。


ま、男の俺には多分一生わからないであろう領域だろうが。


「…私のは?」


今度は封架が胸について聞いてくる。


「胸のことを聞いてくるのは別に構わないが、せめて自分の胸揉みながら聞くのはやめような封架!」


何故かプリンのようにタユンタユンの胸を揉みほぐしながら聞いてくる封架。


「…駄目なのか?」


「いや、駄目か駄目じゃないかと聞かれれば駄目だよなうん」


封架の胸は見る限り手にちょっと余る程度のものだろう。


無姫の胸は手の平ぐらいだろうか?俺自身にあまり拘りはないが無姫自身はちょっと気にしているらしい、まだまだ成長の余地はあるとは思うが。


霧葉は浴衣を着ていて、まったくと言っていいほどサイズがわからない。


「…私のは?」


「いや…封架、お前がLuge(リューゲ)の常識や情報をよく知っているのは認めるが、

な…自分の胸揉みながら人に自分の胸はどうですか?って、聞くか?」


「…聞かないの!?」


「なぜ驚く!?」


「私の常識は世界の常識」


「え?なにその俺ルール」


「…私ルール」


「細かいな!!!」


「…本題に戻ろ~」


嫌な子!!!


「わかったよ~んじゃ本題に…」


「あ、そういえば泥葉」


無姫がはっとなにかに気付いたかのように俺に話しかけてくる。


「はい?」


「一番聞きたいことを聞き忘れていた」


「聞きたいこと?」


「なぜ霧葉の胸のサイズを知っていたんだ?」


「いや知らな…」


「…嘘、いくない」


「そ、封架の言う通り、嘘、いくない。今さっき虚葉が過去の話しをしている時に「豊かな方だったと思う」って言ってたわよね?」


「あ~、あ~、ぁ~あれはなあれだよ」


「…どれ?」ジット-


「……」ジット-


「ちょっと待てって、(やま)しいことは一切してないからな!」


「じゃあなにをして人の胸を豊かな方だ~なんて言えんのよ!」


「ちょ怒るな!落ち着け!いいか?こいつと会ったのが雨の日って言ったよな?

その時に家に担いで帰ってきたときに着替えさせたんだよ…こっちも恥ずかしかったわ!」


「…なるほど、それで赤神さんの胸をなめ回すように見た、と?」


「いや違うからな!」


「もう虚葉嫌い!」


「今違う言うたやん!」


もうなんなんだこいつら…俺は「ハァ~」と溜め息をつきながらキッチンに向かう。


するとしつこい二人が未だに後ろでギャーギャーと文句やら愚痴やらを言いまくっている。


俺がお茶を持って来てソファーに座ると無姫と封架が「んっ」とコップを突き出してくる。


「持ってこいと?」


「話しはそれからだ」


「お前誰!?」


無姫が足を組みながら不適な笑み(仮)をしながら言ってくる。


「わかったわかった…」


「まだ~」


くっ、あの小娘ぇ!


ま、そんな怒ってないが。


「はいはいちょっと待っとけ」


お茶を二つのコップに注ぎ、無姫と封架の元へ持って行く。


「ふぅ~暖かい、虚葉が変態ってこともわかったし本題に戻ろ」


「いや、だから…」


「言い訳なんて聞きたくない!!!」


「えぇ~」


こいつはどうにか俺を変態に仕立てあげたいらしい。


「…本題に戻るか…」


俺は妥協も時には大事か…と心の中で自分に言い聞かせた後、話しを戻す。


……

………


霧葉と過ごすうちに俺と霧葉はいつの間にか家族のような関係になっていた。


霧葉自体はあんまり喋らないが必要なことは喋って聞かせてくれるので俺は不自由はしなかった。


彼女は相も変わらず目が見えないままなので不自由だったろうが、他のことは俺が手助けしていたのでちょっとは自由に動けていたと思う。


…そんな甘い生活は一年程続いた。


その一年にはまた、長い記憶がある、が一年もの長話をする、のはまた今度にしよう。


その一年の長い記憶にはある重要な記憶があった。


俺の母と父を殺したやつの名が霧葉の口から聞けたのは今でもしっかり覚えている。


驚くべきは霧葉の父親もその男に殺されたということだった。


母親は霧葉を庇い、この世に落としたらしい。


そして拾ったのが俺ということだ。


霧葉はLuge(リューゲ)には戻りたくないと言ってこちらに留まり、生活をしていたのだ。


そして霧葉と過ごし一年が経った夏のある日、世界は静止した。


Verbot(フェアボート) Krieg(クリーク)(禁止された戦争)の開幕である。


Luge(リューゲ)を知る者達は強制的にLuge(リューゲ)に引き込まれ、戦争は始まった。


夜飯の支度をしていた俺は、その世界の変化にすぐ気づいた。


変化はまず、元の住む世界がLuge(リューゲ)の者に見られた。


そう、霧葉である。


急に泣き始めたと思ったら急に怒り始める。


世界が静止したことにより不安定な状態に陥り、世との接触が完全に絶たれたのだ。


生まれ故郷がLuge(リューゲ)の彼女にとって世という物との接触は必要不可欠なのだ。


接触というのは、Luge(リューゲ)の人間を世の人間として存在を許すことを言い、Luge(リューゲ)で罪を犯した者が世に侵入出来ないようにするためのシステムである。


接触と言っても誰かと話したりするのではない、世に入ってきた時点で自動的に発動する世の能力みたいなものだ。


だが世が静止した時はその接触は曖昧になってしまうのだ。


起動せず、だが起動している。


罪を犯していない霧葉にさえ、影響を及ぼしたわけだ。


強制的にLuge(リューゲ)に引き込まれると言ったが有余はあった。


約一時間程度しかなかったが、俺にとっては十分過ぎる時間だった。


「一年ぶりか…」


「…虚…葉…嫌、だよ…」とても苦しそうにしている霧葉、だが俺にはどうすることも出来ない。


多分Luge(リューゲ)に行けば状態異常は治るだろう。


「……」バタン


「霧葉!」


突然霧葉が床に倒れる。


俺は霧葉を抱き抱え寝室まで運んで行った。


「痛い、よ…苦しい、よ…嫌だ…嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」


「霧葉…」


「人を殺すの?また、手を汚すの?そんな虚葉…嫌だよ…」


どうすることも出来ない…自分がどれだけ無力かといいことを思い知らされる。


「…全部…お前が悪いんだ…」


いきなり霧葉に胸ぐらを捕まれ、俺を見つめながら言いはなってきた。


だが霧葉が見つめているのは俺ではなかった。


眼である。


…本当は見えているだろうと思ってしまう程俺の眼を見て喋りかけてくる霧葉。


「なんで…虚葉、なの…?なんで私じゃ、ないの…?」


「…お前にこれが、操れるか?」


「…うんっ」


…可能性…


初めて会った時に見た、あの異常なまでの可能性の率。


俺の眼ではその可能性は数字で表されていた。


常人の可能性の率というのは五パーセント~十五パーセントなのだ。


そのなかでも運が強かったり、才能を持った者達が十五パーセントちょっとと言ったところに対して、

霧葉の可能性は七十パーセント~八十パーセント。


この数値はほぼ出来ないことなどない数値、Luge(リューゲ)では絶対領域と呼ばれているものである。


だか霧葉は目が見えていないのでその可能性を生かせてないのだ。


俺はこの時にその可能性を思い出していた。


…この呪いを、受け継ぐ可能性…


受け継げたとしても体が持たない可能性が百パーセント。


だがこの可能性は自らの可能性が高ければ軽減はされるが、当然体の負担は尋常のもではない。


例えてしまうと十分に一度電車に跳ねられるぐらいだろう。


ちょっと盛ったが実際、それに耐えられるようにならないとこの呪いは受け止められない。


それほど体に対しての影響が強いということだ。


だがそんな耐久力を霧葉が持っているとは思えない。


ここ一年一緒に暮らしてきたが、それを思わせる行動も見ていない。


だが俺は惑わされた。


いや、言い方が悪いな…迷ってしまったのだ。


たった一人の少女の、たった一言に…俺は迷い、欲望に支配された。


哀れなものだった。


数えられぬ程の命を潰し、何時なんどき死がきても文句一つ言えぬ生き方をしてきた俺が…目も見えぬ一人の少女に通行止めを食らっているのだ。


お笑いだ…


復讐に身を(てい)した人間がいつの間にか復讐をされる側の人間に成り果てているのだ。



本当…

何故…

どうして…


良い人間になるのには時間が馬鹿みたいに掛かるくせして、悪い人間になるのは本当一瞬だ。


…だが霧葉は、一瞬にして悪に走った俺に、今更ながら甘い誘惑を振り掛けてくるのだ。


霧葉が悪いと言っているのではない。


ただ、なぜ『今』なのか…呪いを受け入れたのはいいが、時に迷ってしまう『今』


誰が起こしたかもわからない『今』


女の子が目の前で泣いている『今』


自分はどの選択を選べばいいかわからない『今』


…欲望に負けそうな『今』


世界は不思議だ。


世界は理不尽だ。


世界は不平等だ。


世界は想定外だ。


世界は思想家だ。


世界は…変だ。



何故か?


会わせちゃいけないような人間を世界は会わせたがる。


そして会ってしまうのが落ちである。


俺も会った。


霧葉というとてつもなく大きい物を持った絶対領域に…


話しは続いた。


霧葉は泣きながら何度も何度も、訴えてくる。


「なんで私じゃないの?また殺すの?」


何度も何度も訴えてくる…俺は「お前にこれが操れるか?」と聞いた後押し黙っていた。


彼女は躊躇(ためら)いもせず頷いてきた。


怖かった、だが同時に逃げたかった。


この呪いという呪縛から。


少しの好奇心と、大きな恐怖心。


俺は口を開く、逃げる為に。


「なら霧葉、この呪い、お前に預けてもいいか?」


「…うん」


ただ頷く、この頷きにどれだけの覚悟と勇気がいるか俺にはわかった。


「…でも、そんなこと…出来るの?」


「出来るさ、少しばかり時間が掛かるがね」


俺は瞼を閉じ、自分の胸に右手を置く。


数秒たつと、この部屋一帯に魔方陣が展開される。


部屋は不思議な空間に包まれ、音という音が遮断される。


そのうちこのなんの音もない部屋に心臓の音だけが鳴り響き始める。


「…霧葉」


「ん?」


「……俺は、どうすればいい?」


今になってまた恐怖心が俺を襲ってくる。


それは霧葉が死んでしまうんじゃないか、という恐怖。


自分でもびっくりだった。いつもなら自分最優先、他のものなんて糞の次みたいな考えだったのに…人は変わる。


自分が気付いていないだけで自分は変わっている。


…変えられている。


彼女は変わっただろうか?強くなっただろうか?


一人でも大丈夫だろうか?彼女が死んだらきっと俺は…今度こそ戻れなくなるだろう。


ただの殺人鬼と、化すだろう…


「大丈夫…(ギュっ」


彼女は強く俺を抱き締めてくる。


とても強く感じた。


とても優しく感じた。


自ずと涙が出てきた。


なんで泣いているんだ?俺は…


その意味さえ、その理由さえわからず俺は涙を拭う。


…………………………………………………………………………………………………………ハ

ッ……………………………………………………………………ハッ……………ハッ……………………………ハハ………………アハハハ……………………………………………………………


もう、いいや………この時俺のなかの何かが弾けた。


全てが嫌になってしまったのだ。


「霧葉、ありがとう」


俺はその言葉と共に霧葉を自分から離す。


…もう、後戻りは出来ない…


立ち止まることも出来ない。


進むことしか出来ない、なら進もう。


進んだ先に大事なものを失うことが起きたとしても。


「これから、移り偽の契約を始める。

Vertrag(フェアトラーク) Verbot(フェアボート)(契約を禁止し…)

Stunde Regel Kaputt Doppelt Vertrag Anfang(シュトゥンデ レーゲル カプット ドッペルト フェアトラーク アンファング)(時間の規則を破壊…二重契約を開始する)」


普通ならこの呪文で時間が止まるはずなのだが、面白いことに今回は既に時間が止まっているのでなに

も変わらないまま契約が実行される。


俺の目の前の魔方陣がさっきより輝きを増す。


「霧葉、手出してくれ」


霧葉はなにも言わず手を出してくる。


俺はその手を優しく掴み手首に指を置く。


「ちょっと痛いけど、大丈夫か?」


「うん…」


霧葉が頷くのを確認すると俺は今さっき手首に置いた人差し指を素早く横に切った。


「…っ!」


血が溢れ出てくる。


溢れ出た血は畳に落ち、魔方陣に浸透していく。


色の無かった線は即座に真っ赤に染まる。


魔方陣全体に血がまわったのを確認した後、霧葉の手のひらと俺の左手を合わせる。


「…Luge(リューゲ) Nadel(ナーデル)(嘘の針)」


言葉と共に太さが親指程度で長さが三十センチの大きさの針が創造される。


重ねた手のひらに力を込めて針を刺す。



グシャッ!!!



部屋に響いたその音は痛々しく、また…寂しい音だった。


「…ハァハァ…」


霧葉は痛みに耐え抜き、息を荒くしている。


「…おい霧葉…」


「大丈夫!大丈夫だから…続けて…」


下を向き汗を垂らしながら言ってくる霧葉。


俺から見たその姿は…『なんて馬鹿な女なんだろう』という思いでいっぱいだった。


だってそうだろう?たった一年、たった一年一緒に暮らしていただけの男の最大の悩みを私が引き継ごうって言ってくるんだぜ?


馬鹿としか言いようがない……


「馬鹿、かな?」


「え?」


「私…馬鹿、かな?たった一年って、虚葉は、思ってるみたいだけど……私にとっては…たった、なんて

安っぽい言葉で片付けられる一年じゃ、なかった…!」


「…俺にとってのこの一年は…なんだったんだろうな…」


「私にとってのこの一年は…貴方に会えた、嘘のような一年です」


汗を流し、無理矢理に作ったかのような笑顔を向けてくる。


まるでこちらが見えてるかのようにこちらを見て笑ってくる霧葉。


俺はどんな表情も返せない、ただ顔を背けるだけ。


返事も出来ず、人の顔も見れない臆病者。


「私ね…幸せだよ…」


その綺麗な笑顔に涙が加わる。


……………………………………………………………………なぜ泣く?なぜ笑う?


悲しいから、苦しいから泣くのではないのか?


楽しいから、嬉しいから笑うのではないのか?


「…なんで笑ってられるんだ?」


どうにか口を開き一番に出てきた言葉は、攻めるような一言だった。


それでも霧葉は笑顔で答えてくる。


「これから何処かに行ってしまう貴方が…まだ私の傍にいるから…」


「…では何故、泣いているんだ?」


「…虚葉が何処かに行くとわかっていながら…私がワガママを言うせいで…私がまだ子供なせいで…私

がまだ…臆病なせいで…」


霧葉の表情から笑顔が消え、悲しさだけが残る。


またうつ向く霧葉。


「お前は、ワガママじゃない…もう子供でもない…臆病でもない…立派な、人間だよ…」


本当にそう思った。


嘘偽り無く、真の思いだけで口が動いた。


まるで操られてるかのように。


「霧葉、字、書けるか?」


「…大丈夫…」


霧葉の前に一枚の紙とペンが姿を現す。


契約書である。


「………はい…」


「…受け取った。では…契約の成立を確認、契約に基づき…呪いの移動を開始」


赤く血塗られた魔方陣が一斉に輝きを増す。


「な…に…これ…痛い、痛い…記憶?話し声?血?殺し?戦争…?……泥……葉…」


「霧葉っ!」


手に刺した針が消えると同時に死んだかのように力なく倒れこむ霧葉。


呪いを移動したことにより俺が見てきたもの…いや、呪いが見てきたものがフラッシュバックのように見えているのだ。


ロクなフラッシュバックではないと思うが…


確かな記憶だ。


俺が今までしてきたことがあの眼には全て記憶されているだろう。


楽しい記憶などない、ただ殺しを続けた記憶。


生きるために、復讐を果たすためだけに使ってきた眼。


それを今俺は、同意の上とはいえ押し付けたのだ。


「…すまん……すまん…」


謝っても時間はもどらないし、霧葉もまた目を覚まさない。


…呪いはもう俺の中にはないはずなのに、身体は重く感じられた。


霧葉が倒れた後俺は包帯を作っていた。


包帯と言っても当然ただの包帯ではない、魔力を糸として具現化し呪いの『見る』という効力を静める

ための物である。


あの呪い専用の物なので他の魔法や呪縛の物としては使うことは出来ない。


この糸には魔力と同時に俺の命五年分という死霊が大喜びしそうな喰い物を込めているので効力は絶大である。


五年なんて安いものだ…霧葉はこれから『一生』あれと付き合って逝かなきゃいけないのだから。


包帯自体が出来るまでそう時間は掛からなかった。


包帯を作り終わった後俺はLuge(リューゲ)に向かう。


…霧葉は起きることはなかった。


霧葉が起きる前に俺は霧葉の耳に言葉を遺してLuge(リューゲ)に向かうのだった。……


………

…………


『…これを聞いてるってことは起きてると解釈して話させてもらう。机の上に包帯が置いてある、外に出る時は必ず使ってくれ。腹が減ったらキッチンに作っておいたエビピラフがある、食ってくれ。…呪いの調子はどうだ?苦しめられてないか?…霧葉、俺のこと嫌いになったろ?あんなもん見て嫌いにならないはずがないもんな…後は…なにも、ないな…なにもない。お前に対して出来ることも、話すことも…ただ、すまない。俺にとってもこの一年は、大切な物をまた得ることのできた一年だ。なにもないなんて…嘘だ。………泣いていないか?腹は減っていないか?一番駄目なのは腹を減らして泣いていることだ。話すこともないとか言ったがそれも嘘だったな…ちょっと、待っていてくれ。そして待ち飽きたら、会いに来てくれ。来れたら、の話しだけどな…』


プツッ…


なにかが千切れたような音が聞こえる、多分魔法の効力が切れた音だろう。


一人の少女は泣いた。


お腹を減らして…


「…会いたいよ…嫌いになんて、なるわけないよ…虚葉…お腹減ったよ…涙止まらないよ…」


静止した世界の日本の何処か…


ある家のある部屋にいる少女は、泣き、泣いて、泣き崩れた。


その日世界は静止していたのにも拘わらず、雨が降ったという…

PCの調子が悪かったおかげで次の話が半分近く終わっているのですぅ~(ドヤァ


なので次回作はすぐ投稿できると思います?(笑)


今回の話はどうでしたか?


まだ過去を語っていますが次回作で多分最後になると思います。


…トトが言うことは嘘の可能性が…


ではまた会う日までb

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