第九話 亀羽目球
さぁ~、今日も変わらず
活動報告しよ~☆
本日は晴天なり。
雲一つ見つかりません。
しかし、私達WJCは
いつものように部室で
うねうねしていました。
「怜治~、新作できた?」
「いや、まだだ慎治。
もう少しかかる」
「そうかぁ~、大変だな。
手伝おうか?」
「じゃあ、少し頼む。
そこちょっと持って」
「ここか」
「あ、ちょっと違う、
離して、そこでもない!
おい、引っ張るな!!
ちょ、おタぁ~~…!!」
そのとき、勢いよく
ドアが開いた。
「みんないる!!?
…て、何で慎治君と
怜治君、紐に絡まってるの?」
「怜治の創作あやとりの
手伝い」
「何それっ!?」
「創作あやとりとは
従来のあやとりの
常識を……」
「ハイハイ、わかったから
慎治と怜治は黙ってて。
香奈、どうしたの?」
やっと二人の会話を
止めることができた。
私は少し嬉しかった。
さっきからあやとりしか
やってなかったし…。
女子サッカー部の
キャプテン、寺島香奈は
私の友達で部活がない時
よく部室に来てくれる。
慎治、怜治も仲がよい。
「ああ、ななちゃん。
あのね…」
「ふ~む、落とし物ね」
部員ようのソファーに
慎治怜治がすわる。
私と香奈は来客用。
怜治が頷くように
言ったあとに香奈が
「ごめん。この三人の
部活とは違う活動だけど
手伝ってくれる?」
申し訳なさそうに
うつむきながら言う。
「な~に言ってるんだ?
俺達と師匠の
仲じゃないか!!
任せろって!!」
怜治が言った。
慎治と私も頷く。
慎治怜治にとって
香奈はサッカーを
教えてくれる師匠なんだ。
「ありがとう、みんな」
私達三人が顔を
見合わせる
「で、何をなくしたの?」
「あぁ、えっとね…」
「「「ドゥル、ドラゴべ
ドラ☆ンボール?
神龍に願い事?」」」
「違う、違うわ。
ドゥルグンボールよ…」
「「何それっ!!?」」
「ドゥルグンボールは
サッカー史上
最珍最高と呼ばれる
名珍プレイヤー、
ドゥルグンが試合中に
珍プレイをしたときに
蹴った数万個ある
プレミアな野球ボールの
ことだっ!!」
「何で知ってんの?
てか、珍プレイ?」
「しかも野球ボールっ!?
何でなん!!?しかも
数おおっ!!」
最初に慎治、あとに
私が突っ込む。
「だいたいオークション
での相場は300、つまり
うま~し棒30本分だっ!!」
「「やすっ!!!」」
「ドゥルグンはサッカーより
野球が大好きな
ルーマニア人なのだ」
「「ルーマニアっ!?」」
「で、どこでなくしたの?」
一旦、落ち着きを
取り戻した私は香奈に
聞いた。
「家の近くの公園で
サッカーの練習を
してたんだけど…
夜になっちゃって
疲れたからベンチで
うとうとして。
寝ちゃったみたい。
起きたらなくなってた」
「夜!?ダメだよ!香奈!
危なかったよ!!」
私はびっくりした。
そんな危険なこと
女の子はしちゃだめだ。
「そうだぞ、師匠!!」
珍しく慎治も真剣な顔。
語気も普段より
少し荒い。
「昨日は寒かったから
最低マフラーは
しなくちゃ!!」
「そこっ!?」
怜治も頷きながら、
「毛布も必要だったな」
「注意するところ
違うでしょ!!」
「なかったら
新聞紙やダンボールも
いいらしいよ」
「もう、いいって!!」
「ねぇ、香奈、それ
どうして持ってたの?
サッカーの練習するとき
邪魔でしょ?」
すると
「私、弟がいるんだけど
まだ小さくていっぱい
甘えたい時期なんだ。
お父さんが大好きで
よく日曜日に
遊んでいたんだ。
だけど、ある日に
お父さんの単身赴任が
決まっちゃって…
弟が寂しそうに
してたら偶然に
ドゥルグンの試合を見てて
[この人、お父さんみたい]
って言ったの。だから
ドゥルグンボールを買って
あげたんだ。
弟は毎日、肌身離さず
持ってたの。
またある日、私が
ケガしたときに
早くよくなるように
って私にくれた
御守りなの…」
香奈が話終えると
三人はぐすぐす
いいながら
鼻水たらして泣いている。
怜治が
「よ、よし!!ぜっだいに
見づげでやろぶぜっ!!」
「「おぶぁ~~!!!」」
「この公園だな」
「そうよ」
なんら変哲もない公園。
定番もブランコ、
シーソー、ジャングルジム
そしてかなり大きめの
滑り台を中央にして
それぞれが好きな場所に
収まっている。
「このベンチで
寝てたの」
香奈がそのベンチを
優しく手のひらで
さする。
「よし、このあたりを
くまなく探そうよ!!」
私が意気込んで
叫んだ。
「「おう!!!」」
4人で捜索を開始した。
砂場や草むら、
各種遊具をくまなく
探した。
捜索開始から数十分。
見たことのある人影が。
「やあやあ、
ライバル達よっ!!
どうした?
こんなところで!!」
意気揚々と近づいて
来たのは前年度の
ダジャリストチャンピオン
二階堂君だった。
「「二階堂君!!」」
「奇遇だな!君達。
さては私とダジャレとは
何か?についてを
語らいにきたんだな!!」
(いや、違うけど…)
「二階堂君!!このあたりで
野球ボールを見なかった?」
慎治が聞くと
二階堂君は顎に手をあて
考えた。
「はてさて、野球ボール?
う~ん…
どうだったかな?
あぁ!!そこの木に
引っかかってたよっ!!」
「ホントにっ!?
ありがとうっ!!」
香奈が二階堂君に
感謝を言う。
すると二階堂君は
何故か頬を赤くし、
「これは…ディスティニーだ…
運命だ…運命なんだっ!!
僕と付き合って下さい!」
「「「えぇ~!!!」」」
「ごめんなさい!!」
「「「即答!!!!?」」」
香奈曰わく、今は
探し物中なので
話はあとで聞くらしい。
二階堂君が見事に
散ったあと、
ボールが
引っかかってらしい
木を調査する。
結構高いので
三人で組み体操をする。
一番上は私だ。
「お~い、なな」
下から慎治の声。
「パンツ見えてる」
「見るなっ!!変態!!」
蹴りをくれてやった。
「うお!!暴れるな!!」
一番下の怜治が言う。「わりぃ!なな。いて、
痛い!!痛いって!!
ごめ、まじごめん!!」
「揺れるなぁ~~!!」
土台の怜治が大きく
揺れた。そして崩れた。
どすん!!
「「「いった~~」」」
見ていた香奈が
駆け寄る。
「みんな大丈夫?」
「うんまあ、なんとか…
て、あれ!!あれそう!?」
慎治の後ろに
白い球が落ちている。
慎治が拾い、香奈に
見せる。
「これがドゥルグンボールか?
師匠!!?」
「違うわ。これは…」
「ダルンダルンボールよ」
「はいっ!!?」
「だから、
ダルンダルンボールよ」
「説明しよう!!
ダルンダルンボールとは
作者が[てきと~に
語感があってて
尚且つ変な名前の
ボールでいいや]という
感じで出来た、触ると
ダルンダルンなボールなのだ」
「こら!作者!ダメだろ」
そのあと、一時間
一生懸命に探したが
変なボールしか出ない。
バリトゥボール
コルクボール
ドルフィンボールetc
「あぁ~!!なかなか
ないなぁ~!!」
4人が諦めかけていた。
「疲れたからちょっと
ベンチで休んでていい?」
「「いいよ」」
私はベンチに腰掛けた。
背もたれに思いっきり
よりかかり、空をみた。
すると、上空を
物凄い勢いで移動する
黄色い何かがあった。
「な、なにあれ?」
凝視すると一瞬、
空の一点が光った。
「どうしたの?ななちゃん」
香奈が呼びかけた。
私は空を指差した。
「あ、あれ…
きゃ~~」
腕を勢いよく
振り上げたので
ベンチが倒れた。
「いたたたた…」
「大丈夫?」
香奈が焦ったように
言う。
「大丈夫だよ…いたっ!」
頭上から何か降ってきた。
何か、丸くオレンジ色だ。
私はハッとして
手にとり、香奈に見せる。
「香奈!!これでしょ!?」
「それはドラ☆ンボール」
「神龍~~~~~!!!」
翌日、神龍のおかげか
ドゥルグンボールは見つかった。
空で戦っていたのは
野菜と猿だったかも…
カカロット!!!