第15話 ギャランドゥル
「う~す、おぉ!?」
「どうした怜治?おぉ!」
「あぁ、二人とも!!
やっと来た。依頼が
溜まっているよ」
部室に三人が集まった。
慎治と怜治は顔を
しかめている。
「「なんだこの匂い?」」
「ごめん、くさかった?」
「いや、いい匂いだけど」
テーブルの上には
小さな炎がゆらゆらと
している。そこには
ピンクのキャンドルが
置いてあった。
「「こいつか」」
「うん。イチゴの匂い。
いい匂いで安らぐ
でしょう?」
「「そうだな」」
「ささ、早く依頼を
片付けようよ」
「「ラジャー!!」」
二時間後…
「よし!!部活終わり~☆」
三人が一息つく。
何故か今日は部活が
楽々と進んだ。
「キャンドルっていいな。
何かリラックスする」
慎治が言うと怜治が賛同
「あぁ、俺も今日は
気持ちよく出来た」
「でしょ~、一週間前に
朝華に勧められて
買ってみたらはまったの
他にも欲しいなと
思ってるんだぁ~」
なながニコニコと
楽しそうに話す。
「キャンドルか…」
慎治がしみじみ言う。
「そういえば、駅の
近くに専門店みたいなの
あったぜ」
「ホント!?行こう!!」
ななが飛び跳ねて
喜ぶ。
「行きますか」
怜治がソファーから
立ち上がり、帰りの
準備を始めた。
「行くか」
三人は部活を出た。
「どういうの買おうかな~」
ウキウキしながら
ななが言う。
「珍しいにおいとかが
いいかなぁ~。でも、
まだスタンダードな
におい買ってないしな~
ねぇ、まだぁ?」
慎治に聞く。
「もう少し先…」
三人が歩いていく。
「ついた。この店」
[ギャランドゥル~カツラ、毛、キャンドルの専門店~]
ヒュー。
木枯らしがふく。
「何…この店?」
「ツッコミどころ
満載だな☆」
「三種類ある時点で
専門店かどうかが
疑わしいな…」
なな→慎治→怜治が
それぞれに感想を述べる
「しかも、まだ1ヶ月も
先なのにサンタいるし…
窓からぶら下がってる」
「出来損ないの泥棒だな」
「しかもちょっと
すすけているから
煙突から出てきたばっか
だぞ…多分☆」
「「「……」」」
三人が顔を見合う。
「入る?」怜治が言う。
「「一応は…」」
三人は未知なる大冒険に
出発した(笑)
「ごめんくださーい」
店内は意外と綺麗だ。
しかし異様な光景が
広がっていた。
「「「げっ…」」」
周りを見ればみるほど
謎だらけだった。
「いらっしゃーい」
出てきたのは優しそうな
おじいさんだった。
「ゆっくりしていきな」
「「「ハア…」」」
三人は店内を見始めた。
案外広かった。
20分店内を物色した
結果、三人は一ヶ所に
集まった。
怜治がひそひそと
「なあなあ…カツラの
専門店なのに黄色い
アフロしか売ってないぜ…」
慎治がひそひそ
「毛ってへそ毛しか
ないぜ」
「キャンドルが見当たんない」
落胆した声でななが
話す。怜治がおじいさんに
聞く。
「すいませ~ん!!
カツラってアフロしか
ないんですか?」
おじいさんは三人に
近づき優しく話す。
「わしはアフロ一筋
だからのぉ~。他の
髪型は気に入らんの
じゃ」
(((アナタの髪型がオールバックなのはどうして?)))
三人はこの疑問を
辛うじて押し殺した。
「毛もへそ毛しかないのは
一筋だからですか?」
ほっほっほと笑い
おじいさんが答える。
「わしのギャランドゥは
二手に分かれとるよ」
「そ、そうなんですか?」
(((そんなことは聞いてない…)))
三人は変な汗が出てきた
このおじいさん…
天然ものだぁ…
「あの~キャンドルは
一体どこにあるんです?」
「キャンドルなら
奥にあるから
見てきなさい」
店の奥を指差し
おじいさんが言う。
「ありがとうございます。
慎治怜治行こう」
「「ラジャー!!」」
「そういえば…」
おじいさんが三人を
止めて話しだした。
慎治を指差す。
「おぬし、死んだ
ばあさんに似とるのぉ」
「は、はい。ありがとうございます」
何故かお礼を言って
しまった慎治。
「探しておいで」
三人は奥へ進んだ。
「あったあった」
棚に様々な色の
キャンドルが
所狭しと陳列されている
「これは…いちごか」
手持ち無沙汰な
慎治怜治を見てななが
「何かいいやつを
見つけたら私に言って」
「「分かった。探します」」
三人でぶらぶらし始めた
数分後…慎治が
「なな~、これなんて
どうですか?」
「どれどれ~…なにこれ?」
[旅のかほり 京都.奈良]
「修学旅行かっ!!
いらないよ!こんなの!
どんな匂いだよ!!」
「なな~、これは?」
怜治が茶色の
キャンドルを持って来た
[花のにほひ]
「何か全然花の感じが
ないんだけど…。しかも
花のにほひって漠然と
し過ぎじゃない?」
「「注文が多いな~」」
「二人が変なのを
持ってきすぎなの!!」
「これは?」怜治
[カレイの煮付けの匂い…略して加齢臭☆]
「うまくないわっ!!!」
「それは当店の売上
best500に入るぞ」
「「「売れてなっ!!」」」
おじいさんが妙に
勧めてきたが、三人が
一蹴した。
「ワガママなお嬢さんに
こんなのはどうじゃ?」
[あったか~い匂い]
「「「自動販売機!?」」」
「これもどうじゃ?」
[つめた~い匂い]
「だから自動販売機なの!?」
店内にななのツッコミが
響き渡る。
「あの~もう帰ります」
「そうかい。またおいで」
結局、一時間ほどいたが
何も買わずに店を
出て行こうとすると…
「おお~う」
新しい客が入ってきた。
なにやらビニール袋を
手に持っている。
「「「あれ?」」」
「よう、お前らか。
どうしたんだ?」
なんとWJCの顧問の
谷山先生だった。
「先生っ!どうしてここに?」
「あ~そりゃ~、
ここのキャンドルの
匂いづくりの技術提供を
してんだよ」
「おお、来てくれたか」
おじいさんが谷山先生に
近づく。
「お前ら…」
三人を近くに呼び
ぼそぼそと谷山先生が
「校長には言うな…」
「「「どうして?」」」
「首がかかる…」
「保身に必死だなぁ」
慎治が呆れてため息を
つく。先生はニヤリとして
「そんなこと言って…
顧問辞めるよ☆」
「「「すいませんでした」」」
先生がビニール袋を
おじいさんに手渡す。
「今回はどんな匂いだい?」
「トイレの消☆元」
「「「パクリ!?」」」
この店のキャンドルが
全部おかしいのは
こいつのセンスの
せいだと理解した
三人だった…。
「次は牛乳をふいた
ぞうきんの匂いかな☆」