第16話 ケータイアクティビティ
「お~い、慎治、怜治」
ドアを開けながら
入ってきたのは
ななだった。
「「なに?」」
ソファーに座りながら
何か一生懸命に
携帯電話の画面を
覗く二人。ななの方を
見ずに生返事をする。
ななもさほど気にせず
話を続ける。
「2-Cの岡田先輩が
何か依頼があるから
あとで来て欲しいって」
「「了解」」
「言ったよぉ~
ちゃんと行ってね」
「「ほいほい」」
ななは部室の一角にある
事務用の机にむかった。
この机は不要な
職員室にあったものを
谷山先生の好意で
使っているものだ。
専ら、ななが部活の
活動記録を書くために
使用する。
ななが活動記録を
書き始める。
入室からずっと
慎治と怜治は携帯の
画面とにらめっこ状態。
「「「……」」」
響くのは二人が携帯の
ボタンをカチコチ押す
かすかな音だけだ。
「「「……」」」
(何この沈黙は?
いと耐え難し、あ、
古文になっちゃった☆)
そんなななの気持ちも
知らずに二人はだんまり
「…ねぇ?」
しびれを切らして
ななが口火を切る。
しかし、二人は黙ったまま…
「…ねぇ?二人とも何を
そんなにやってんの?」
やっとななの声に
反応する二人。
「ケータイゲームだよ」
慎治がななに画面を
見せる。
「なんのゲーム?」
ななが聞く。
「魔王」
怜治が淡々と答える。
「魔王って、音楽の?
おと~さん、おと~さん
ってやつ?」
「さっきゲームって
言ったやん。おと~さん
おと~さん!?」
恥ずかしそうに
慌てて弁明するなな。
「ボケよ、ボケ!!
そんなのも分かんないの」
「「…」」
怪しげな視線を
ななに送る。
話を変えようとするなな
「なんで急に
ケータイゲームを
するようになったの?」
「そりゃあ…」
「面白いからだよ」
慎治怜治が連携する。
「そういうサイトが
あるの?」
「何か今日はグイグイと
くるな、なな。
怜治、説明頼む」
「ガッテン☆俺達が
やっているのは
[楽しい形態ゲーム]
というサイトにある
ゲームだ。このサイトは
幻のゲームサイトと
呼ばれていて、
登録できるのは
ごくわずか…
例えるなら、
玩具が欲しいがために
Mドでお子様ハッピーの
セットを5つ頼む
イタい大人の数と
等しいと言われている」
「なにその例え…」
「その競争率も
さることながら
何故かサイトのゲームは
1日は最高に熱中するが
1日で飽きてしまう
という伝説がある」
うんうんと隣で
慎治が頷いている。
「今回、俺達は
見事登録に成功。
よって伝説の真偽を
確かめている最中だ。
今のところ、楽しすぎて
何にも手がつかない」
「だから、携帯ばっか
見ていたんだ…」
「「そうだ」」
納得したように
ななは頷く。そして
「私もやりたい」
「「そういうと思って
ななのも登録した」」
「いつの間に!?」
「「ふっふっふ」」
こうして三人は
携帯をいじくり始めた。
「最初に占いを
やってみたら?」
慎治が言う。
「ゲームサイトなのに
占いなんてあるの?
やってみたい!!」
「じゃあ、その横の
やつを選択して」
「これ?」
なながボタンを押す。
占いらしい水晶の
ビジュアルが表示される
タイトルは
[やる気なし占い]
「なに…これ?」
困った顔をするなな。
「まあ、とりあえず
やってみな」
能天気に慎治が言う。
スタートボタンを
押してみる。
[あ~…めんど~
占いなんてやりたく…
あ、もう始まってたの?
ようこそ!!占いの館へ]
「グダグダだな!!」
[この館では百種類の
占いが出来ます…]
「百!?すごっ!!」
[…ゴメンナサイ
嘘です。三種類しか
出来ません。テへ☆]
「嘘なのかい!!」
[では、早速始めましょう
なにを占いますか?
①星座占い
②手相占い
③腹筋占い
選択して下さい]
「③ってなに?
なんでそんな
マッスルな占いが
出来んの?」
[さあ?]
「答えたっ!?」
[で、結局なににすんの?]
「なんで、会話出来るの?
しかも上から目線!?」
[いいから、早く~☆]
「分かった、分かった!
じゃあ③で」
ななが選択して
ボタンを押す。
すると、
[システムの準備中のため
まだ出来ません。
しばらくお待ち下さい。
おそらく数年後には
完了します]
「ホントにやる気なっ!!」
「他にはないの?」
占いが出来なかったので
はやくもやる気が
なくなるなな。
(これがやる気なし占いの効果なのかは分からないが…)
「そうだなぁ~
育成ゲームなんて
どうかな?」
次は怜治が答える。
「いいねぇ。犬とか
育てるやつでしょ?
私そういうの好き~。
で、なにを育てるの?」
「ミジンコ☆」
「地味っ!!てか、
数あるなかで何で
ミジンコ?他にある
でしょ!!」
「他にもあるよ」
「え?ホントに?
そっちはまともでしょ?」
「ミカヅキモ☆」
「やっぱりやめる…」
いよいよ、
やる気が0に近づく
ななは最後に
「魔王がやりたいな」
「「やるか」」
「うん…ところで
魔王ってどんなゲーム?」
怜治が答える。
「魔王とは、一度は
世界を手中に治めるも
実家の農家を継いだ
魔王の話だ」
「…なんかしょ~もない
感じがするんだけど…」
「基本はRPGだが
魔王の畑を襲ってくる
モンスターを力でなく
作戦や罠で倒すという
タクティクスな
ゲームだ」
「なんか妙に
凝ってるね…」
「ちなみにモンスターは
捕まえて手懐けると
畑の手伝いをします☆」
「可愛いな…」
「モンスターを
倒してもお金は
貰えません。あしからず」
「ただのやられ損!?」
「さあ、そんな君も
魔王になって
田舎でのセカンドライフを
エンジョイしよう!!」
「魔王、関係なっ!!
もういいよ…
やんない…」
(私には1日ですら
保たなかった…)
伝説は嘘だと思った
ななであった。